重力が増えると惑星大気は…?

惑星の大気に影響を与える要素は、大気の総量・大気組成や日射の強さを始め、惑星の半径・惑星の自転速度など多岐にわたります。今回これらの要素のうち重力の影響を調べた研究で、重力以外の条件を固定した場合、重力の強い惑星大気ほど低温になることが示されました。

英エクセター大学の S. I. Thomson 氏と G. K. Vallis 氏がarXivで公開した研究は、惑星大気に対する惑星の表面重力(重力加速度)の影響を扱っています。

この研究では、重力以外の諸条件を地球と同一に保ったまま、表面重力を地球の0.8-2.0倍の間で変化させています。

大前提は「不変」

以下では重力の大きい惑星について考えます。

このとき重力以外の条件が同じならば、地表の気圧は重力に比例して大きくなります。同時に、高さ方向に縮こまった、高度とともに急激に気圧が下がっていく(スケールハイトの小さい)大気になります。

重力と気圧

これらは大気が気体であることから必然的に生じる現象です。2つの効果は打ち消し合うため大気全体の量は一定です。

著者らが示すところによると、単純なモデルに基づく限りこれは単にスケールが変化するだけです。つまり温度分布や循環のパターンなどの「中身」に変化は起きません。

例えば、重力が2倍になれば、表面気圧は2倍・高さ方向の物理的なスケールは半分になります。この大気の気圧を半減させ、高さ方向に2倍に引き伸ばせば、元の大気と見分けがつかなくなります。

ただし、水蒸気や温室効果を考慮したより現実的なモデルではこの限りではないことも分かりました。

水蒸気のふるまい

ある体積中に存在できる水蒸気の量は、気温によって決まることが知られています。気圧や重力にはほぼ影響されません。

これでは重力は水蒸気に影響を与えないように見えます。しかし上空の水蒸気を含めて考えると異なる結論になります。

先述のように、重力の強い惑星は高度方向のスケールが小さいため、気圧や気温は高度とともに急激に低下します。気温が低下すれば、水蒸気の量も同様に低下します。つまり重力の強い惑星では高度方向に積算した水蒸気の量は少なくなるのです。

水蒸気は温室効果を持つため、重力の強い条件では(他の条件が同じなら)、惑星全体の温度が低くなることになります。

実際に、シミュレーションでは、重力が2倍になると惑星の表面温度が緯度によって数℃から15℃程度低下することが示されました。

また、気圧は重力に応じて高くなる一方、水蒸気圧は重力に影響されないということは、重力が大きくなるほど「比湿」(大気に含まれる水蒸気の割合)が低下することを示しています。

比湿の低下は、水の状態変化に伴う熱の吸収や放出の効果が小さくなることを意味します。水蒸気は増えないのに周りの大気は濃くなる状況です。

これは特に低緯度地域の高度方向の温度分布に強く影響します。研究では、重力が強くなるほど低緯度地域で地表と上空との温度差が広がることが分かりました。

比湿の大小は南北方向の熱の輸送にも影響を与えますが、シミュレーションによると、その結果は条件によって異なり、また影響の程度も比較的小さいと示されました。

今回の研究は「重力は異なるがそれ以外の条件は地球と同一」という条件を前提としています。実際には、表面重力が異なる(半径や平均密度が異なる)惑星では、大気の総量・大気の組成・自転周期などの他の要素も異なったものになると考えられます。

とはいえ、今回の研究で明らかになった重力と温室効果・比湿の関係性は普遍的です。また水蒸気を他の凝縮性の気体に置き換えても成り立つと考えられています。この研究は多様な太陽系外惑星の大気を理解する上で基礎になることが期待されます。

Thomson氏らの研究は2019年1月31日にarXivに投稿されました。

参考文献

Thomson, S. I. & Vallis, G. K., 2019, “The Effects of Gravity on the Climate and Circulation of a Terrestrial Planet”, arXiv:1901.11426v1.

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