横倒しで自転する惑星では成層圏が湿潤になる?

自転傾斜角の大きい惑星

地球の赤道面は軌道面から23.4度傾いていますが、他の惑星はより傾いた自転傾斜角を持つかもしれません。そのような惑星では成層圏には水蒸気が多く含まれ、宇宙空間へ水が逃げ出しやすいとみられることが新しい研究で分かりました。


ハーバード大に所属する Wanying Kang氏がarXivに投稿した研究(arXiv:1904.04740)は、自転傾斜角の大きい居住可能な(生物が生息可能な)惑星の成層圏について調べています。

自転傾斜角の大きい惑星
自転傾斜角の大きい惑星

成層圏は惑星表面の水が宇宙空間に逃げるプロセスに関わっています。高度約10km以上にある地球の成層圏は極めて乾いた環境ですが、仮に0.3%以上の割合(混合比)で水蒸気が含まれていると、地球上の水は10億年以内にほとんど失われると見積もられています。

成層圏の湿度にかかわる要素として日射(単位面積の惑星大気表面に垂直に入射する単位時間当たりの主恒星からの放射エネルギー)や自転傾斜角があります。これまでの研究で、傾いた(自転傾斜角の大きい)惑星は全球的に温暖で極地付近が赤道よりも暖かくなることが知られています。

研究

今回の研究では3D全球気候モデルを用いて傾いた惑星(自転傾斜角=80°)の大気を計算しています。シミュレーションでは日射の影響を調べるために、100年の間に日射を現在の地球に相当する1400W/m2から「暴走的温室効果」で惑星の気候が破綻する1750W/m2まで増やしました。なお傾斜角と日射以外は地球と同じ条件です。

結果

傾いた惑星の成層圏では、日射が増すにつれて湿度は上がり続け、暴走的温室効果を起こす前(約1700W/m2)に著しい水の流出が始まる湿度に達しました。地球と同程度の日射(1400 W/m2)では水の流失を促すような湿度は見られませんでした。

一方で比較対象の自転傾斜角の小さい惑星では、日射を増やしても成層圏の湿度は低いまま(水の流出が始まる湿度の10万分の1以下)でした。

この違いの原因は、傾いた惑星では全球的に気温が高く季節変動も大きいことにあります。また地球では上昇する空気が低温の成層圏下層を通過する際に水蒸気が取り除かれる「コールドトラップ」と呼ばれるメカニズムがありますが、傾いた惑星ではこれがあまり働かないことも影響しています。


今回の結果は、傾いた惑星で日射が強い条件では、暴走的温室効果の代わりに、水が失われることが原因となって生物の住めない惑星になりうることを示しています。

ただし今回の研究で変化させた要素の他に、惑星の自転速度なども気候に大きな影響を与えるため、結果をどこまで一般化できるかは明らかでありません。

将来的には系外惑星から逃げ出す水蒸気を観測可能になると考えられており、そのような観測を通じて惑星の気候を推定できるようになることが期待されています。

Kang氏の研究は2019年4月9日にarXivに投稿され、10日に公開されました。

参考文献

  • Kang, W., 2019, “Faster Water Escape on High Obliquity Planets”, arXiv:1904.04740v1.

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