赤色矮星は2種類に分かれているわけではない

赤色矮星は質量の大小で2グループに分けられるとする研究に対して、これを否定する研究が新たに公表されました。

赤色矮星

中心核で安定した核融合を起こしている恒星を主系列星といいます。主系列星では、質量や半径が大きくなるほど温度・光度が大きくなる関係性があります。これは主系列星の最も低質量側を占める「赤色矮星」の中でも成り立っています。

2019年のRabus氏らの研究は、観測された赤色矮星の半径と有効温度(表面の温度に相当)の関係性を、2つの直線で近似できると主張するものです。この直線は0.23太陽質量を境に低質量側と大質量側の2つに分かれ、その境界で質量・半径と有効温度が不連続に変わるとしています。

Rabus氏らは、不連続性の原因は恒星の内部構造の移り変わり(低温側:全層で対流・高温側:輻射層と対流層)だと考えました。


赤色矮星
赤色矮星の想像図

イタリアのアブルッツォ天文台に所属する S. Cassini 氏と、イギリスのリバプール・ジョン・ムーア大学に所属する M. Salaris 氏が5月9日にarXivに投稿した研究(arXiv:1905.03623)は、そのような不連続性は存在しないとする内容です。Cassini氏らは、Rabus氏らの主張は理論的な恒星モデルとの比較を欠いていると指摘しています。

赤色矮星の半径温度関係。
赤色矮星の半径温度関係。黒:不連続な線形近似(Rabus et al.2019)赤:理論モデル(BaSTIモデル)

理論的には恒星の内部構造が変わったとしても不連続な関係は起きません。恒星モデルが予想する関係性は、連続的で緩やかなS字型として図示できます。これに対してRabus氏らは単純に2つの直線を当てはめたため、見かけ上の不連続性が生じたのだとCassini氏らは主張しています。

Cassini氏らは不連続性が実在しないことを示すため、恒星の理論モデルに基づいて仮想的な赤色矮星の観測データを作り、それにRabus氏らと同様の近似を行いました。その結果、データは曲線的・連続的なモデルに基づいているにもかかわらず、2つの不連続な直線で近似できるという結果になりました。


恒星モデルが予想する曲線は、Rabus氏らが不連続性を主張した0.23太陽質量(0.2太陽半径)付近で傾きがやや急に変わっています。Cassini氏らによるとこれは恒星内部で「電子縮退圧」の影響が大きくなる境界に当たります。

またCassini氏は、Rabus氏らの言うような内部構造の変化は、より大きい質量(0.35太陽質量付近)で起きるため、0.23太陽質量の不連続性/カーブの変化とは関係が無いとしています。

Cassini氏らの研究は2019年5月9日にarXivに投稿され、10日に公開されました。

参考文献

  • Cassini, S. & Salaris, M., 2019, “The effective temperature – radius relationship of M-dwarfs”, arXiv:1905.03623v1.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。