太陽系のガス惑星に似た大気を持つ系外惑星

コア集積

系外惑星「HAT-P-26b」の観測データを再分析した研究で、この惑星の大気が、太陽系のガス惑星と同様に金属(=ヘリウムより重い元素)に富んだ元素組成を持つことが確かめられました。


英ケンブリッジ大学に所属する Ryan J. MacDonald 氏と Nikku Madhusudhan 氏がarXivに投稿したプレプリント(リンク)は、HAT-P-26bの大気を「透過光分光法」で調べたものです。

透過光分光法とは、惑星がトランジット(恒星の手前を横切る現象)を起こしている時とそうでない時の恒星のスペクトルを比べることで、惑星大気の吸収によって生じるスペクトルの変化を抜き出す方法です。

この方法では、大気に含まれる物質のうちスペクトルに特徴的なパターンを生じさせるものを検出できます。

※スペクトルとは光を波長ごとに分解したものです。

惑星HAT-P-26bは地球の19倍の質量と6.3倍のサイズ(半径)を持ちます。このサイズは太陽系の天王星と土星の中間に相当します。

HAT-P-26bと太陽系
HAT-P-26b(左)と太陽系の惑星のサイズ比較。

新しい研究

HAT-P-26bの大気はこれまでハッブル宇宙望遠鏡・スピッツァー宇宙望遠鏡・チリにあるマゼラン望遠鏡で観測されましたが、これらのデータを全て組み合わせた分析はありませんでした。

今回研究チームは、これらのデータを用いて可視光から近赤外領域のHAT-P-26bの透過光スペクトルを得ました。このスペクトルに対してモデルを当てはめることで惑星の大気組成を調べることができます。

大気の元素組成

HAT-P-26bの大気は水素とヘリウムが主成分です。このような大気の指標として、酸素/水素比 (O/H) ・炭素/水素比 (C/H)・炭素/酸素比 (C/O) があります。これらは、太陽の元素組成に見られる比を基準として相対値で表されます。

分析の結果、HAT-P-26bの大気には1.5 (+2.1/-0.9) %の水蒸気が含まれ、O/Hは太陽組成の6.8~44.0倍(中央値は18.1倍)であることが分かりました。これは従来の研究で推定されていた値(0.8~26.3倍)と比べてより精度の高いものです。

従来の研究ではO/Hが太陽の組成より小さい可能性もありましたが、今回の研究で太陽より高いことが確実になりました。

また今回炭素原子を含む分子が検出されなかったことから、C/O(炭素/酸素)は0.33以下と見積もられました。これは太陽と比べて低い値です。

金属の多さ

観測された組成はどのように解釈できるのでしょうか?惑星の材料となる「原始惑星系円盤」は、初めは太陽に似た組成を持ちます。高いO/HやC/H(炭素/水素)が見られるということは、惑星が作られる過程で金属量(=水素・ヘリウム以外の元素の割合)を上昇させるプロセスが働いた証拠です。

太陽系の4つの巨大惑星(木星・土星・天王星・海王星)の大気は金属に富んだものです。質量の大きい木星は比較的低いC/Hを持つのに対し、小さい天王星・海王星は高いC/H(太陽の約80倍)を持ちます。

※ここでO/HではなくC/Hが使われているのは、太陽系のガス惑星のような低温の星ではO/Hを調べるのが難しいためです。

C/HとO/Hを同一視できると仮定すると、HAT-P-26bのC/H(太陽の6.8~44倍)は土星と天王星の中間に当たります。これはこの惑星が太陽系と同様に「コア集積」と呼ばれるプロセスで作られたことを示唆しています。

コア集積の模式図。

また、C/Oの低さは、この惑星が酸素に富んだ氷(水の氷)を多く取り込んだのに対して、炭素に富んだ氷(一酸化炭素や二酸化炭素の氷)はそうではなかったことを意味します。

このことから、HAT-P-26bは、水の氷が凝固するに十分冷たいものの炭素に富んだ氷が凝固するほどには冷たくない領域で生まれた後、今の軌道に移動してきたと推定されています。


HAT-P-26bは一般的なホットジュピターよりサイズが小さい星ですが、今回の研究ではホットジュピターを対象とした最も高精度な同種の研究に匹敵する精度が得られました。

また、研究チームは開発中のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を想定したシミュレーションを行い、今回よりさらに高い精度でHAT-P-26bの大気組成を調べられることを示しました。

惑星大気の組成には、その星が作られた環境や辿ってきた歴史が記録されています。現在あるいは近未来の観測技術でこれらの情報に触れることができるという点で、惑星大気は系外惑星を研究する上で重要な意味があります。

MacDonald氏とMadhusudhan氏の研究は2019年3月21日にarXivに投稿され、25日に公開されました。コメントによると論文は『王立天文学会月報』に受理され掲載予定ということです。

参考文献

  • MacDonald, R. J. & Madhusudhan, N., 2019, “The Metal-Rich Atmosphere of the Neptune HAT-P-26b”, arXiv:1903.09151v1.

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