小惑星帯から海王星に相当する軌道を往復する巨大惑星

視線速度法の観測で潰れた楕円軌道を約70年かけて公転する惑星「HR 5183 b」が発見されました。この星はこれまでに視線速度法で見つかった中で最も長い公転周期を持ちます。

HR 5183 bと太陽系の木星型惑星・天王星型惑星の軌道の比較。

カリフォルニア工科大学に所属する Sarah Blunt 氏らがarXivに投稿した研究(arXiv:1909.09925)は、恒星「HR 5183」に視線速度法(RV法)で惑星「HR 5183 b」を発見したことを伝えています。

RV法は惑星の公転に伴って主恒星の視線速度(奥行き方向の速度)が変わることをドップラー効果を通じて調べる方法です。惑星が真円軌道をもつケースでは視線速度は単純な波形(サイン曲線)に沿って変動しますが、楕円軌道の場合は歪んだ形になります。

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太陽に似た比較的明るい恒星HR 5183は、1997年からRV法で観測されてきました。10年以上に渡ってHR 5183にはほとんど変化が見られませんでしたが、2015年頃から視線速度が増加を始め、2018年に元の値より約90m/s高いピークに達した後、減少に転じました。

このような動きは、楕円軌道の惑星が近点(※軌道上で最も主星に近づく点)を通り過ぎる時に見られるものです。惑星を察知した研究グループは近点通過に合わせて詳しい観測を行い、惑星の軌道や質量を測定しました。

視線速度法の観測には、ハワイ州マウナケア天文台のケックI望遠鏡の「HIRES」分光器・テキサス州マクドナルド天文台2.7m望遠鏡の「タル分光器」・カリフォルニア州リック天文台のAPF望遠鏡「レビー分光器」が用いられました。

惑星系

新たに見つかった惑星「HR 5183 b」は、少なくとも木星の3.2倍の質量がある木星型惑星(=巨大ガス惑星)で、半径約20天文単位(=地球と太陽の距離の20倍)の軌道を約70年周期で公転していると考えられています。

HR 5183 bは非常に潰れた楕円軌道が特徴です。軌道を一巡する間に主星までの距離は2.9天文単位から30天文単位の間で変動し、楕円の潰れ具合を表す軌道離心率は0.84(±0.04)という大きな値を示します。この軌道を太陽系に当てはめると、HR 5183 bは小惑星帯から海王星の軌道の間を約70年で行き来していることになります。

HR 5183 bと太陽系の木星型惑星・天王星型惑星の軌道の比較。
HR 5183 bと太陽系の木星型惑星・天王星型惑星の軌道の比較。実線がHR 5183 b・点線が内側から木星・土星・天王星・海王星を表す。

太陽系外の木星型惑星の中には楕円軌道を持つものが多く知られていますが、HR 5183 bはその中でも特に離心率の高いグループに入ります。

なぜ楕円軌道に?

惑星は一般的に真円に近い軌道で生まれると予想されており、HR 5183 bが極端な軌道を持つ理由は定かではありません。一つの説として、HR 5183系にはかつて円軌道の木星型惑星が複数あったものの、ある時惑星の軌道が互いに交わる不安定な状態になり、惑星同士が接近して軌道を大きく曲げられたというシナリオが考えられています。

惑星の軌道交差
円軌道の惑星系が軌道交差を経て楕円軌道の惑星系に変化する模式図。

このような軌道の交差は、質量の大きい惑星が密集した軌道で公転している時に起きやすく、また惑星系が誕生して数十億年の安定期を経て突然起きることもあります。研究グループは、HR 5183系は、直接撮像法で見つかっている大質量の惑星が密集した「HR 8799」系のような惑星系の将来を表しているかもしれないとしています。

またHR 5183には恒星の伴星が見つかっているため、その影響で惑星の軌道が楕円になった可能性もあります。ただしこの伴星は現在約1万5000天文単位の距離にあり、惑星に影響を与えるには遠すぎると見られるため、惑星同士の相互作用説と比べて有力ではありません。


研究グループによると、軌道半径の大きいHR 5183 bは、そのような惑星の観測に適した「直接撮像法」や「アストロメトリ法」などの他の観測方法のターゲットになるかもしれません。今回測定された木星の3.2倍という質量は、視線速度法の性質上、惑星の「下限質量」に過ぎませんが、これらの方法と組み合わせれば惑星の真の質量が明らかになることが期待できます。


Blunt氏らの研究は2019年8月26日にarXivに投稿され、28日に公開されました。コメントによると研究は『アストロノミカル・ジャーナル』に掲載予定ということです。

参考文献

  • Blunt, S. et al., 2019, “Radial Velocity Discovery of an Eccentric Jovian World Orbiting at 18 AU”, arXiv:1909.09925v1.

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カテゴリ:系外惑星の発見

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