奇妙な大気を持つ海王星サイズの惑星GJ 3470 b

系外惑星「GJ 3470 b」を調べた研究で、この惑星の大気は木星や土星に似ているものの、メタンがほとんど含まれない奇妙な組成を持つことが分かりました。

2012年に発見された系外惑星「GJ 3470 b」は、地球の4倍のサイズ(半径)と13倍の質量を持ち、3.3日周期で太陽系近傍の赤色矮星(質量の小さい恒星)の周りを公転しています。この惑星は大気の観測に適した条件が整っているため、繰り返し研究のターゲットとなってきました。

カナダのモントリオール大学に所属する Björn Benneke 氏らのグループが『ネイチャー・アストロノミー』に投稿した論文(リンク)は、「ハッブル宇宙望遠鏡」と「スピッツァー宇宙望遠鏡」の観測データを用いて、GJ 3470 bの大気を調べたものです。


研究グループは惑星の大気を調べるために「透過光分光法」と呼ばれる技法を用いました。これは、惑星がトランジット(恒星の手前を通過)している際の恒星の光のスペクトル(光の波長ごとの強さ)と、トランジット外のスペクトルとを比較することで、惑星大気に由来する光(赤外線を含む)の吸収を調べるものです。分析は惑星大気のスペクトルを最もうまく説明できる大気モデルを探す形で行われました。

研究に用いられたのは、2012年から2017年の間にハッブルとスピッツァーが観測した合計20回分のトランジットと掩蔽(=惑星が恒星の奥に隠れること)のデータです。これらはハッブルの「STIS」(波長0.55~1.0マイクロメートル)・同「WFC3」(1.1~1.7マイクロメートル)・スピッツアーの「IRAC」(3~5マイクロメートル)の3つの装置で得られたもので、可視光から近赤外線までの幅広い波長をカバーしています。

結果

分析の結果、惑星大気のスペクトルに水蒸気に対応した波長1.4マイクロメートルを中心とする赤外線の吸収がある事が確かめられました。またこれまでの研究に反して、気圧1ミリバール(地球大気の高度50kmの気圧に相当)より下の層に雲があると予想されました。

大気の組成は水素とヘリウムが中心で、そのほかのより重い元素(=天文学上の「金属」)は少量しか含まれないことが分かりました。太陽系ではGJ 3470 bに最も近いサイズを持つのは天王星や海王星ですが、GJ 3470 bの大気はこれらと比べると重い元素の割合が低く、むしろ木星や土星に似ています。

GJ 3470 bのような、水素に富みなおかつ特別に高温ではない惑星大気では、メタンが豊富に存在すると考えられていました。しかし観測ではメタンに対応した赤外線の吸収は全く見つかりませんでした。

低い金属量

GJ 3470 b の大気に水素・ヘリウムより重い元素(=天文学上の金属)が少量しか含まれていないことは、この惑星が比較的高温の環境で生まれたことを示しています。仮にGJ 3470 bが温度が低い惑星系の外側で形成され、今の軌道に移動したのならば、もっと金属の高い大気になっていたはずです。

少なくともGJ 3470 bの場合は、現在の軌道で形成されたか、あるいはあまり主星から遠くない位置で形成された後、小規模な移動のみを経験したと見られます。

メタンの欠乏

研究グループは、大気中に検出可能な量のメタンが存在しなかったことは驚くべき結果だとしています。理論的には、水素に富んだ比較的低温の惑星大気であれば、炭素原子はメタン分子に含まれる形で存在すると予測されていました。ある温度より高くなると、一酸化炭素の方がメタンより安定になりますが、その温度より明らかに温度が低いGJ 3470 bの大気にメタンが見られないのは大きな謎です。

今回観測されたスペクトルは惑星大気の上層部に対応しているため、雲に覆われた大気の深部で何かが起きているのかもしれません。例えば惑星内部の熱や、大気下層で起きる触媒反応でメタンが分解されている可能性が挙げられています。

また、最初から惑星にメタンの材料となる炭素原子自体が少なかったという説明もあります。ただし炭素原子は宇宙に遍在しているため、惑星が生まれる過程で炭素が選択的に失われる何らかのメカニズムが必要です。

いずれにしても、この惑星の大気組成を説明するためには、より詳しい研究が必要とされています。


GJ 3470 bはNASAが開発を進めているジェームズウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) のターゲットとしても期待されています。大気中の雲は惑星大気の性質を調べにくくする要素ですが、今回の研究ではこの雲は波長の長い赤外線では透明度が高くなることが分かりました。これはハッブルよりも波長の長い赤外線で観測を行うJWSTにとって良いニュースと言えそうです。

Benneke氏らの研究は2019年7月1日に『ネイチャー・アストロノミー』に掲載されました。

参考文献

  • Benneke, B. et al., 2019, “A Sub-Neptune Exoplanet with a Low-Metallicity Methane-Depleted Atmosphere and Mie-Scattering Clouds”, Nature Astronomy (arXiv:1907.0449v1).

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