3波長で観測された塵の二重構造とその成因

ハッブル宇宙望遠鏡と地上の望遠鏡を用いた観測で、恒星「HD 191089」の周りにある塵の円盤構造と、その外側に広がる希薄な構造(ハロ)が撮影されました。

恒星の周りにはしばしば「デブリ円盤」が見つかります。この円盤構造は、ガス成分を含まず塵で構成されている点で「原始惑星系円盤」と異なります。デブリ円盤は天体衝突で塵がばら撒かれることで作られると考えられています。

ジョンズ・ホプキンズ大学に所属する任彬(Ren, Bin)氏らアメリカ・フランス・カナダの研究グループがarXivに投稿した研究(arXiv:1908.00006)は、恒星「HD 191089」のデブリ円盤を、ハッブル宇宙望遠鏡とチリにあるジェミニ南望遠鏡を用いて調べたものです。


やぎ座にある7等星「HD 191089」は、太陽系まで164光年の距離にある若いF型主系列星(太陽より高温の恒星)です。この星がデブリ円盤を持つ可能性は1998年から指摘されていましたが、その姿を撮影した研究が最初に公表されたのは2011年のことです。

研究グループは、ハッブル宇宙望遠鏡の2つの撮像装置「NICMOS」「STIS」と、ジェミニ南望遠鏡の「GPI」撮像装置の観測データを用いてHD 191089のデブリ円盤を調べました。NICMOSのデータは2006年に取得されたデータを再分析したもので、STIS・GPIはそれぞれ2014年と2015年の観測データです。

3つの装置は互いに異なる波長を通じて観測したため、これらのデータを比較すればデブリ円盤系に含まれる塵の特徴を知ることができます。

  • ハッブル/NICMOS – 1.12マイクロメートル
  • ハッブル/STIS – 0.58マイクロメートル
  • ジェミニ南/GPI – 1.65マイクロメートル

観測結果

ハッブルのNICMOSとSTISが撮影した画像には、HD 191089を取り囲む2種類の構造が写っていました。1つは恒星から半径数十天文単位(1天文単位=地球と太陽の距離)の位置にあるリング状の構造で、もう1うは半径数百天文単位に広がる薄い散乱光(ハロ)です。

GPIは比較的視野が狭いため「ハロ」を十分にカバーできませんでしたが、代わりに中央のリング構造を鮮明に捉えました。

二重の構造

リング構造は半径46天文単位・幅25天文単位のサイズを持ち、太陽系のエッジワース・カイパーベルト(※海王星以遠にある小天体の帯、EKB)に似ています。ここには太陽系のEKBに似た小天体群があり、天体衝突で生じた塵がリングを形作っていると見られます。

この位置に小天体群が存在する理由はよく分かっていません。仮に惑星の影響によるものだとすると、惑星は半径約30天文単位の軌道を公転していると推定されています。

一方「ハロ」はリングよりずっと大きく、恒星から半径約640天文単位にまで拡がっています。内側のリングを構成する塵のうち、放射圧(物体が光を受けるときに生じる微弱な圧力)の影響を受けやすい細かい塵のみが外側に流されることで、ハロが形成されたと考えられています。

各装置で撮影された画像の比較によると、ハロはリングより「青っぽい色」(=短波長の光の強さが比較的大きい)を持ちます。これは、ハロを構成する塵が、リングを構成する塵よりも細かいこと意味し、リングから流れ出た粒子がハロを構成しているというシナリオを裏付けています。

残された謎

研究チームはHD 191089の周りにある塵の性質をさらに詳しく調べるため、STISとGPIの観測結果をモデルで再現することを試みました。しかし2つの装置のデータからは互いに矛盾する結果が導き出され、円盤を構成する塵の性質について確かなことは分かりませんでした。

これらの食い違いは、塵の凝集などのより複雑なプロセスが働いていることの表れかもしれません。恒星の周りにある多様なデブリ円盤を理解するには、これらの効果を採り入れたモデルが必要なようです。


Bin Ren氏らの研究は2019年7月31日にarXivに投稿され、8月2日に公開されました。コメントによると研究は『アストロフィジカル・ジャーナル』に掲載予定ということです。

参考文献

  • Ren, B. et al., 2019, “An Exo–Kuiper Belt with An Extended Halo around HD 191089 in Scattered Light”, arXiv:1908.00006v1.

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更新履歴

  • 2019/8/6 – 作成
  • 2019/8/6 – arXivで公表された日付を訂正(8月1日→8月2日)

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