史上最短周期の褐色矮星が見つかる

0.676日で主恒星の周りを公転する褐色矮星(恒星と惑星の中間質量の天体)が見つかりました。この天体は形成から5500万年しか経っていない連星系に属していますが、既に寿命は残りわずかのようです。

褐色矮星の想像図

英ウォーリック大学に所属するJame. Jackman氏らが6月19日にarXivに投稿した研究(arXiv:1906.08219)は、「次世代トランジットサーベイ」(NGTS)が発見した超短周期の褐色矮星「NGTS-7Ab」について伝えています。

NGTSの解説:次世代トランジットサーベイ(NGTS)とは

褐色矮星とは、質量が惑星より大きいものの、恒星のような核融合を起こすほどには大きくない天体のことです。いくつか異なる定義がありますが、今回の研究では木星の約13倍~78倍の質量という定義が使われています。

「NGTS-7Ab」は、赤色矮星(=低質量の恒星)の伴星として見つかった褐色矮星で、主星の手前を周期的に横切る「トランジット」を起こしています。これまでに数千個のトランジット惑星が見つかっているのに対し、トランジットを起こす褐色矮星は今回を含めて20個しか知られていません。

トランジット法の解説:観測方法#トランジット法

褐色矮星の想像図
恒星の周りを公転する褐色矮星の想像図

この天体はNGTSが2016年から2017年にかけて観測したデータから発見され、フォローアップ観測や系外惑星観測衛星「TESS」のデータで褐色矮星と確かめられました。

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連星系

褐色矮星NGTS-7Abが属する「NGTS-7」系は、2つの赤色矮星「NGTS-7A」と「NGTS-7B」からなる連星系と見られます。このうちNGTS-7Aの周りを褐色矮星が公転しています。

褐色矮星NGTS-7Abは木星の約1.38半径と約75倍の質量があります。これは褐色矮星質量の理論的な上限に近く、仮にあと少し質量が大きければNGTS-7Abは恒星になっていたでしょう。

NGTS-7Abの最大の特徴は、0.676日(16.2時間)という極めて短い周期で軌道を一周していることです。主系列星や前主系列星の伴星として見つかっている褐色矮星の中で最も短い周期です。

NGTS-7Abの短い公転周期と小さい軌道は主星にも影響しています。主星NGTS-7Aと褐色矮星NGTS-7Abは互いに相手に同じ半球を向けたまま、それぞれが褐色矮星の公転周期(0.676日)に同期して自転する「潮汐固定」(潮汐ロック)の状態にあると考えられています。

主星

NGTS-7Abが属するNGTS-7系では、恒星の側にも興味深い特徴が見られます。赤色矮星のNGTS-7Aや7Bは、同じ温度を持つ通常の赤色矮星と比べて異常に大きなサイズを持ちます。研究グループによると、この連星系は生まれて5500万年しか経っておらず、形成後の恒星が収縮する過程(=前主系列段階)が今なお続いていることがその原因です。

NGTS-7Aには、若い赤色矮星に典型的な非常に活発なフレア活動が見られます。褐色矮星のトランジットによる減光や、フレアによる増光に加えて、恒星表面の黒点が自転に伴って見え隠れすることに伴う変光も観測されました。

既に寿命残りわずかか

NGTS-7Abのような超短周期の褐色矮星は非常にまれです。仮にそのような天体が形成されても、短い時間スケールのうちに消滅してしまうと考えられています。

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恒星がフレア活動などの磁気的活動を起こすと角運動量を少しずつ失います。太陽のような孤立した星では、これは数億年から数十億年かけて恒星の自転が遅くなる形で表れます。一方で、相互に潮汐固定されたNGTS-7A系では、主星と伴星が潮汐固定を保ったまま伴星の軌道が縮んでいきます。

現在のNGTS-7A系の状態は長続きせず、500~1000万年後にもNGTS-7Abは軌道の縮小のため赤色矮星にのみ込まれると推定されています。これは宇宙の年齢(138億年)や太陽系の年齢(46億年)と比べると一瞬の出来事です。


今回の研究には課題も残っています。推定されるNGTS-7系の性質は、NGTS-7AとBが(見かけの二重星ではなく)実際の連星系であるという仮定や、「ガイア」衛星が測定した連星系までの距離に基づいています。可能性は低いものの、現時点ではNGTS-7Aが、(膨張した前主系列星ではなく)普通の赤色矮星というモデルも排除できていません。その場合、恒星や褐色矮星の質量・サイズは異なったものになります。

研究グループは、今後予定されているガイア衛星のデータリリース3の情報を用いれば、NGTS-7系の性質をより確実なものにできると期待しています。


Jackman氏らの研究は2019年6月19日にarXivに投稿され、20日に公開されました。

参考文献

  • Jackman, J. A. G. et al., 2019, “NGTS-7Ab: An ultra-short period brown dwarf transiting a tidally-locked and active M dwarf”, arXiv:1906.08219v1.

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カテゴリ:褐色矮星

更新履歴

  • 2019/6/21 – 作成
  • 2019/6/22 – 表を追加
  • 2019/6/23 – 画像を追加

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