系外惑星候補を多色観測で簡単に確認する方法

宇宙ミッション等で発見される膨大な量の惑星候補を、どのようにして効率よく確認していくかが課題となっています。トランジットの多色観測はその解決策の1つです。

周縁減光の波長依存性

2018年に打ち上げられた「TESS」や、2026年の打ち上げが予定されている「PLATO」は、系外惑星が恒星の手前を横切る現象(トランジット)を用いて、数百から数千個の「惑星候補」を見つけることが期待されています。

関連記事:系外惑星の観測方法#トランジット法

惑星候補を惑星と確かめるにはフォローアップ観測が必要です。その方法としては「視線速度法」(RV法)が確実ですが、RV法を行える高性能な望遠鏡は限られているため、この方法で全ての惑星候補を調べるのは現実的ではありません。

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4つの惑星がケプラー延長ミッションのデータに埋もれていた理由

K2ミッションのデータを再分析した研究で、3つの惑星系に4つの惑星が新たに確認されました。これらの系ではそれぞれ異なる理由で惑星の発見が妨げられていました。

Hedges et al. 2019で研究された惑星系。

「ケプラー」宇宙望遠鏡は恒星の手前を横切る系外惑星が恒星の光を遮ること(=トランジット)を利用して惑星を探しました。2014年から2018年に延長ミッションとして行われた「K2ミッション」では指向精度の低下を抱えながら、1か所当たり約80日間の比較的短期間の観測が行われました。

2018年に打ち上げられた系外惑星観測衛星「TESS」はいくつかの点でケプラーの主要ミッションよりもK2ミッションに似ています。TESSは設計上ケプラーより指向精度が劣り、観測期間も一か所当たり27日に過ぎません。これらのことから、K2ミッションはTESSのデータを活用する上で大いに参考になると考えられています。

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ケプラー延長ミッションの初期データから惑星候補が見つかる

ケプラー宇宙望遠鏡の延長ミッションのデータから、高温の主星の周りを回る天体が見つかりました。この天体が惑星なのか褐色矮星なのかは分かっていません。

2014年から2018年まで行われていた「K2ミッション」は、「ケプラー」宇宙望遠鏡の延長ミッションに当たります。K2は主要ミッションと同様にトランジット法で系外惑星を見つけることを主な目的としましたが、最初の観測である「キャンペーン0」(C0, 2014年3~5月)は、ふたご座の方角にある2つの散開星団(M35とNGC2158)を対象とし、主に性能確認や星団・変光星の研究に用いられました。

関連記事:系外惑星の観測方法#トランジット法

米ウィルコックスハイスクールに所属する S. Dholakia 氏らがarXivに投稿した研究(arXiv:1907.06662)は、C0のデータから新たに低質量の伴星を発見したことを伝えています。

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赤色矮星の活動性と惑星の居住可能性

赤色矮星の惑星では赤色矮星の活動性が惑星の大気に大きな影響を与え、活動性が低い場合はこれまで考えられていたより生命の存在に適していることが示されました。

惑星の表面に液体の水が保たれるには、惑星が恒星に近すぎず遠すぎない軌道を持たなければなりません。恒星の周りでこの条件を満たす領域をハビタブルゾーン(HZ)といいます。HZは恒星の性質に影響され、光度の小さい赤色矮星(低温の小さい恒星)ではその範囲は恒星に近い位置になります。

米ノースウエスタン大に所属する Howerd Chen 氏らの研究グループがarXivに投稿した研究(arXiv:1907.10048)は、赤色矮星のHZにある惑星の気候を、大気中の化学反応を詳細に取り入れたシミュレーションを用いて調べたものです。

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惑星磁場が大気の流出を必ずしも抑制しない理由

近年、惑星の固有磁場は必ずしも惑星大気を恒星風から守るわけではないことが分かってきました。新しい研究では、磁場を持った惑星で大気の散逸(流出)が増加するメカニズムを調べられました。

