K2-36系の似ていない兄弟

恒星「K2-36」の周囲には、これまでに、大小2つの惑星が知られていましたが、質量や密度は分かっていませんでした。

この惑星系を対象にした新しい研究で、2つの惑星が大きく異なる平均密度を持つことが示されました。

恒星「K2-36」の周囲には、「K2ミッション」で2つの惑星が発見されています。K2ミッションとは、NASAのケプラー宇宙望遠鏡の延長ミッションです。

これまでの研究で、内側の惑星「K2-36b」は半径が地球の約1.5倍、外側の惑星「K2-36c」は約3倍と見積もられています。2つとも恒星の近くを公転する高温の星ですが、質量や密度・組成は分かっていませんでした。

今回 M. Damasso 氏らの研究チームがarXivに投稿した論文では、K2-36の2つの惑星について質量を測定した結果が述べられています。

研究チームは、カナリア諸島にある「ガリレオ国立3.6m望遠鏡」とそれに備えられた分光器「HARPS-N」で、惑星の発見直後から3年間に渡って断続的にK2-36を観測していました。

惑星の質量の測定に使われたのは、「視線速度法」という技法です。これは、惑星が軌道上を動くことで主恒星の視線速度(奥行き方向の速度)が周期的に変動することを光のドップラー効果として捉える方法です。

項目K2-36太陽
質量
太陽比
0.79±0.011
半径
太陽比
0.72±0.011
光度
太陽比
0.27±0.011
有効温度4916±37 K5780 K
年齢約11億年46億年

K2-36は観測のターゲットとして一筋縄でいかない存在でした。

K2ミッションの観測データには、K2-36が、自転に伴って複雑に明るさを変える様子が記録されていました。これは、強い磁場を持つ若い星に見られる特徴で、K2-36の表面が巨大黒点などの影響で不均一な明るさになっていることが原因です。実際に、K2-36は年齢が約10億年の若い星と考えられています。

このような不均一性は、視線速度にも大きな影響を与え、時として惑星の存在を覆い隠してしまいます。そこで研究チームは恒星の自転を計算に入れて視線速度のデータを慎重に解釈しました。

結果

視線速度には、恒星の自転周期・恒星の自転周期の2分の1・恒星の自転周期の3分の1の変動が強く表れていました。これらの成分を取り除くと、惑星に起因する視線速度の変動が見つかりました。

視線速度の変動の幅から、内側の惑星K2-36bの質量は地球の3.9±1.1倍、外側の惑星K2-36cの質量は地球の7.8±2.3倍と分かりました。この質量と、K2ミッションのデータを再分析して得た半径から、惑星の密度が計算されました。

項目K2-36bK2-36c地球
公転周期1.423日5.341日365.25日
質量
地球比
3.9
±1.1
7.8
±2.3
1
半径
地球比
1.43
±0.08
3.2
±0.3
1
平均密度
g/cm3
7.2
±2.5
1.3
±0.7
5.5

K2-36bの密度は7.2±2.5g/cm3で地球に似た組成の地球型惑星(岩石惑星)だと分かりました。地球と比べるとやや高密度ですが、これは、同じ組成でも質量が大きいほど惑星の内部が圧縮されて平均密度が上がるためです。

一方で、K2-36cは1.3±0.7g/cm3と明らかに低い密度を持ちます。この惑星は、岩石のコアの周囲を、質量の1-2%を占める水素やヘリウムの外層が取り囲んだ惑星と見られます。水素やヘリウムは、分厚く密度の低い層を構成するため、量が少なくても半径や平均密度に大きな影響を与えます。

予想通り?

地球とK2-36の惑星
地球とK2-36の惑星。下段は質量を球の体積で表している。(詳細

K2-36の2つの惑星が興味深いのは、これらの惑星が2つの異なるグループに含まれることです。

これまでの研究で、半径が地球の4倍以下の惑星は、サイズ別に2つのグループに分かれることが知られていました。半径が地球の1.5倍以下の惑星を主とした「スーパーアース」と、半径が地球の2.0倍以上の惑星を主とした「サブネプチューン」です。

前者は水素の外層を持たない高密度の岩石惑星、後者は水素とヘリウムの外層を持つ低密度の惑星と考えられています。

また、サブネプチューンとして形成された惑星のうち、質量が小さく高温のものは、水素やヘリウムの外層を重力で繋ぎ止めることができずに、スーパーアースに変化すると考えられています。

K2-36の惑星は半径しか知られていなかった時点でこれらの別々のグループに含まれると予想されていました。今回の観測で、2つの惑星の密度が大きく異なることが分かったのは「予想通り」の結果というわけです。

また2つの惑星は、質量や密度が異なるにもかかわらず、大気の失われやすさの目安となる「表面脱出速度」はともに約20km/sです。これは過去に2つの惑星で大気が失われるメカニズムが働いたことを示唆しています。

なお、ケプラーの(延長ミッションでない)主要ミッションで発見された惑星系として、ケプラー36という、K2-36と紛らわしい惑星系があります。偶然にもこの惑星系には、内側の岩石惑星・外側の低密度の惑星という、K2-36と同様のペアが見つかっています。

K2-36系は、1つの惑星系に2つの異なる種類の惑星が存在し、なおかつその質量や密度が確かめられた重要な例です。

特に、この系は約10億年という比較的若い惑星系であるため、研究チームは若い惑星系での大気の散逸の研究に理想的と述べています。

また、K2-36cでは、将来的な惑星大気の観測ターゲットになるかもしれないとしています。

Damasso氏らの研究は2019年2月5日にarXivに投稿されました。arXivの投稿に付随する著者のコメントによると、論文は『アストロノミー&アストロフィジックス』に受理され掲載予定ということです。

参考文献

Damasso, M. et al., 2019, “So close, so different: characterization of the K2-36 planetary system with HARPS-N”, arXiv:1902.01881.

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