ボリソフ彗星の故郷は「クリューゲル60」系か?

2019年8月30日に発見された「ボリソフ彗星」(C/2019 Q4 または 2I/Borisov)は、太陽系外から飛来した恒星間天体としてオウムアムアに続く2例目の天体です。この彗星は2019年12月に太陽に最接近した後、太陽系から飛び去ると見られています。

ポーランドのミツキェビッチ大学に所属する Piotr A. Dybczynski 氏らの研究グループがarXivに投稿した研究(arXiv:1909.10952)は、重力多体シミュレーションを用いてボリソフ彗星の軌道を遡り、その故郷を調べたものです。


計算の結果、ボリソフ彗星はおよそ100万年前に連星系「クリューゲル60」(別名グリーゼ860)から1.74パーセク(5.7光年)まで近づいていたらしいことが分かりました。クリューゲル60は2つの赤色矮星(低質量・低温の恒星)からなる連星系で、現在は太陽系から13光年離れたケフェウス座の方角にあります。

1.74パーセクという接近距離は特別に近いものではありませんが、注目されるのは秒速3.43キロメートルという(恒星間のスケールでは)ごく小さい相対速度で通り過ぎていたことです。これはクリューゲル60の周りを低速で公転していた小天体が、系から放り出されてボリソフ彗星となった可能性を示しています。

研究グループによると、今回の研究で調べた647個の恒星系のうち、ボリソフ彗星の故郷となりうるのはクリューゲル60系のみだったということです。ただしボリソフ彗星がこの647個以外の恒星から放出された後に偶然クリューゲル60の近くを通り過ぎたものだという可能性もあり、故郷がクリューゲル60と確定したわけではありません。

なお論文執筆時点でボリソフ彗星は24日しか観測されておらず、今後より精確な軌道が求まるにつれてクリューゲル60への接近距離の推定値は大きく変わる可能性があります。ただし研究グループは相対速度の小ささには大きな変化はないだろうとしています。

参考文献

  • Dybczynski, P. A. et al., 2019, “Kruger 60 – a plausible home system of the interstellar comet C/2019 Q4”, arXiv:1909.10952v1.

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