赤色矮星の活動性と惑星の居住可能性

赤色矮星の惑星では赤色矮星の活動性が惑星の大気に大きな影響を与え、活動性が低い場合はこれまで考えられていたより生命の存在に適していることが示されました。

惑星の表面に液体の水が保たれるには、惑星が恒星に近すぎず遠すぎない軌道を持たなければなりません。恒星の周りでこの条件を満たす領域をハビタブルゾーン(HZ)といいます。HZは恒星の性質に影響され、光度の小さい赤色矮星(低温の小さい恒星)ではその範囲は恒星に近い位置になります。

米ノースウエスタン大に所属する Howerd Chen 氏らの研究グループがarXivに投稿した研究(arXiv:1907.10048)は、赤色矮星のHZにある惑星の気候を、大気中の化学反応を詳細に取り入れたシミュレーションを用いて調べたものです。


研究グループは、HZの内縁付近にある比較的高温の惑星に焦点を当てました。惑星大気は地球と同様の窒素-酸素-二酸化炭素-水蒸気などの組成を持ち、惑星は主恒星に常に同じ面を向ける「潮汐固定」の状態にあると仮定されました。主恒星は温度が約2300~3700℃の赤色矮星を想定しています。

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大気上層の化学反応は恒星が放つ紫外線に大きく影響されます。赤色矮星の紫外線の強さはその活動性に強く依存することが知られています。研究では主に「静穏な」赤色矮星を調べましたが、一部の条件で活発な(=紫外線の強い)赤色矮星を想定したシミュレーションを行っています。

結果

HZの内縁付近で見られた惑星の気候は、全体的にはこれまでの研究と一致するものでした。

HZを内側に逸脱した惑星では、温度の上昇に伴い水蒸気の温室効果が強まり、温度が上昇しづける「暴走温室効果」が発生します。

暴走温室効果の一歩手前では「moist greenhouse」と呼ばれる状況になることがあります。これは水蒸気による強い温室効果が働きつつも、惑星が反射率の高い(=恒星の放射の吸収を妨げる)雲で覆われることで、温度が抑えられる状態です。

今回の研究では、比較的温度が高い赤色矮星(3000~3700℃)の惑星でmoist greenhouseが見られましたが、温度が低い赤色矮星(2300~2700℃)の惑星はこの過程を経ずに暴走温室効果に至りました。

これは次の理由によります。温度の低い赤色矮星は光度が小さいため、惑星はHZ内に収まるため短周期の軌道を公転している必要があります。今回の研究では潮汐固定(自転周期=公転周期)が仮定されていることから惑星の自転周期も同様に短くなります。自転が速い惑星では自転の影響(コリオリ力)が強く雲の範囲が広がりにくいため、温度の抑制が難しくなります。

天井からこぼれる水

一方で新しい発見もあります。

前述のmoist greenhouse状態は大気の上層(成層圏より上)に多くの水蒸気が含まれます。惑星大気内の化学反応について簡易的に扱っていたこれまでの研究では、水蒸気は紫外線で分解し水素原子を生じると仮定されていました。軽い(原子量が小さい)水素原子はすぐに大気圏外に脱出するため、実質的に惑星から水が失われることになります。

つまり、惑星が一度moist greenhouse状態に入ってしまうと、惑星表面が生命の生息可能な状況に保たれたとしても、水が失われるまでの一時的なものになると考えられていました。

しかしながら、今回の研究のうち静穏な(=紫外線の弱い)赤色矮星を想定したシミュレーションでは、大気上層の水蒸気の増加は必ずしも水素原子の増加を伴いませんでした。これは、静穏な赤色矮星では紫外線が弱いこと・紫外線が水蒸気より先に他の分子に吸収されること・分解で水素原子が生じたとしてもすぐに他の分子と反応して取り除かれることが原因と見られます。moist greenhouse状態での水の流出率は水素原子の濃度に依存するため、これまで流出率は過大に評価されていたことになります。

具体的には、静穏な赤色矮星を仮定した全てのケースで、惑星から水が完全になくなるまで1000億年以上かかると予想されました。現在の太陽系の年齢が46億年であることを考えると、moist greenhouseに伴う水の喪失はほとんど無視できるほど遅いものです。

※これは水蒸気の分解に伴う水の喪失のみを考慮したものであることに注意が必要です。

ただし活発な赤色矮星では状況が異なります。研究では静穏な赤色矮星に加えて、紫外線が中程度・紫外線が強いという2つのシナリオを想定しシミュレーションを行いました。

これらの想定で惑星がmoist greenhouse状態になると、大気上層の水蒸気の増加に伴って水素原子が増加し、数億~10億年の時間スケールで惑星上の水がほとんど失われると予想されました。これは従来のmoist greenhouse状態に関する予測に似た結果です。

紫外線の影響

紫外線の強弱はこの他にも惑星の大気にいくつかの変化をもたらしました。

オゾン層の形成は、静穏な(=紫外線の弱い)シナリオでは惑星の夜の半球にのみ限られていましたが、活発なシナリオでは惑星全体に広がるオゾン層が見られました。

また、紫外線が強くなると、惑星大気上層の垂直方向や昼夜半球間での循環は強くなりました。一方で惑星表面の風への影響は大きくありませんでした。


今回の研究は、赤色矮星のHZの内縁付近にある惑星は、赤色矮星の活動の程度に強く影響されること・赤色矮星が静穏な場合は従来考えられていたより生物が居住可能な環境が長続きしやすいことを示しています。

赤色矮星は一般的に時間が経つにつれ静穏になると考えられていますが、どのような活動レベルがどれほどの期間続くのかは完全には分かっていません。赤色矮星の惑星を知るためには、赤色矮星本体についての理解が欠かせないと言えます。

Chen氏らの研究は2019年7月23日にarXivに投稿され、24日に公開されました。

参考文献

  • Chen, H. et al., 2019, “Habitability and Spectroscopic Observability of Warm M-dwarf Exoplanets Evaluated with a 3D Chemistry-Climate Model”, arXiv:1907.10048v1.

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カテゴリ:居住可能性

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