最遠の多重惑星系が見つかる

太陽系から2万3000光年離れた位置に、マイクロレンズ法の観測で2つの巨大ガス惑星を含む惑星系が見つかりました。

5つのマイクロレンズサーベイ

韓国の忠北大学に所属する Cheongho Han 氏らの研究グループがarXivに投稿した研究(arXiv:1907.01741)は、赤色矮星(低質量の恒星)と2つの巨大ガス惑星からなる惑星系「OGLE-2018-BLG-1011L」をマイクロレンズ法で発見したことを伝えています。

※マイクロレンズ法とは、背景の天体(光源)の手前を別の天体(レンズ)が通過した時に、光が重力によって曲げられることで天体が一時的に明るくなる現象です。

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この惑星系はマイクロレンズイベント「OGLE-2018-BLG-1011」の光度変化から見つかりました。観測を行ったのは、マイクロレンズ専門のサーベイ「OGLE」「MOA」「KMTNet」と、UKIRT望遠鏡およびCFHT望遠鏡を用いて低頻度で行われているサーベイです。

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5つのマイクロレンズサーベイ
観測に加わった5つのマイクロレンズサーベイ。KMTNetは3ヶ所の拠点を持つ。

OGLE-2018-BLG-1011の発生は2018年6月7日にOGLEが伝えました。同月17日、このイベントが単純でない光度変化を示していることをMOAのチームが報告しました。

観測データは「光源またはレンズに伴星(惑星を含む)が1つ存在する」という一般的なモデルでは説明できず、「レンズに伴星が2つ存在する」(3L1S)モデルが必要なことが分かりました。3L1Sモデルでは観測を再現可能な状況が3つ予想され、そのうちの1つが特に優れた再現性を示しました。

惑星系

最も優れた再現性を示したモデルに基づくと、OGLE-2018-BLG-1011のレンズ天体「OGLE-2018-BLG-1011L」の主星は、太陽の0.18倍の質量を持った赤色矮星と予想されます。2つの惑星bとcはそれぞれ木星の1.8倍と2.8倍の質量をもつ巨大ガス惑星(木星型惑星)ですが、これらの値には不確かです。

主星から惑星までの距離は2つの解が得られており、惑星bとcが1.8と0.8天文単位 または0.8天文単位と0.8天文単位の組み合わせです。ただしこれらの値にも不確かさがあります。

太陽系からOGLE-2018-BLG-1011L系までの距離は2万3200光年(+3600/-4900光年)と推定されました。これまでに知られている2つ以上の惑星を持つ惑星系としては最も遠いものです。


マイクロレンズ法ではOGLE-2018-BLG-1011Lを除いて4例の多重惑星系が見つかっています。これらの系では全ての惑星が「スノーライン」の外側に位置しています。

※スノーラインとは、惑星形成中に水の氷が凝固可能となる境界です。ここより外側では惑星の材料となる物質が増えるため、大質量の巨大ガス惑星や氷惑星が形成されやすくなるとされています。

OGLE-2018-BLG-1011Lの惑星が主星からどれだけ離れているかは不確かです。しかし主星が質量や光度の小さい赤色矮星と見られる事を鑑みると、2つの惑星もまたスノーラインの外側に位置すると考えられています。

惑星がスノーラインの外に多く見つかるのは、主星からある程度離れた惑星の方が観測にかかりやすいというマイクロレンズ法の特性も一因です。しかしスノーラインより外側で集中して惑星が見つかるのは、惑星系の外側では大質量の惑星が形成されやすいという標準的な惑星形成理論を支持する結果と言えます。

Han氏らの研究は2019年7月3日にarXivに投稿され、4日に公開されました。

参考文献

  • Han, C. et al., 2019, “OGLE-2018-BLG-1011Lb,c: Microlensing Planetary System with Two Giant Planets Orbiting a Low-mass Star”, arXiv:1907.01741v1.

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カテゴリー:マイクロレンズ法

「最遠の多重惑星系が見つかる」への3件のフィードバック

  1. 主星からの公転距離がほとんど同じなガス惑星が2つ存在する惑星系って物理的に成り立つのでしょうか???

  2. コメントありがとうございます

    マイクロレンズ法では、平面(天球面)に投影された形で惑星系の配置を知ることができますが、奥行き方向にどれだけ離れているか分かりません。そのため観測された「恒星-惑星間の距離」と「軌道半径」は同じにはなりません。

    例えば軌道面を横から見ている状態だと「平面で見ると接近して見えるが、実際には奥または手前に遠く離れている」という状況が生じ得ます。

    またマイクロレンズ法では、軌道そのものではなく現象が発生した時点での惑星の位置を観測するため、惑星が楕円軌道を持っている(=恒星-惑星間の距離が時間変化する)場合も観測された距離と軌道半径は一致しなくなります。

  3. サイト主様、解り易い説明ありがとうございます。
    勉強になりました。

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