
IGRINS (Immersion GRating INfrared Spectrometer) とは、アメリカ・テキサス大学と韓国天文研究院(KASI)が共同で開発した天体観測装置です。望遠鏡が捉えた天体の光を分解し、波長ごとの光の強さ(スペクトル)を得る「分光器」の1つです。広い範囲の近赤外線スペクトルを高い波長分解能で得ることができます。
IGRINSは2014年に運用を開始しました。この装置は主にアメリカ・テキサス州マクドナルド天文台 H. J. スミス望遠鏡(口径2.7m)で使用されていますが、他の望遠鏡に移して使うこともできます。2016年以降はアリゾナ州のローウェル天文台ディスカバリーチャンネル望遠鏡(口径4.3m)で、2018年以降は南米チリのジェミニ南望遠鏡(口径8.1m)でも使用されています。
特徴
IGRINSは近赤外線専用の観測装置で、波長1.45~2.3マイクロメートルの赤外線を一度の観測で同時に取得します。装置の中で光路は短波長側(Hバンド)と長波長側(Kバンド)に分割され、2つのセンサーで並行して記録されます。
光を分解するための回折格子には「エシェル回折格子」を用いています。特にエシェル格子の中でも小型化や高性能化に有利な「イマージョン回折格子」を用いたことが大きな特徴です。
装置の大きさは長辺0.9メートルで、主要部分は冷却下に置かれる設計です。また、観測モードを1種類に絞ることで、取り扱いを容易にするとともに構造を簡素化する工夫がなされています。
参考文献
- “IGRINS: Immersion Grating Infrared Spectrometer“, The University of Texas at Austin.