金属量の低い赤色矮星と白色矮星・珍しい連星系

太陽とSDSS J235524.29+044855.7系

「準矮星」とは、古い時代に形成された金属に乏しい恒星のことです。今回準矮星を含んだ連星系の観測によって、この種の天体として初めて質量と半径が直接的に測定されました。


スペインのカタルーニャ工科大に所属する Alberto Rebassa-Mansergas 氏らがarXivに投稿した研究は、「SDSS J235524.29+044855.7」という食連星系を調べたものです。

食連星系とは、連星の主星と伴星が互いに相手を隠すことにより変光する連星系です。食連星を調べれば、天体の質量や半径を精密に測ることができます。

この食連星は白色矮星(恒星が一生を終えた後に残る高密度の天体)と、赤色矮星(低質量の恒星)のペアで構成されています。2つの星は非常に近い位置にあり、公転周期はわずか0.08978日(2.15時間)です。

研究グループはこの暗い星を観測するため、VLT望遠鏡UT2(口径8.2m)に設置された分光器「X-shooter」や、カナリア大望遠鏡(口径10.4m)に設置された多色撮像装置「HiPERCAM」を用いました。

珍しい連星系

X-shooterのデータからは、赤色矮星は金属量が太陽の3%という、極めて金属に乏しい恒星であることが分かりました。金属量の低さはこの連星系が100億年以上前に形成された非常に古い系であることを示しています。

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このような金属量の低い恒星は同等の温度を持つ通常の恒星(=主系列星、矮星)と比べて半径や光度が小さい特徴があり「準矮星」と呼ばれます。この星は準矮星の中でも特に金属の乏しい「usd」(ultra subdwarf) です。

太陽とSDSS J235524.29+044855.7系
太陽(左)とSDSS J235524.29+044855.7系の天体サイズの比較

分析によると、この準矮星の質量は太陽の0.1501±0.0017倍、半径は0.1669±0.0007倍、有効温度は3650±50ケルビン(3380±50℃)でした。白色矮星は質量が太陽の0.45倍、有効温度は13250ケルビンでした。

※準矮星はここで扱う「低温の」準矮星のほかにも「高温の」準矮星があります。この2種類の天体は「同じ温度の主系列星より暗い」という点では共通していますが、形成メカニズムや性質の点では別物です。

モデルとの比較

恒星の質量・半径・有効温度の関係は恒星の内部構造モデルから予測できます。しかし、SDSS J235524.29+044855.7のような特殊な星に適用できるかどうかは十分に検証されていません。

研究チームが観測結果をモデルと比較したところ、「質量-温度」「質量-光度」「半径-温度」の関係はモデルの予測と誤差の範囲で一致しました。

一方で「質量-半径」の関係では、観測された半径は予測より大きいものでした。モデルからは太陽の約0.162倍の半径が予測されますが、観測された半径は0.167±0.01倍でした。

この食い違いの原因は明らかではありません。モデル自体が不正確なことも考えられますが、研究チームは別の可能性として、この赤色矮星が連星の公転周期(0.08978日)に同期して高速で自転していることを挙げています。このような星は通常の星より半径が大きい傾向が知られています。

研究の意義

低温の準矮星は存在自体が珍しい上に、光度の小さい低質量の星にしか見られません。そのため古くから理論的に知られながらも観測的な裏付けは限られていました。

ごく最近になって大規模な掃天観測(サーベイ)でまとまった数の準矮星が発見できるようになり、準矮星をめぐる研究の状況は急変しつつあります。

とはいえ、質量が直接的な手法で測定された例はまだ限られています。研究チームによると、1つの準矮星で半径と質量の双方が直接的に測定されるのはこの星が最初と言うことです。

今回のような準矮星の観測は、恒星の内部モデルの正しさを検証する上で大きな役割を期待されています。

Rebassa-Mansergas氏らの研究は2019年3月7日にarXivに投稿され、8日に公開されました。

参考文献

  • Rebassa-Mansergas, A. et al., 2019, “Accurate mass and radius determinations of a cool subdwarf in an eclipsing binary”, arXiv:1903.02897v1.

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