若い恒星を囲む塵の円盤が偏光で浮かび上がる

偏光を通じて若い恒星の周りに存在する「デブリ円盤」を観測した研究で、円盤に含まれる塵が不規則な形をしていることが確かめられました。

デブリ円盤の散乱特性。

ヨーロッパ南天天文台に所属する J. Milli 氏らの研究グループが5月9日にarXivに投稿した研究(arXiv:1905.03603)は、恒星「HR 4796 A」の周囲に存在する「デブリ円盤」(塵の円盤)を観測したものです。

HR 4796 A は太陽系から235光年の離れたところにある質量の大きい恒星で、生まれてから約1000万年しか経っていない若い星です。この恒星系は惑星形成の後期の段階にあり、小天体同士の衝突で生じた塵が、デブリ円盤として観測されています。円盤は半径が約80天文単位(=太陽と地球の距離の80倍)・幅が約10天文単位のリング状です。


研究グループはチリ・パラナル天文台のVLT望遠鏡(口径8.2m)と観測装置「SPHERE/ZIMPOL」を用いて、2016年5月にHR 4796 Aを観測しました。SPHERE/ZIMPOLは、高コントラスト撮像装置「SPHERE」と偏光を観測するためのサブシステム「ZIMPOL」を組み合わせたものです。

中心星の光は偏光していないのに対し、リングの散乱光は偏光を起こしています。そのため偏光を抜き出すことで、より鮮明なリングの画像を得ることができます。

観測ではHR 4796 Aのリングの鮮明な姿が映し出されました。

デブリ円盤の散乱特性。
デブリ円盤の異なる部位を調べることで、円盤を構成する塵の散乱特性を調べることができる。

リングの明るさの分布を詳しく調べれば、散乱の強さが「散乱角」に応じてどう変わるのかが分かります。異なるリングの部位は異なる向きから恒星に照らされ、そこから太陽系へ向けて散乱された光を観測しているからです。

HR 4796 Aのリングでは、散乱角が小さい位置(13~30度)はやや強い散乱が見られ、30~80度の間でほぼ一定になり、80度以上(80~145度)では角度が大きくなるにつれ散乱が弱くなるという特性が明らかになりました。研究グループは、デブリ円盤の散乱特性をこのような広い散乱角に渡って可視光・偏光で調べた研究は今回が初めてだとしています。

この散乱特性は塵を単純な球体粒子と仮定したモデルには一致せず、代わりに、塵が不規則な粒子(複雑な形の集合体や表面に凹凸を持った粒子)であることを示しています。デブリ円盤の塵が不規則な形をしていることはこれまでにも理論的・観測的に示されており、今回の結果はそれを補強するものです。

今回の研究では偏光のみが観測されましたが、研究グループによると、偏光とそうでない光を同時に観測できるようになれば、デブリ円盤の性質をより詳しく調べることができるということです。

Milli氏らの研究は2019年5月9日にarXivに投稿され、10日に公開されました。

参考文献

  • Milli, J. et al., 2019, “Optical polarized phase function of the HR4796A dust ring”, arXiv:1905.03603v1.

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