原始惑星系円盤の中では軌道共鳴は生じやすく消えにくいと考えられていた

最近(2010年代前半ごろ)まで、複数の惑星が1つの惑星系の中に形成されるとき、「軌道共鳴」と呼ばれる状態になりやすいと考えられていました

ここで扱う軌道共鳴は、惑星の公転周期の比が単純な整数比(2:1=2.0, 3:2=1.5など)になる現象(平均運動共鳴)とのことです。

このページではそう思われていた理由について説明しています。

目次

生じやすさ

生まれたばかりの恒星は、ガスとダストが混じった「原始惑星系円盤」という構造に囲まれています。この円盤の中でダストが成長することで惑星が作られます。

古典的な(1990年代以前の)惑星形成論では、惑星は生まれた軌道にほぼ留まり続けると仮定されていました。しかし現在の理論では惑星の軌道は固定的なものとは見なされません。特に、惑星の軌道半径が縮小していく現象(内向きの「マイグレーション(移動)」)はごくありふれたものと考えられるようになりました。

ここで、十分な初期間隔を開けて2つの惑星が形成され、それぞれ内側にマイグレーションしていく状況を考えます。

仮に外側の惑星がより速いペースで軌道が縮小すれば、2つの惑星の軌道半径の比 (外側/内側) は次第に小さくなります。公転周期は軌道半径の1.5乗に比例するので(ケプラーの法則)、軌道半径の比が小さくなれば公転周期の比も小さくなります。そして、ある時点で公転周期の比が2.0や1.5などの軌道共鳴に達します。

外側の惑星が速いペースでマイグレーションするという仮定は一見すると恣意的に見えますが、必ずしもそうではありません。原始惑星系円盤の中には、条件によって、局地的ににマイグレーションが遅くなる(あるいは完全に停止する)軌道半径が存在すると考えられています。2つの惑星が内側に移動していけば、内側の惑星は先にこのマイグレーションが停滞する領域に達し、外側の惑星が追い付くことになります。

消えにくさ

円盤ガスが存在している場合、一度共鳴関係になった惑星のペアはその関係からなかなか抜け出せません。最初2つの惑星の軌道が異なるペースで縮小していても、一度共鳴に捕らえられると同一のペースで縮小するようになります。公転周期の比(=共鳴関係)を保ったまま2つの軌道が縮小していく状況です。

この共鳴が維持されるメカニズムは、共鳴とマイグレーションが惑星の軌道を楕円軌道化する効果と、円盤ガスが惑星の軌道を円軌道化する効果の組み合わせでもたらされます。

円盤ガスが散逸すると惑星を共鳴に捕らえ続けるメカニズムは働かなくなる一方、マイグレーションも停止し、惑星の軌道半径は基本的には変化しなくなります。

要約

以上のことは要するに、

  • 円盤ガスが存在する間は惑星は軌道共鳴に入りやすい(必ずしも入るわけではないが…)
  • 円盤ガスが散逸するまでは軌道共鳴から外れにくい(必ずしも維持できるわけではないが…)
  • 円盤ガスが散逸した後はそれ以上軌道が変化しにくい(必ずしも変化しないわけではないが…)

ということで、軌道共鳴の状態にある多重惑星系が多く発見されるであろうと予想されてきました。

覆された予想

しかし2009年に打ち上げられたケプラー宇宙望遠鏡の観測データから(打ち上げは2009ですが本格的なデータの分析は10年代からです)、実際には軌道共鳴にある惑星は少数派であることが明らかになりました。

その代わりに、軌道共鳴から少し大きい側に「ズレた」比(2.0の代わりに2.05や1.5の代わりに1.53など)の惑星のペアが、統計的に明らかに多いことが分かりました。

この観測結果の解釈について有力なのは「惑星のペアは円盤ガス散逸の時点(あるいは散逸直前)まで軌道共鳴にあったが、その後何らかの原因で軌道共鳴から外れた」という方向性の説明です。

更新履歴

  • 2019-03-05 作成

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