2016年に発見された惑星の主星は化学特異星だった

2016年に発見された惑星KELT-17bは、スペクトル型がA型の恒星「KELT-17」を公転するホットジュピターです。太陽と比べて質量・半径が大きく温度が高いA型星では、自転速度が速いなどの理由で惑星を観測するのが難しく、A型星を公転するKELT-17bのような惑星はわずかしか見つかっていません。

アルゼンチンの天文地球宇宙科学研究所(Instituto de Ciencias Astronómicas, de la Tierra y del Espacio)に所属するC. Saffe氏ら中南米の研究チームは、惑星を持つ恒星とそうでない恒星の比較研究を行っている際に、KELT-17系の主恒星が特異な性質を持つ「Am星」である可能性に気付きました。Am星とはA型星に見られる「化学特異星」の一種であり、鉄やニッケルなど原子番号の大きい主要な元素が異常に多く観測される一方、カルシウムやスカンジウムといった特定の元素はごく微量にしか見られません(※)。惑星を発見した2016年の研究では、KELT-17は通常の元素組成と見られていました。

(※)Am星に見られる特異な性質は、光を吸収しやすい元素が恒星内部から表面に押し上げられてくる一方で、光を吸収しにくいカルシウムやスカンジウムなど一部元素が沈み込んでいく結果、恒星表面が本来とは異なる元素組成になったものとされています。このような現象が起きる条件は、恒星の温度がA型星に相当する範囲にあることと、通常のA型星と比べて自転が遅く、磁場が弱いことだと考えられています。Am星は化学特異星の中では頻度が高く、有名な天体では一等星シリウスもAm星の一つに数えられます。


研究チームはKELT-17を詳しく調べるためにアルゼンチンのレオンシット天体観測装置群にあるホルヘ・サハデ2.15m望遠鏡と「REOSC」分光器を用い、スペクトル(=恒星の光を波長で分解したもの)を取得しました。スペクトルには恒星表層に存在する元素に対応して特定波長における光の吸収(吸収線)が表れるため、元素組成を知ることができます。

KELT-17のスペクトルは通常の(太陽に似た)組成を持つA型星とは明確に異なるものでした。研究チームは、観測されたスペクトルと、モデルから予想されるスペクトルを比べ、14種類の元素について存在比を調べました。その結果、鉄Fe、ニッケルNi、バリウムBaなどの多くの元素が異常に多い割合で含まれている一方、カルシウムCaやスカンジウムScが極端に少ないという、Am星に典型的なパターンを示していることが確かめられました。

恒星KELT-17の元素組成。縦軸は太陽組成に対する相対値の常用対数を表し、エラーバーは誤差の範囲を表す。

研究チームによれば、これまで惑星系の主星がAm星かもしれないという不確かな例はあったものの、詳しい元素組成の測定に基づいてAm星と確かめられたのは今回が初ということです。

Saffe氏らの研究は2020年7月29日にarXivでプレプリントとして公開されました。投稿の際に付されたコメントによると、研究は学術誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』に受理され掲載予定ということです。

参考文献

  • Sagge, C. et al., 2019, “KELT-17: a chemically peculiar Am star and a hot-Jupiter planet”, arXiv:2007.14210.

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