太陽系近傍の赤色矮星に太陽系外惑星が続々と見つかる

赤色矮星とは、スペクトル型がM型に分類される恒星のことです。太陽より質量が小さく温度が低いことが特徴で、銀河に存在する恒星の大半を占めます。赤色矮星を中心とした惑星系では主恒星に近い距離を公転する惑星でも表面に液体の水が存在しうるため、近年では太陽系外惑星探しのターゲットとして高い関心を集めています。

米カーネギー研究所に所属するFabo Feng氏らの研究グループがarXivに投稿したプレプリントは、太陽の近場にある赤色矮星の周りに複数の太陽系外惑星を発見・確認したことを伝えています。惑星の検出は視線速度法に基づき、5つの望遠鏡・観測装置のデータが使用されました。

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今回発見・確認された惑星系は11個、惑星は16個に上ります。その内訳は (1) 新たに検出した惑星が10個 (2) 新たに検出したがまだ確定的でない惑星候補が3個 (3) 既知の惑星を再確認したものが3個 としています。主星の質量は太陽の0.15倍から0.63倍、惑星の公転周期は10日から18年、惑星質量は地球の8倍から木星の1.5倍に分布します。

特に注目される惑星系としては、太陽系からわずか15光年の距離にある2つの惑星系(おうし座TZ星系とグリーゼ687系)、ハビタブルゾーン内に惑星を持つ3つの惑星系(ロス429系・GJ 2056系・HIP 107772系)があります。

Feng氏らの研究は2020年8月18日にarXivに投稿されました。著者のコメントによると研究は『アストロフィジカルジャーナル・サプリメントシリーズ』(リンク)に受理され掲載予定とのことです。

太陽系から至近距離にある2つの惑星系

おうし座TZ星系

「おうし座TZ星」(別名:GJ 9066, グリーゼ83.1, LHS 11, L1159-16)は太陽系から14.7光年の距離にある恒星です。赤色矮星の中でも小さめの天体で、太陽の0.15倍の質量しかありません。この星の周りには2019年に3つの惑星候補が報告されていました(Tuomi et al. 2019)。今回の研究はこれには言及しておらず、2つの惑星を新たに確認した扱いになっています。

内側の惑星「おうし座TZ星b」は下限質量(※)が地球の約30倍、公転周期は242日です。外側の惑星「おうし座TZ星c」は下限質量が地球の約70倍、公転周期は約770日です。惑星の公転周期は太陽系に当てはめるとそれぞれ金星と火星に相当しますが、質量は海王星と土星の中間程度です。また主星の光度がごく小さいため、惑星の表面温度はとても低いと考えられています。

※ 視線速度法単独ではその原理上下限質量しか分かりません。実際の質量は視線と軌道面のなす角によりこれより大きくなる可能性があります。

グリーゼ687系

「グリーゼ687」は太陽系から14.8光年の距離にあり、質量は太陽の0.4倍で、赤色矮星の中では大きめです。この星には2014年に惑星「グリーゼ687b」が報告されていました。今回は、これに加えて、外側の軌道に惑星「グリーゼ687c」が見つかりました。

「グリーゼ687b」は下限質量が地球の17倍、公転周期は38.1日です。外側の惑星「グリーゼ687c」は下限質量が地球の約16倍、公転周期は約730日です。どちらも海王星(※地球の17.15倍)に近い質量です。なおグリーゼ687bは発見当時から惑星表面に液体の水が存在可能な領域「ハビタブルゾーン」を公転する惑星として知られていますが、質量が大きいため地球型惑星ではないと見られています。

ハビタブルゾーンに見つかった惑星

ロス429 – 生命の惑星?

