ホットジュピター(高温の木星型惑星)がどの程度の頻度で存在しているかTESSの観測データから推定されました。

ホットジュピターとは、軌道が小さく温度が高い木星型惑星(巨大ガス惑星)です。初期に見つかった系外惑星にはホットジュピターが多く含まれていましたが、観測が進むと珍しい惑星であることが明らかになりました。
ホットジュピターの具体的な存在頻度はこれまでいくつもの研究で推定されています。地上からの視線速度法サーベイに基づくもので約1~1.5%、「ケプラー」宇宙望遠鏡のトランジット法の観測に基づくもので約0.5%です。両者が食い違う理由はよく分かっていません。
研究
米ハーバードスミソニアン天体物理学センターに所属する G. Zhou 氏らの研究グループが6月2日にarXivに投稿したプレプリント(arXiv:1906.00462)は、2つの系外惑星の発見を伝えるとともに、ホットジュピターの存在頻度も論点としています。
惑星発見についての記事:2つの高温の星にホットジュピター
研究グループは、2018年に打ち上げられたNASAの系外惑星観測衛星「TESS」が最初の約6か月に集めたデータを元に、ホットジュピターの存在頻度を割り出しました。「ホットジュピターの定義」として使われたのは、(1) 公転周期が0.9~10日 (2) 半径が木星の0.8~2.5倍 の2点です。
研究では、期間中にTESSが観測した明るい主系列星(膨張していない通常の星)4万7126個を対象にしました。これらのサンプルには、太陽に似た「G型主系列星」や、太陽より質量の大きい「F型主系列星」「A型主系列星」が含まれています。
結果
分析の結果、サンプル全体の 0.45±0.10 % がホットジュピターを持つと推定されました。サンプルをG型(質量が太陽の0.8~1.05倍)・F型(同1.05~1.4倍)・A型(同1.4~2.3倍)に分けると、G型が 0.71±0.31% ・F型が 0.43±0.15% ・A型が 0.32±0.12% でした。
恒星質量が大きくなるほどホットジュピターは少なくなるように見えますが、3つの値は不確かさの範囲で互いに重なっています。そのため研究グループは、ホットジュピターの頻度は恒星質量に影響されないと見ています。
今回の研究で求められた0.45%という値は、視線速度法サーベイから求められた値(約1~1.5%)より低く、ケプラーの値(約0.5%)に近いものです。
準巨星との関連
今回の研究対象には質量が大きいA型主系列星が含まれています。A型主系列星は視線速度法の適用が難しく、ケプラーでは主要なターゲットに含まれなかったため、これまでホットジュピターの存在頻度は分かっていませんでした。
ただし質量の大きい恒星の惑星存在頻度は「準巨星」の観測から間接的に見積もれます。「準巨星」とは寿命が近づき膨張を始めた恒星で、膨張前にA型主系列星だったものが多く含まれます。
これまでの研究では、質量の大きい準巨星ではホットジュピターの存在頻度が小さいことが知られていました。
今回の研究は質量の大きい星でもホットジュピターの存在頻度は低くないことを示しています。準巨星でホットジュピターの頻度が低い理由として、(1) 質量の大きい恒星では主系列星の時点でホットジュピターの頻度が低い (2) 主系列星の時点ではホットジュピターの頻度は低くないものの、準巨星に変化する段階でホットジュピターが恒星に墜落することで頻度が低くなる という2つの説があります。前述の結果は後者を支持するものです。
今回の研究はTESSの半年分のデータに基づくものですが、TESSは主要ミッションとして2年間の観測予定しているため、今後より詳しく惑星の存在頻度を調べられるようになると考えられています。
またTESSの観測データには多くの準巨星が記録されています。現在のところこれらのターゲットの分析やフォローアップ観測は進んでいませんが、将来的には準巨星と惑星の関係について有用なデータが得られることが期待されています。
Zhou氏らの研究は2019年6月2日にarXivに投稿され、4日に公開されました。
参考文献
- Zhou, G. et al., 2019, “Two new HATNet hot Jupiters around A stars, and the first glimpse at the occurrence rate of hot Jupiters from TESS”, arXiv:1906.00462v1.