マイクロレンズ法で発見された系外惑星候補とその限界

マイクロレンズ

韓国が運用するKMTNetと呼ばれる観測ネットワークが、重力マイクロレンズ法で2つの惑星候補を発見しました。しかしこれらを惑星と確認するのはマイクロレンズ法特有の問題により困難ということです。

2L1S/1L2S問題

ハーバードスミソニアン天体物理学センターに所属するShin In-Gu氏らがarXivに投稿した研究は、KMTNetが発見した2つのマイクロレンズ効果イベント「KMT-2017-BLG-1119」「KMT-2017-BLG-0962」を扱っています。

マイクロレンズ効果とは、光源となる背景の星の手前を「レンズ」役の天体が通り過ぎる時に光度が単純な合計より明るくなる現象です。

この2つのイベントでは、通常の単一ピークの山形と異なり、2つのピークを持つ光度変化が記録されました。

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観測された光度変化と理論的な予測を比べることでレンズ天体の性質が分かります。今回の2つのイベントでは、レンズ天体が惑星を含む系だという解釈 (2L1S, 2 Lenses 1 Source) で二重ピークを説明できます。

ただしマイクロレンズ効果特有の問題として、異なる状況で似た光度変化が生じるケースが知られています。今回のイベントでは光源が連星でレンズ天体が単一(惑星は存在しない)という解釈(1L2S)も成り立ちます。

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区別するには

「KMT-2017-BLG-1119」はKMTNetが記録した光度変化単独では2L1Sと1L2Sを区別できませんでした。

しかし2つの解釈はマイクロレンズ効果終息後の天体の明るさとして異なる値を予測しています。2L1SではIバンド(近赤外線)の明るさ20.08±0.11等級に対し、1L2Sでは19.62±0.12等級です。

研究グループがハワイ・マウナケア山にあるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡を使って調べた結果、明るさは19.62±0.05等級でした。これはレンズ天体が単一星という解釈が妥当で、惑星は存在しないことを強く示しています。

一方で「KMT-2017-BLG-0962」では、予想される光度変化や平常光度は2L1Sと1L2Sでほぼ差がありません。そのためどちらが正しいかは全く分かりませんでした。

もしも惑星があったなら

2L1S解釈で予想されるレンズ天体の性質を示します。なお2L1S解釈の内部でも2つの解釈 (closeとwide解釈)が成り立つことが知られていますが、今回のイベントではこの違いは惑星の有無自体には影響しません。

KMT-2017-BLG-1119のレンズ天体は自由浮遊惑星の連星と解釈できます。しかし前述の理由からこの2L1S解釈は可能性が低いものです。

KMT-2017-BLG-0962のレンズ天体は、赤色矮星と木星型惑星からなる惑星系と解釈できます。ただしこの2L1S解釈が正しいかどうかは明らかではありません。

マイクロレンズ効果における2L1S/1L2S問題は古くから知られていましたが、今回の研究で見られたイベントは解釈の混同が起きる典型例とされていたものとは異なるパターンでした。

同様の問題はごく最近に別の研究でも報告されており、研究グループは2L1S/1L2Sの問題は従来考えられていたより深刻かもしれないとしています。

参考文献

Shin, I.-G. et al., 2019, “The 2L1S/1L2S degeneracy for two microlensing planet candidates discovered by the KMTNet survey in 2017”, arXiv:1902.10945v1.

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