「ロス429」(別名:HIP 38594)は 太陽の0.61倍 という赤色矮星として最大級の質量を持ち、2つの惑星が新たに発見されました。内側の惑星「ロス429b」は、下限質量が地球の約8倍で、60.7日周期で公転しています。外側の惑星「ロス429c」は、下限質量が地球の約50倍で、3480日(9.5年)周期で公転しています。 ロス429bの質量は今回発見・確認された惑星の中で最小です。

ロス429bの軌道はハビタブルゾーンに収まっています。この惑星が地球型惑星(岩石惑星)だとする確証はありませんが、地球の8倍という質量は地球型惑星と海王星型惑星が混在する領域です。そのため、「ハビタブルゾーンを公転し 」 なおかつ「地球型惑星」という2つの条件を満たした、生命に好意的な惑星かもしれないと考えられています。

GJ 2056 – 楕円軌道の惑星系

「GJ 2056」も赤色矮星として最大級の質量(太陽の0.62倍)を持つ天体で、2つの惑星が見つかりました。内側の惑星「GJ 2056 b」は下限質量が地球の約16倍、公転周期は70.0日です。外側の惑星候補「GJ 2056 c」は下限質量が地球の140倍、公転周期は8.2年です。ただし後者については現時点では実在は確定的ではありません。

視線速度変化の分析によると、2つの惑星は潰れた楕円軌道を持つ可能性が高いことが分かっています。これに対して、今回研究された他の惑星系では、惑星の軌道は真円に近いか、あるいは精度不足により形状が詳しく分かっていないません。その点でGJ 2056系は例外的と言えます。

惑星GJ 2056 bは主恒星からの距離を平均するとハビタブルゾーンに位置しますが、質量が大きいため地球型惑星ではないと見られています。ただし地球サイズの衛星が存在していればそこに生命が存在することは可能です。

HIP 107772

「HIP 107772」も赤色矮星としては最大級の質量(太陽の0.63倍)を持ちます。発見された惑星「HIP 107772 b」は下限質量が地球の約13倍、公転周期は55.2日です。この惑星はハビタブルゾーン内を公転しているものの、GJ 2056 bと同様に質量が大きいためそれ自体は地球型惑星とは考えられていません。

グリーゼ317 – 2つの巨大惑星

「グリーゼ317」は赤色矮星としては大きめ質量(太陽の0.42倍)を持つ天体で、2012年に1つの惑星と1つの不確実な惑星候補が報告されていました(Astudillo-Defru et al. 2012)。今回の研究では2つの天体が実在すると確かめられ、特にこれまで軌道がよく分かっていなかった外側の天体が木星に似た軌道を持つことが分かりました。

2つの惑星はいずれも木星を上回る質量を持ちます。内側の惑星「グリーゼ317b」は質量が地球の560倍(木星の1.8倍)、公転周期は696日です。外側の惑星「グリーゼ317c」は質量が地球の520倍(木星の1.6倍)、公転周期は6740日(18.5年)です。この惑星系は太陽系近傍(50光年)にあるため、軌道半径の大きいグリーゼ317cは直接撮像法で検出できるのではないかと期待されています。

その他

「ウォルフ433」(別名:グリーゼ480)は質量が太陽の0.45倍。惑星「ウォルフ433」は質量が地球の13倍、公転周期が9.57日で、今回発見された惑星の中では最短の周期を持ちます。この惑星はいわゆるホットネプチューン(高温の海王星型惑星)と見られています。

「GJ 3072」(別名:HIP 4845)は質量が太陽の0.62倍。惑星「GJ 3072 b」は質量が地球の14倍、公転周期が34.2日です。

「グリーゼ373」(別名:HIP 48714)は質量が太陽の0.58倍。惑星「グリーゼ373b」は質量が地球の23倍、公転周期が17.8日です。

「ロス695」(別名:HIP 60559)は質量が太陽の0.26倍。惑星候補「ロス695b」は質量が地球の16倍、公転周期が116日ですが、実在するかは不確実です。この惑星は、実在すれば、低温の海王星型惑星と考えられています。

「GJ 3804」(別名:HIP 67164)は質量が太陽の0.34倍。惑星候補「GJ 3804 b」は質量が地球の10倍、公転周期が10.9日ですが、こちらも実在は不確実です。

参考文献

  • Feng, F. et al., 2020, “Search for Nearby Earth Analogs. III. Detection of ten new planets, three planet candidates, and confirmation of three planets around eleven nearby M dwarfs”, arXiv:2008.07998.
  • Tuomi, M. et al., 2019 “Frequency of planets orbiting M dwarfs in the Solar neighbourhood”, arXiv:1906.04644.

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