TESSが蒸発する微惑星を観測

恒星「HD 240779」の周りで蒸発しつつある小天体が、TESSの観測で見つかりました。この恒星は誕生後1.25億年が経過した若い星で、地球型惑星形成の最終段階にあると見られます。

惑星のトランジットと塵の塊のトランジットの違い。

ハワイ大学マノア校に所属する E. Gaidos 氏らの研究チームが7月4日にarXivに投稿した研究(arXiv:1907.02476)は、系外惑星観測衛星「TESS」の観測データを用いて変光星「HD 240779」を研究したものです。

太陽系から310光年の距離にある「HD 240779」は、太陽とほとんど同じ質量・温度をもつ恒星ですが、形成から1億2500万年しか経過していません。また連星系に属するという点でも太陽と異なります。伴星のBD+10714Bは現在数百天文単位(地球と太陽の距離の数百倍)離れた位置にあります。

変光の特徴

TESSの観測によると、この星には2つの重なり合う半周期的な変光があります。1つは4.2日周期の連続的かつ緩やかな(数%以下)変動で、もう1つは1.51日周期で起きる不規則かつ一時的な光度の低下(減光率最大10%)です。

4.2日周期の変動は恒星の自転に由来すると考えられています。これは太陽(自転周期約26日)と比べて短い周期ですが、若い恒星としては典型的な値です。

一方で1.51日周期の減光は、恒星の周りにある物体が周期的に恒星の光を遮っているものと見られます。周期的・一時的な減光として惑星が引き起こすものがよく知られますが、HD 240779の減光は不規則で毎回異なるパターンを示すことから、惑星でなく塵の雲によるものと考えられています。

惑星のトランジットと塵の塊のトランジットの違い。
惑星のトランジットと塵の塊のトランジットの違い。惑星(左)では多くの場合U字型のパターンを生じさせるが、塵では非対称・不規則なパターンが生じる。

塵による減光は「Tタウリ星」や「ディッパー」などの若い変光星で多く見つかっています。一方である程度年老いた恒星でも、頻度は低いものの、蒸発する惑星や恒星に落下する彗星として観測されています

赤外線超過

HD 240779の環境を調べるヒントは、TESSとは別の観測でも得られています。赤外線天文衛星「WISE」の過去の観測データによると、HD 240779は通常の恒星より強い赤外線を12〜22マイクロメートルの波長で放っています。「赤外線超過」と呼ばれるこの現象は、恒星の周りに比較的温度の低い塵があることを示します。

一方で、WISEの波長3.4~4.6マイクロメートルの観測では赤外線超過は見つかりませんでした。これはHD 20799の周りに高温の塵はほとんど存在しないことを意味します。

変光の原因

変光をもたらす塵は何に由来するのでしょうか?

1.51日周期の軌道を軌道半径に換算すると0.026天文単位になります。これは恒星HD 240779本体の物理的な半径の約6倍に相当する至近距離です。この距離にある物体は、恒星からの放射で岩石が蒸発する1400℃以上に熱せられるため、恒星に近づきすぎて蒸発する岩石質の天体から塵が発生していると考えられてます。

研究チームは、100km級の微惑星から継続的に塵が生じていれば、観測された減光率を説明できるとしています。推定されるの塵の量は検知可能な赤外線超過をもたらすには少なすぎるため、波長3.4~4.6マイクロメートルで赤外線超過がないことと矛盾はしません。

一方で波長12~22マイクロメートルの赤外線超過は、蒸発する微惑星とは違った起源があるようです。この波長の赤外線は、主星からおよそ0.5天文単位の距離に分布する大量の塵(デブリ円盤)から発せられていると見られます。

研究チームによると、これらの状況は、HD 240799の周りに多数の微惑星が存在し、その一部が0.026天文単位の軌道に移動して蒸発し(=減光の原因)、別の一部が0.5天文単位の軌道で互いに衝突を起こして塵を発生させた(=12~22マイクロメートルの赤外線超過の原因)と考えれば説明できます。


前述のように、塵による変光を示す恒星は多く見つかっています。しかしHD 240799のような1億年前後の年代のものは比較的少数しか知られていません。この年代は太陽系では地球型惑星集積が最終段階を迎えていた頃です。HD 240799のような恒星を詳しく調べることで、地球型惑星の形成についてヒントが得られるものと期待されます。

研究チームはHD 240799のさらなる研究として、減光を多波長で詳しく調べること・電波観測で惑星系に存在する塵の量を調べること・視線速度法などで伴星の軌道を詳しく調べることを提案しています。

Gaidos氏らの研究は2019年7月4日にarXivに投稿され、5日に公開されました。コメントによると研究は『王立天文学会月報』に掲載予定ということです。

参考文献

  • Gaidos, E. et al., 2019, “Planetesimals Around Stars with TESS (PAST): I. Transient Dimming of a Binary Solar Analog at the End of the Planet Accretion Era”, arXiv:1907.02476v1.

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カテゴリ:TESS

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