「ケプラー」延長ミッションのデータを新しい手法で再分析したところ、地球より小さい惑星を含む17個の系外惑星が新たに確認されました。

NASAの「ケプラー」宇宙望遠鏡は、系外惑星が恒星の手前を横切る現象(トランジット)を記録することで惑星を探しました。ケプラーの主要ミッションは2013年に終了し、2014年から2018年にかけて「K2」と呼ばれる延長ミッションが行われました。
独マックスプランク太陽系研究所に所属する René Heller 氏らが5月22日にarXivに投稿した研究(arXiv:1905.09038)は、K2のデータから「TLS」と呼ばれる新しい手法で惑星を探したものです。
BLSとTLS
トランジット法で惑星を検出するには、トランジットに伴う減光を探し出す必要があります。これまでその方法として「BLS」 (Box Least Squares) が広く用いられてきました。これはトランジットの減光率を一定と見立てるシンプルな手法で、計算処理の速さが特徴です。
これに対し今回の著者らが開発した「TLS」 (Transit Least Squares) は、より現実のトランジットに近い光度変化を想定することで、正確に惑星のトランジットを見つけ出すことができます。
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研究
今回の研究では、K2ミッションで既に惑星が見つかっている517個の惑星系が、改めてTLS法で調べられました。分析の結果、これまで確認されていなかった50個が惑星候補として検出され、最終的に17個が新たに惑星と確かめられました。
確認された惑星は全て半径が地球の2.2倍以下で、地球より小さいものも複数含まれます。特に、最も小さい惑星「EPIC 201497682.03」は半径が地球の0.69倍しかなく、これまでK2ミッションで確認された全ての惑星の中で2番目に小さいものです。惑星の公転周期は、0.7日から35日の範囲です。
シミュレーションデータを用いた検証では、TLS法は特にサイズの小さい惑星や周期の短い惑星に効果的なことが示されています。今回の研究は、惑星「K2-32e」の発見を伝えた研究(記事)に続く成果です。
今回の17個とK2-32eを併せると、TLS法を用いることでK2ミッションのターゲット約500個のうち約3%で新たに惑星が確かめられたことになります。研究チームは、この割合をケプラーの主要ミッションに当てはめると、新たに100個程度の惑星を発見できるのではないかと予想しています。
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Heller氏らの研究は2019年5月22日にarXivに投稿され、23日に公開されました。コメントによると研究は『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』に掲載予定ということです。
参考文献
- Heller, R., Hippke, M. & Rodenbeck, K., 2019, “Transit least-squares survey II. Discovery and validation of 17 new sub- to super-Earth-sized planets in multi-planet systems from K2”, arXiv:1905.09038v1.
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カテゴリ:K2
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Keplerの遺産はまだまだ宝の山って感じですね。
既知の惑星系も視線速度法で詳しく調べたら沢山公転周期の長い惑星も見つかりそうですですよね。誰もやらないかもしれないですけど…
コメントありがとうございます
すでに惑星系が見つかってる恒星だけでこれだけ見つかるので、全部のデータを調べたらまだまだ見つかりそうですね。
視線速度法にも期待したいです