固有磁場が無い/弱い惑星の大気散逸。

惑星の大気はいくつかの経路で流出しています。特に太陽系の地球型惑星のような窒素や二酸化炭素を主な成分とする大気では、大気の一部がイオン化した後に、恒星風(=恒星から放たれる希薄な物質の流れ)によって運び出される効果が重要です。

地球の強い磁場は、古くから、太陽風(=太陽の恒星風)を遮ることで大気の流出を抑えると信じられてきました。しかし近年の観測では大気流出率は金星・地球・火星(※金星・火星は磁場を持たない)であまり変わらないことが分かっています。また理論面からも、磁場の存在は必ずしも大気散逸(流出)を抑制しないことが複数の研究で示されています。

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TTV法で見つかった惑星ケプラー82f

4つの惑星が知られているケプラー82系に新たに地球の21倍の質量を持つ惑星が見つかりました。

TTVのイメージ

ドイツのゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンに所属する J. Freudenthal 氏らの国際グループがarXivに投稿した研究(arXiv:1907.06534)は、NASAの「ケプラー」宇宙望遠鏡の観測で既に4つの系外惑星が見つかっている「ケプラー82系」に、第5の惑星を発見したことを伝えています。

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赤色矮星の惑星は必ずしも潮汐固定されているとは限らない

赤色矮星の周りにある居住可能惑星は、主恒星に同じ半球を向け続ける「潮汐固定」の状態にあるとされています。新しい研究では、条件によって惑星は容易に潮汐固定でない状態になりうることが示されました。

潮汐固定された真円軌道と楕円軌道の惑星に働く潮汐力

太陽系にある衛星の多くは、自転と公転周期が一致し、常に同じ半球を惑星に向けています。「潮汐固定」と呼ばれるこの状態は、惑星から衛星に働く「潮汐力」が原因です。

※天体の重力源に近い部位と遠い部位とでは、重力源までの距離が異なるため、異なる大きさの重力で重力源に引き寄せられます。この重力の差を天体を引き延ばす方向に働く見かけの力として表したのが潮汐力です。

系外惑星のうち主恒星に近い軌道を公転しているものも同様に潮汐固定の状態にあると信じられています。特に赤色矮星(=低温の小さい恒星)の周りにある居住可能惑星(=生命の生息可能な惑星)は、主星の光度の小ささを反映して主星に近い軌道にあるため、潮汐力が惑星に大きな影響を及ぼします。

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ロス128の活動周期

地球に似た惑星を持つ太陽近傍の恒星「ロス128」には、太陽の活動周期に似た5.4年の活動周期があることが分かりました。

太陽系から11.1光年の距離にある赤色矮星「ロス128」(Ross 128)は、2017年に地球に似た質量・温度の惑星が見つかったことで注目を集めています。アルゼンチン・ブエノスアイレス大学に所属する R. V. Ibañez Bustos 氏らの研究チームがarXivに投稿したプレプリント(arXiv:1907.05728)は、このロス128の活動周期について調べたものです。

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地球は普通の岩石惑星なのか?

恒星の元素組成に基づいてその周りに存在しうる岩石惑星(地球型惑星)の組成を調べた研究で、地球は岩石惑星としてごくありふれた組成を持つことが分かりました。

岩石惑星の成層構造と主な化学組成

岩石惑星(地球型惑星)を形作る岩石の種類は、惑星の元素組成に影響されます。元素組成は惑星系毎に異なるため、太陽系外には地球では見られない岩石からなる岩石惑星があるかもしれません。

カリフォルニア州立大学フレズノ校に所属する Keith D. Putirka 氏と John C. Rarick 氏がarXivに投稿したプレプリント(arXiv:1907.05506)は、太陽系近傍の恒星の元素組成をまとめた「Hypatia」カタログに基づき、太陽系外にどのような組成の岩石惑星が存在しうるのかを調べたものです。研究では特に岩石惑星の体積の大部分を占めるマントルに着目しています。

