散開星団に見られる奇妙な星 過去に地球型惑星を飲み込んだか

散開星団M67に属する恒星「M67 Y2235」は、周囲の星と比べて異常に水素・ヘリウム以外の元素(=金属)が多いことが知られています。その原因として、この星は過去に地球型惑星を飲み込んだという研究が公表されました。

散開星団とは、同じ場所で同じ時代に生まれた恒星の集団です。星団を構成する星は同じ星間物質に起源を持つため、その元素組成は互いに似通ったものになります。

かに座にある散開星団「M67」には、1000個以上のメンバーが知られており、この種の星団としてはかなり古い40億年前後の年齢があります。ここに含まれる恒星「M67 Y2235」は、2019年の研究で、星団の他のメンバーと比べて異常に高い金属量(=水素・ヘリウム以外の元素の割合)を示すことが明らかになりました。具体的には他の同様の星と比べて34%ほど金属量が高く、単なる個体差の範囲を超えています。


スウェーデンのルンド大学に所属する Ross P. Church 氏らの研究グループがarXivに投稿した研究(arXiv:1908.06988)は、M67 Y2235が過去に岩石惑星を飲み込んだことが異常な金属量の原因だとする仮説について扱っています。水素・ヘリウムをほとんど含まずほぼ(天文学的な意味での)「金属」のみで構成されている岩石惑星を恒星が飲み込めば、恒星の金属量は上昇することになります。

※天文学的な意味での金属とは、前述の「水素・ヘリウム以外の元素」の総称です。これにはケイ素・マグネシウム・酸素などを主成分とした岩石も含まれます。

通常、恒星よりはるかに質量が小さい惑星が飲み込まれたとしても恒星の金属量への影響は微々たるものです。しかし仮に、外側から供給された金属が恒星表面の薄い層に留め置かれれば、見かけ上金属量が大きく上がる可能性があります。なぜなら観測される金属量は恒星全体ではなく表層のものだからです。

太陽に似た質量の星では、恒星の内部構造は表面の「対流層」と深部の「放射層」(輻射層とも)に分かれます。二つの層の間で物質の行き来は限られているため、惑星が対流層内で分解して金属をまき散らしたとすれば、M67 Y2235の高い金属量を説明できるかもしれません。

薄い対流圏

恒星に落下する惑星の想像図。

対流層は恒星の質量が大きくなるほど薄くなり、太陽質量の約1.3倍以上の恒星ではほとんど消滅することが知られています。これに対してM67 Y2235の質量は太陽の1.18倍で、ごく薄い対流層しか存在しないことになります。

対流圏の深さや質量は恒星の一生の間に変わっていきますが、研究チームの推定によると、Y2235のケースでは、その質量は誕生直後を除いて恒星全体の0.29%(=太陽質量の0.35%、木星質量の3.6倍)を越えたことが無いと見られます。この層の金属量を34%上昇させるには地球質量の5.2倍の岩石惑星が飲み込まれれば十分です。

恒星の誕生直後、惑星系が形成されている間は、惑星の落下はごくありふれています。しかしこの時代の恒星は厚く質量の大きい対流層をまとっているため、金属量にほとんど影響しません。仮にY2235の金属量が惑星の落下によって増加したとすれば、それは惑星形成が一段落した後の時代に起きたものです。

残された条件

今回の説が成り立つためにはもう一つ乗り越えるべき条件があります。それは惑星が対流層の底に沈む前に、十分に分解して金属を放出しなければならないことです。研究グループが調べたところ、そのためには、惑星が最初に恒星をかすめるような、浅い角度で恒星に突入する必要があることが分かりました。

次に研究グループは惑星がそのような軌道で恒星に突入する可能性について調べました。想定されたのは (1) 惑星が別の惑星と近接遭遇して急に軌道を曲げられる「重力散乱」 (2) 別の惑星や伴星の影響で惑星の近点が徐々に恒星に近づく「古在共鳴」 の2つです。検証の結果、(1) (2) いずれの状況でも、惑星は高い確率で、対流層内で分解するに十分な浅い角度で恒星に突入することが分かりました。


落下した惑星が恒星の金属量に影響を与えるという説は、これまでにも他の天体で提唱されています。例えばHD 80606とHD 80607の連星系の例では、2つの星の間でほぼ同一の元素組成が予想されるにもかかわらず、HD 80606の方が高い金属量を持ちます。その原因としてHD 80606が過去に惑星を飲み込んだのではないかとされています。

惑星系の歴史の初期に惑星が飲み込まれても金属量に影響を与えにくいということは、惑星がいつ恒星に飲み込まれたのかを知るうえで重要な点です。今回の研究は、星団を構成する恒星の金属量を詳しく観測することで、このような出来事がどれくらいの頻度で起きているのか知る手掛かりが得られることを示しています。


Church氏らの研究は2019年8月19日にarXivに投稿され、21日に公開されました。

参考文献

Church, R. P., Mustill, A. J. & Liu Fan., 2019, “Super-Earth ingestion can explain the anomalously high
metal abundances of M67 Y2235″, arXiv:1908.06988v1.

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カテゴリ:恒星

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