
NASAの冥王星探査機ニューホライズンズが観測した冥王星とその衛星カロンの地形を分析した研究で、海王星以遠では直径1km以下の小天体が少ないことが分かりました。
クレーターの分布
米サウスウエスト研究所のK. N. Singer氏らが『サイエンス』に投稿した研究は、冥王星とカロンに見られる直径1-100kmの衝突クレーターのサイズ分布を調べたものです。
一般的にクレーターは小さいものほど数が増えます。分析によると、直径13kmより大きいクレーターでは、その数は直径のおよそ3乗に反比例していました。つまり直径が10分の1になると数は103=1000倍に増えます。
しかし直径13km以下のクレーターでは、その数は直径のおよそ2乗に反比例していました。つまり3乗の法則性が続いていれば1.3kmのクレーターは13kmのクレーターの約1000倍存在するはずですが、実際には約102=100倍しかありませんでした。
この分布は冥王星・カロン双方の異なる地域に共通することから、地質活動等で小さいクレーターが均された結果ではなく、衝突天体のサイズ分布を反映したものと見られます。クレーター直径13kmは衝突天体の直径1kmに相当します。
冥王星やカロンは、海王星より外側にある小天体「カイパーベルト天体」 (KBO) が集まって形成されたため、研究の結果は直径1km以下のKBOが少ないことを示しています。
なぜ少ないのか

小天体が衝突を繰り返すとその数の分布は直径の3~4乗に反比例するようになると理論的に予測されています。今回の研究では、1km以上の天体はこの範囲に収まるものの、それ以下は明らかに外れています。
同様のクレーターの分布は、KBOが多く衝突したとされる木星の3つの衛星(エウロパ・ガニメデ・カリスト)でも見つかっていますが、今回それ自体がKBOである冥王星・カロンで同じ分布が見つかったことはより直接的な証拠と言えます。
この分布は、小さいKBOが何らかの原因で失われた結果とも、最初から少数しか形成されなかった結果とも解釈できます。
後者の解釈は「ストリーミング不安定」という現象でダストの分布に濃淡が生じ、密度が高くなった部分が重力で集まってキロメートルサイズの微惑星になるというモデルで説明できるかもしれないということです。
Singer氏らの研究は3月1日に『サイエンス』に掲載されました。
参考文献
Singer, K. N. et al., 2019, “Impact Craters on Pluto and Charon Indicate a Deficit of Small Kuiper Belt Objects”, Science 363, 955. (arXiv:1902.10795v1).