遠すぎた惑星(ほし)〜直接撮像法で発見された太陽系外惑星の起源に迫る〜

直接撮像法で発見された惑星「HIP 65426 b」は、主恒星から遠く離れた位置にあり、その起源は詳しく分かっていません。この度、この種の天体を、従来の理論のの枠組み内で説明する研究が公表されました。

「HIP 65426」は、太陽の2倍の質量を持つ恒星で、誕生から1400万年しか経っていない若い星と見られています。

この星には、木星の8-12倍の質量を持った巨大ガス惑星「HIP 65426 b」が直接撮像法で見つかっています。現在は主恒星から92天文単位以上離れていますが、どのような軌道を動いているかは分かっていません(1天文単位=地球と太陽の距離)。

未確定の軌道
天体の位置だけで軌道は分からない。(詳細

近年この惑星のように主星から離れた大質量の惑星が相次いで見つかり、恒星の数パーセントがこの種の惑星を伴っていると見られていますが、その形成過程は解明されていません。

うわっ…私の惑星、遠すぎ…?

ベルン大学に所属する Gabriel-Dominique Marleau 氏らのチームがarXivで公表した研究は、惑星HIP 65426 bの性質や起源を扱っています。

研究チームはまず、惑星の冷却モデルを用いて、惑星が木星の10倍程度の質量を持つとするこれまでの推定を裏付ける結果を得た後、惑星の起源を考察しました。

巨大ガス惑星の形成メカニズムとしては、古くから「コア集積モデル」と「重力不安定モデル」が支持されています。今回研究チームは、前者の枠組みで説明を試みました。

「コア集積モデル」は、生まれたての恒星がガスとダストからなる「原始惑星系円盤」に囲まれていることを前提とします。円盤の中で「惑星コア」が成長し、十分大きくなったコアは周囲のガスを急激に引き込む「暴走的ガス集積」を起こして巨大惑星になるというモデルです。

コア集積の模式図。(詳細

コア集積モデルが働くのは、中心恒星から約20天文単位以内の、コアが素早く成長できる範囲に限られますが、HIP 65426bは90天文単位以上の距離にあります。

そこで研究チームは、惑星コアや巨大ガス惑星が互いに近接遭遇し、一方が恒星から遠ざかる軌道に弾き出された(「重力散乱」)というシナリオを想定しました。

このシナリオには2つの時系列が考えられます。1つは、円盤が存在する時代に円盤の中で重力散乱が起きるケースです。もう1つは、円盤が消滅した後に重力散乱が起きるケースです。研究チームは、両方の可能性を検証するべく2種類のシミュレーションを行いました。

円盤内での重力散乱

惑星の軌道交差
円軌道の惑星系が軌道交差を経て楕円軌道の惑星系に変化する模式図。(詳細

まず研究チームは円盤内における重力散乱を想定しました。シミュレーションは、天体の重力相互作用を再現する「重力多体シミュレーション」を基本とし、惑星コアの成長や円盤との相互作用を採り入れています。

初期条件として5つの惑星コアを15-30天文単位の軌道に置き、条件をランダムに変化させながら試行を繰り返しました。

典型的な結果は、いずれかの惑星コアが巨大ガス惑星に成長すると、他のコアの軌道が不安定になり、重力散乱で外側に弾き出されるというものです。弾き出されたコアは惑星系の外側で成長を続け、最終的に「HIP 65426 b型」の恒星から離れた大質量の巨大ガス惑星になりました。

シミュレーションは、HIP 65426 b型の惑星を高い頻度で再現できました。これらの惑星は、中程度から極端なものまで様々な楕円軌道を持ちます。また、この種の惑星の内側には、円軌道を持つ別の巨大ガス惑星が高頻度で残りました。

円盤散逸後の重力散乱

2種類目のシミュレーションは円盤消滅後に重力散乱が起きる想定です。ここで使われたのは単純な重力多体シミュレーションです。

重力散乱の様子は、惑星が2個の場合と3個以上の場合で大きく異なることが知られています。そこで研究チームは2惑星と3惑星のシナリオを試しました。

初期条件は、2惑星シナリオでは10天文単位とその外側に、3惑星シナリオでは10天文単位とその内外に巨大惑星を置いたものです。

2惑星シナリオ

2惑星シナリオでは、HIP 65426 b型の惑星は1~2%という低い確率でのみ再現できました。

単純な2惑星シナリオでは、惑星が1つに減るまで惑星の軌道は安定しません。安定をもたらす状況は、惑星が衝突合体する・惑星が系外に放出される・惑星が中心恒星に衝突する、の3パターンです。

このうち、軌道半径の大きい惑星が残るのは3つ目のパターンに限られますが、これは稀にしか起きず、シミュレーション全体でHIP 65426 b型の惑星を再現できた割合は1%程度でした。

恒星からの潮汐力で惑星が円軌道化する効果を考慮すると、HIP 65426 b型の惑星を再現できる割合が上がりましたが、それでも2%程度でした。

3惑星シナリオ

惑星が3つ以上ある場合は、2惑星の場合と異なり、シミュレーション期間中に惑星の近接遭遇が起きる保証はありません。そのため研究チームは近接遭遇が起きたケースのみを抜き出しました。

近接遭遇が起きた場合、3惑星シナリオの結果は1つの惑星が残るケースと2つの惑星が残るケースに分かれますが、後者が4分の3を占めました。

HIP 65426 b型の惑星が生じる割合は、1つの惑星が残るケースでは7%、2つ残るケースでは21%でした。近接遭遇のケース全体では18%で、2惑星シナリオよりはるかに有望です。再現されたHIP 65426 b型の惑星は潰れた楕円軌道を持つものが中心でした。

今回の研究は、コア集積と重力散乱の組み合わせで恒星から離れた惑星を説明できることを示しています。重力散乱のタイミングは、円盤消滅前と消滅後のどちらでも可能です。

また、この種の惑星の特徴として、楕円軌道を持つことと、高い割合で内側に惑星を持つことの2点が浮かび上がりました。

現在のHIP 65426 bは、恒星からの距離が知られているのみですが、今後数年から10年程度観測を続ければ、楕円軌道かどうか分かると見られています。また、内側の惑星は視線速度法やアストロメトリ法などの手法で検出可能かもしれません。これらの観測はHIP 65426 bだけでなく、同種の惑星の起源を探るうえでも重要なヒントになります。

Marleau氏らの研究は2019年2月5日にarXivに投稿され、2月7日に公開されました。arXivの投稿に付随する著者のコメントによると、論文は『アストロノミー&アストロフィジックス』に受理され掲載予定ということです。

参考文献

Marleau, G. et al., 2019, “Exploring the formation by core accretion and the luminosity evolution of directly-imaged planets: The case of HIP 65426 b”, arXiv:1902.01869.

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