異常に年老いて見える星形成領域

みなみのかんむり座星形成領域にあるコロネット星団

ALMA電波望遠鏡を用いて「みなみのかんむり座星形成領域」に含まれる若い天体を調べた研究で、この領域の恒星の周りにある「原始惑星系円盤」では含まれるダストが異常に少ないことが分かりました。


独マックス・プランク地球外物理学研究所に所属する P. Cazzoletti 氏らの研究グループがarXivに投稿したプレプリント(arXiv:1904.02409)は、チリのアタカマ砂漠にある電波望遠鏡群「ALMA」を用いて「みなみのかんむり座星形成領域」(以下「CrA領域」)を観測した成果を報告しています。

星形成領域とは、恒星間空間に漂うダストや塵が収縮することで恒星が一斉に作られている領域です。CrA領域は太陽系から154パーセク(500光年)離れており、これまでの研究で年齢は300万年より若いとされています。

みなみのかんむり座星形成領域にあるコロネット星団
みなみのかんむり座星形成領域の核心部にある「コロネット星団」の赤外線画像。Credit: NASA/JPL-Caltech/CfA

今回の研究はCrA領域に含まれる若い星のうち「クラスII」と呼ばれる状態にある41個を調べました。クラスIIは恒星本体が成長する過程(クラス0~I)が終わり、恒星の周りに安定した「原始惑星系円盤」が作られている段階です。

※クラスIIの分類は電波観測に基づくもので、変光星としての分類である「古典的Tタウリ星」に概ね相当します。

観測

観測に用いられた波長1.3mmの電波は、原始惑星系円盤に含まれるダストの量を見積もるのに適しています。ダストの質量から原始惑星系円盤全体の大まかな質量を知ることができます。

観測では原始惑星系円盤に含まれるダストは平均して地球質量の6±3倍と推定されました。41個のターゲットのうち44%では検出可能なダストはありませんでした。

円盤内のダストは時間とともに減っていき1000万年以内に円盤は散逸すると考えられています。今回観測されたダストは、300万年以下とされるCrA領域の年齢に対して異常に少ないものです。

この量はCrA領域と似た年齢の「おおかみ座星形成領域」(14±3地球質量)より大幅に小さく、年齢が500万~1000万年の「上部さそり座アソシエーション」(5±3地球質量)並みに「年老いて」見えます。

原因

さまざまな星形成領域の原始惑星系円盤に含まれるダストの量と領域の年齢。
さまざまな星形成領域の原始惑星系円盤に含まれるダストの量(縦軸)と領域の年齢(横軸)。データはCazzoletti et al. 2019 テーブル4に基づく。

CrA領域の原始惑星系円盤が異常に「年老いて」見えることは何らかの特別な説明が必要です。

少ないダストに特徴づけられる若い星形成領域として「IC 348 星形成領域」があります。IC 348領域にある恒星は、他の領域と比べて質量の小さい星に偏っており、これが平均して原始惑星系円盤が小さいことに繋がっています。しかしCrA領域では観測結果を説明できるほどの偏りは見られません。

CrA領域は実際には300万年より古いのかもいしれません。CrA領域が多くのクラス0~Iの天体を含むことはこの領域で今なお星形成が続いていることを意味しますが、仮に古い恒星と新しい恒星が混在していると考えれば説明がつきます。

CrA領域の環境に原因がある可能性もあります。星形成領域は星間物質が収縮して生じます。ことのき星間物質に乱流が少なく温度が低いほど恒星の周りに生じる原始惑星系円盤が小さくなる傾向が知られています。また領域内の磁場も円盤のサイズに影響を与えうる要素です。

この他に、高温の恒星が放つ紫外線で円盤散逸が早まった説・恒星同士の近接遭遇で円盤が散逸した説・CrA領域には通常より連星系が多く含まれているという説が検証されましたが、いずれもCrA領域の状況に一致しませんでした。


研究グループは今回観測したクラスIIの恒星よりさらに早い段階の天体(クラス0やクラスI)を観測することでこれらの説にヒントが得られるのではないかとしています。

Cazzoletti氏らの研究は2019年4月4日にarXivに投稿され、5日に公開されました。

参考文献

  • Cazzoletti, P. et al., 2019, “ALMA survey of Class II protoplanetary disks in Corona Australis: a young region with low disk masses”, arXiv:1904.02409v1.

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