HD 139139の謎の変光に太陽系外衛星が関連か

変光星HD 139139に見られる不規則な減光を説明するシナリオとして、惑星ではなく衛星が恒星の手前を横切っているという説が提唱されました。

HD 139139の減光の説明

「HD 139139」(別名EPIC 249706694)は、2019年に「ケプラー」宇宙望遠鏡の延長ミッションのデータから見つかった奇妙な変光星です。この星では、手前を横切る系外惑星が恒星の光を遮る「トランジット」に似た一時的な減光が多数記録されました。しかしそこには通常のトランジットに見られるはずの周期性がありませんでした。

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発見者のRappaport氏らは変光の原因としていくつかの説を考えたものの、いずれも減光パターンと周期性の欠如を同時に満たせないどの問題を抱えていました。


HD 139139の減光
HD 139139の減光。横軸が発生時間、縦軸が減光率を表す(Rappapotr et al. 2019)。

フランスのパリ天文台に所属する J. Schneider 氏が『Research Notes of the AAS』に投稿した研究(リンク)は、この星の変光メカニズムとして新しい説を唱えています。

Schneider氏は、HD 139139の周囲に短周期の木星型惑星(または褐色矮星)が存在し、その周りに衛星が存在するとしています。仮に衛星の軌道面が惑星の軌道面に対して傾いれば、惑星本体はトランジットを起こさないものの、衛星は軌道上の位置によってトランジットを起こすという状況が起こり得ます。

HD 139139の減光の説明
惑星-衛星系を用いてHD 139139の減光を説明するシナリオ。惑星本体は恒星の横を素通りするが、衛星は軌道上の位置によってはトランジットを起こす。Schneider 2019に基づく。

この状況では、惑星が恒星の手前付近を横切る度に、衛星にはトランジットを起こす機会が与えられます。ただし衛星は惑星の周りを公転しているため、すべての機会でトランジットを起こせるわけではありません。また衛星の惑星に対する相対位置も、トランジットごとに異なったものになります。

衛星が惑星に先行する位置にある時にトランジットが起きれば、トランジット発生時刻は通常より早まります。追随する位置にあればその逆です。これは減光の発生間隔に大きなばらつきががあることを説明できます。

また衛星が必ずトランジットを起こすとは限らないことも重要です。87日の観測期間中、一週間以上減光が見られない時期が2回ありましたが、この時、衛星は連続してトランジットを回避し続けていたのかもしれません。

惑星トランジットにおけるインパクトパラメーター
惑星トランジットにおけるインパクトパラメーター。惑星が恒星の中央を横切るとき0となり、数字が大きいほど中心から離れる。インパクトパラメーターが小さいほどトランジットの継続時間は長くなる。

衛星の位置が毎回異なるこすことは、減光の継続時間にばらつきがあることも説明できます。トランジットの継続時間は、衛星が恒星の中央を横切るとき最長になり、端を掠めるように横切るときに短くなるためです。

惑星と衛星の性質

Schneider氏は、具体的な惑星-衛星系の性質として、減光の頻度から惑星の公転周期はおよそ2日・Rappaport氏らの研究で惑星が見つからなかったことから惑星質量は木星の50倍と仮定しました。

衛星のサイズは、観測された減光率(約0.02%)から地球の約1.5倍と推定されます。また軌道の安定性の問題から衛星の公転軌道は小さい必要があり、周期は1.2日程度と見積もられました。


今回の研究で示されたシナリオは、HD 139139の特徴をうまく説明できるように見えます。ただし惑星・衛星の質量・周期などのパラメーターは、モデルの説明のために有り得る範囲内で便宜的に設定されたものに過ぎません。

このようなシナリオで本当に変光パターンを説明できるのか、また仮にこの説が正しいとすれば惑星や衛星はどのような性質を持っているのかは詳しい検証が待たれます。


Schneider氏の研究は2019年7月26日に『Research Notes of the AAS』に掲載されました。

参考文献

  • Schneider, J., 2019, “A Possible Scenario for the Random Transiter EPIC 249706694/HD 139139”, Res. Notes AAS 3, 108.

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