※ドップラートモグラフィー法による系外惑星の観測とは

自転によるドップラー効果

ドップラートモグラフィー法」(Doppler tomography, DT法)は「光のドップラー効果」を利用した観測法です。この方法はトランジットを起こしている惑星(=観測者から見て恒星の手前を横切る惑星)に適用でき、惑星の軌道が恒星の赤道面に対してどれだけ傾いているか知ることができます。

この方法は高速で自転する恒星の周りにあるトランジット惑星の観測に適します。類似した技法として「ロシター・マクラフリン効果の測定」があります。

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ドップラー効果と回転拡幅

以下ではDT法の原理について説明します。ある物体が観測者に近づいているとき、その物体が発する光の波長は本来の波長より短くなります(=青方偏移)。逆に遠ざかる場合は波長が長くなります(=赤方偏移)。これを光のドップラー効果と言います。

物体が回転しているとき、1つの物体の中で、ある部位は観測者に近づき別の部位は遠ざかるという状況が起こり得ます。

自転する恒星を赤道上から眺めている状況について考えると、恒星の西側の半球と東側の半球が発する光には、互いに異なる方向のドップラー効果が生じることになります。西側の半球は観測者から見て手前に近づいてくるため青方偏移を起こし、東側の半球は遠ざかっていくため赤方偏移を起こすためです。偏移の大きさはまた恒星上の位置によっても異なります。

自転によるドップラー効果
恒星の自転に伴うドップラー効果の概略。西側(左)では恒星表面が観測者に近づき、東側では遠ざかる。

異なる方向・大きさの偏移が重なった結果は、恒星のスペクトルにみられる輝線や暗線(吸収線)の幅が広がり不明瞭になる「回転拡幅」という現象として現れます。

※スペクトルとは恒星の光を波長ごとに分解したものです。スペクトル中に見られる輝線・暗線は、本来ならそれを生み出している元素に固有の波長に表れますが、光のドップラー効果が生じるとその波長にずれが生じます。ずれた線が重なった結果が回転拡幅です。

惑星のトランジット

惑星がトランジットを起こすとき、惑星は恒星の光のうち特定の部分のみを隠します。そしてその部分には特定のドップラー効果が対応しています。ドップラー効果の変化は、輝線・暗線の形状が純粋な回転拡幅によるものから変形する現象をもたらします。

惑星が恒星を横切る間、惑星が隠す領域は刻々と変化し、輝線・暗線の形も変化していきます。このようなトランジット中の恒星のスペクトルを高精度かつ短い間隔で記録し、輝線や暗線の時間変化を調べれば、惑星がどの方向に恒星を横切ったのか(つまりを恒星の自転と惑星の公転のなす角)を知ることができます。これが系外惑星の観測に用いられるドップラートモグラフィー法です。


同様の原理に基づく方法として、輝線・暗線の変形自体ではなく、トランジットにともなって輝線・暗線の平均的な位置が変化する「ロシター・マクラフリン効果」を調べる方法もあります。この方法でもDT法と同様に恒星の自転と惑星の軌道のなす角を調べることができます。

これらの技法は恒星の自転にともなうドップラー効果に頼っているため、他の条件が同じであれば、高速で自転している恒星ほど観測しやすくなります。

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