系外惑星を掘り起こす新アルゴリズム

BLSとTLSの違い

ケプラー宇宙望遠鏡が行った「K2ミッション」のデータから、新しいアルゴリズムを用いて惑星が発見されました。見つかった惑星「K2-32e」は、既に3つの惑星の存在が知られているK2-32系に含まれ、地球とほぼ同じサイズを持ちます。


ドイツのマックス・プランク太陽系研究所に所属する René Heller 氏らがarXivに投稿した研究は、K2のデータの分析で、恒星「K2-32」に新しい惑星を発見したことを伝えています。

ケプラーの延長ミッションにあたるK2ミッションは、惑星のトランジット(恒星の手前を横切ること)に伴う減光を検出するために恒星の光度を記録しました。

関連記事:系外惑星の観測方法#トランジット法

K2-32系には2016年に3つの惑星が報告されており、今回の発見と併せて4つの惑星が見つかったことになります。

新しい方法

惑星トランジットは恒星の周期的な減光を引き起こします。ケプラーのデータを処理する際は、系統誤差や恒星由来の変光を取り除く「下ごしらえ」を経て、周期的な減光の有無を調べます。

減光の有無を調べる過程ではこれまで「BLS」 (Box Least Squares) と呼ばれる単純なアルゴリズムが広く使われてきました。今回研究チームが用いた新しいアルゴリズム「TLS」 (Transit Least Squares) は、減光をより現実的な曲線と仮定することが特徴です。

BLSとTLSの違い
惑星のトランジットを検出するBLS(上)とTLSの違い。BLSはトランジットを単純な一定光度の減光と仮定するのに対し、TLSでは現実的な光度曲線を仮定する(図はイメージであり厳密な形状は再現していない)。

また「下ごしらえ」の過程にも進歩があります。3つの惑星が見つかった当時この過程では「K2-SFF」と呼ばれる処理を用いていましたが、今回研究チームは「EVEREST」と呼ばれる比較的新しい処理法を用いました。

惑星の検出

研究チームはEVERESTを用いてK2-32の観測データを処理し、既知の3つの惑星に由来する減光を取り除いた上で、TLSを使ってトランジットを探しました。

その結果これまで知られていなかった4.35日周期の周期性が見つかりました。

詳しい分析の結果、新たに見つかった惑星「K2-32e」は、既知の3つの惑星より内側の軌道を4.35日で公転する地球サイズの惑星だと分かりました。この惑星の大きさは、K2ミッションで見つかった惑星の中で最小クラスです。

なお外側の既知の3つの惑星は、地球の2.7から5.0倍のサイズ(半径)です。

K2-32
K2-32系と太陽系(上)の惑星サイズを比較したもの。

古い方法との比較

研究チームはアルゴリズムの比較を行うため、前処理と検出の方法を変えてK2-32eに由来するトランジットを検出するテストを行いました。

周期性の明瞭さを示す基準としてSDEと呼ばれる値があります。一般的にSDEが9を上回る場合トランジットは検出されたと見なされます。

テストの結果は、特にEVERESTを用いることでSDEが大幅に向上し、EVERESTとTLSを同時に用いることで最良の結果が得られることを示しています。

2016年の研究で用いられた「K2-SFF+BLS」ではSDEは9に達していない上に、実在しない0.4日の周期性がより大きなSDE(10.5)を示す問題が起きました。


今回の研究は、データに埋もれた惑星を、TLSやEVERESTのような新しい処理を使って掘りだせることを実証しています。

シミュレーションデータを用いた検証では、TLSは特にサイズの小さい惑星が起こす微小なトランジットの検出に威力を発揮する事が示されています。

ケプラーは2018年に運用を完全に終了しましたが、今後も残されたデータから新たな発見が続きそうです。

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Heller氏らの研究は2019年4月1日にarXivに投稿され、2日に公開されました。

参考文献

Heller, R., Rodenbeck, K. & Hippke, M., 2019, “The Transit Least Squares Survey”, arXiv:1904.00651v1.

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