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次世代の超大型望遠鏡「WAET」

極めて細長い主鏡を用いる「WAET」望遠鏡は、2018年に提案された、低コストと高い分解能を備える次世代の巨大望遠鏡です。

WAETの構造

天体望遠鏡の大型化は性能向上の有効な手段です。現在、計画・建造が進められている3つの超大型望遠鏡(20~40m級、ELTs)は、このコンセプトを具現化したものです。しかし、望遠鏡の建造コストは主鏡直径のおよそ2.6乗に比例して急激に増大するため、望遠鏡の大型化には限りがあります。

アメリカのケース・ウェスタン・リザーブ大学に所属する Benjamin Monreal 氏らがarXivに投稿したプレプリントは、「WAET」と呼ばれる新しい種類の天体望遠鏡について記述しています。このプレプリントは2020年代の天文学上の技術的課題について調査する「Astro2020」向けに白書として書かれたものです。

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赤色矮星の惑星「LSPM J2116+0234 b」

「CARMENES」分光器を用いた研究で、赤色矮星「LSPM J2116+0234」の周りに新たに惑星が見つかりました。

「CARMENES」はスペインのカラルアルト天文台3.5m望遠鏡に設置された分光器です。この装置は赤色矮星(低温の小さい恒星)の周りにある惑星を視線速度法で観測するのに最適で、2016年から赤色矮星を対象にした大規模サーベイを行っています。

関連記事:系外惑星の観測方法#視線速度法

ドイツのゲオルク・アウグスト大学に所属するS. Lalitha氏らが『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』に投稿した研究(リンク)は、CARMENESサーベイのターゲットに含まれる2つの赤色矮星「グリーゼ686」と「LSPM J2116+0234」について成果を伝えています。グリーゼ686では既知の惑星を再観測し、「LSPM J2116+0234」では新たに惑星を発見しました。

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昔の太陽に酷似した星「HD 140538」

恒星「HD 140538」が3.9年周期の活動サイクルを持つことが長期の観測で明らかになりました。この星は10~20億年前の太陽によく似た星と見られます。

CaII H・K線と恒星の活動性

太陽表面の黒点は、磁場の周期的な移り変わりを反映して、約11年周期で増減を繰り返しています。同様のサイクルは太陽以外の恒星でも見つかっています。

独ハンブルク大学に所属する M. Mittag 氏らが7月10日にarXivに投稿した研究(arXiv:1907.04575)は、へび座にある6等星「HD 140538」(別名:へび座プシー星)の活動周期を調べたものです。HD 140538は太陽系から48.2光年の距離にある太陽によく似た星です。

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※「TIGRE」望遠鏡とは

TIGRE(Telescopio Internacional de Guanajuato, Robótico-Espectroscópico)とは、メキシコのラ・ルス天文台に設置されている口径1.2mの可視光・近赤外線天体望遠鏡です。この望遠鏡は21世紀に入って各地で建造が進んでいる「ロボット望遠鏡」(ネットワークを通じた遠隔観測を行う望遠鏡)の1つです。

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TESSのデータから人工知能を用いて3つの惑星候補を発見

TESS衛星が記録した惑星トランジットの発生時刻を分析することで、これまで知られていなかった3つの惑星候補が見つかりました。研究には人工知能が補助的に用いられました。

TTVのイメージ

惑星が主恒星の手前を横切ることをトランジットといいます。トランジットに伴う恒星の減光を観測するトランジット法は、「ケプラー」宇宙望遠鏡・「TESS」衛星や地上の複数の系外惑星サーベイで用いられ、大きな成果を挙げています。

関連記事:系外惑星の観測方法#トランジット法

通常、トランジットは等間隔で起きますが、1つの恒星の周りに複数の惑星がある場合、トランジットの発生時刻が半周期的に変動することがあります。この「トランジット時刻変動(TTV)」を調べれば、トランジットを起こさない軌道にある未知の惑星を見つけることができます。

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