初期の海王星は楕円軌道だった

海王星の外側にあるエッジワースカイパーベルト(EKB)天体の分布から、太陽系の初期の歴史において海王星が楕円軌道を持っていたことが示されました。

海王星は現在半径30天文単位(※1天文単位=太陽と地球の距離)の軌道を公転しています。標準的なモデルでは海王星は今よりいくらか太陽に近いところで生まれ、現在の軌道に移動(=マイグレーション)したと考えられています。海王星の外側にはエッジワースカイパーベルト(EKB)天体と呼ばれる小天体が無数にあり、海王星のマイグレーションの歴史はその分布に刻まれています。

米サウスウエスト研究所・宇宙科学部門のDavid Nesvorný氏がarXivに投稿した研究は、初期太陽系における海王星のマイグレーションがどのようなものだったかEKB天体の分布に基づいて推測したものです。この研究は2020年12月25日にarXivに投稿され、現時点ではプレプリントの状態です。

Nesvorný氏の考えは以下のようなものです。EKB天体は様々な起源のものが混在していますが、その一部は次のような歴史、(1) 現在よりも太陽に近い所で生まれた後、(2) 海王星のマイグレーションに伴って海王星と「軌道交差」し、(3) 海王星の重力で外側へ向けた楕円軌道に弾き飛ばされ、(4) 海王星との軌道交差から抜け出した、ものです。Nesvorný氏によれば、この歴史を辿ったEKB天体は、現在では、軌道半径が50~60天文単位かつ、近日点(=楕円軌道で最も太陽に近づいた点)が35天文単位より遠い領域にあるEKB天体の大半を占めているといいます。そしてNesvorný氏は、ここにあるEKB天体に軌道傾斜角が小さい(=海王星と軌道面がほぼ揃っている)ものが多く含まれるという事実に注目しています。

特に「軌道交差から抜け出す」という過程が重要になります。マイグレーションを起こした時代の海王星が、現在と同様に、真円に近い軌道だったと仮定しましょう。その条件では一度軌道交差を起こした天体がそこから抜け出すのはたやすいことではなく、「古在サイクル」と呼ばれる現象が必要になります。古在サイクルとは、天体が、「軌道傾斜角の低い楕円軌道」と「軌道傾斜角の高い真円軌道」との2つの状態の間を揺れ動く現象のことです。このサイクルで真円軌道に近づけばEKB天体は軌道交差から抜け出せます。しかしそれは軌道傾斜角の増大が伴うはずです。つまり、この仮定のもとでは、軌道傾斜角の小さいEKB天体が当該領域に多く観測されていることを説明できません。

一方で海王星の軌道が十分に歪んだ楕円になっている場合、「古在サイクル」によらずともEKB天体は軌道交差から抜け出すことができます。そのため、軌道傾斜角の小さいEKB天体が当該領域に存在していることと矛盾しません。

Nesvorný氏はこの考えをシミュレーションによって裏付けました。海王星の軌道離心率(※楕円の潰れ具合を示す0~1の値)について初期値を0.1に設定し、その後小天体との相互作用で離心率が今の水準(0.01)まで下がったというモデルであれば、実際のEKB天体の分布を再現できました。一方で、初期離心率が0.03以下のケースでは、軌道傾斜角の分布が現実に矛盾したものになりました。

Nesvorný氏は過去にも海王星のマイグレーションについての研究を行ており、その中で、海王星の初期離心率が0.2以上であれば、EKB天体の分布を再現できなくなることを示しています。今回の研究と併せて、海王星の初期離心率が「0.1前後」というかなり狭い範囲に絞りこまれたことになります。この離心率の範囲は、初期太陽系において、海王星が、他の惑星(特に天王星や同規模の現存しない惑星)と接近して軌道を乱し合ったという既存のモデルで予想されるものと一致し、そのようなモデルの信憑性を補強するものと言えます。

参考文献

  • Nesvorny, D., 2020, “Eccentric Early Migration of Neptune”, arXiv:2012.13648.

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。