オウムアムアはやはり彗星ではないのか

水蒸気の噴出でオウムアムアの加速を説明する説は根本的に矛盾を抱えているとする研究が、新たに公表されました。

2017年に発見された恒星間天体オウムアムアは、その軌道の分析から重力以外の要因でわずかに速度が変化していることが見つかっています。今回米ジェット推進研究所に所属する Zdenek Sekanina 氏がarXivに投稿した研究(arXiv:1905.00935)は、この加速について扱ったものです。

加速の原因としては大別して2つの説があります。一つはオウムアムアが超低密度あるいは非常に薄い形の天体であり、太陽光圧で加速されているという説です。もう一つはオウムアムアが彗星のようにガスを噴出させ、その反作用で加速しているという説です。

著者のSekanina氏は、オウムアムアが崩壊した恒星間天体の残骸だとする説を以前に唱えており、今回の研究は太陽光圧説の立場から噴出説の問題点を指摘する内容になっています。

関連記事:オウムアムアは彗星の残骸?

根本的な矛盾

Sekanina氏は噴出説には根本的な矛盾があることを指摘しています。

噴出説は、オウムアムアの加速を最初に報告した2018年のMicheli氏の研究(リンク)の中で唱えられました。観測された加速のパターンは太陽からの距離の1〜2乗に反比例するものです。これは水蒸気に由来するものとして理論的に考えられるパターンと異なるため、Micheli氏らは水蒸気の他に一酸化炭素が放出されているとしました。

しかしその後の観測で一酸化炭素(や二酸化炭素など)は見つからず、その量には厳密な上限が設けられました。一方で水蒸気では比較的大まかな上限しか求まりませんでした。他の物質は必要な量が存在しそうにありません。

これを受けて、加速は一酸化炭素ではなく水蒸気で引き起こされているとする「修正版」の噴出説が現れました。ところが水蒸気で加速をうまく説明できないことはMicheli氏らの最初の研究でわかっていたはずです。

噴出説が矛盾を抱えたまま生き延びた理由は明らかでありませんが、Micheli氏の研究では加速を水蒸気のみで説明できない事実に軽くしか触れていなかったため、後の研究で見落とされ続けたのではないかとSekanina氏は考えています。

結局太陽光圧説に?

また噴出説の問題は他にもあります。Sekanina氏が、観測で求められたオウムアムア明るさ・加速度の大き・水蒸気放出量の上限や、理論的に予測される水蒸気の昇華速度といった制約を同時に満たせるか調べたところ、そのためにはオウムアムアが低密度でなければならないことが分かりました。

具体的には、オウムアムアを球体としたシンプルなモデルでは密度が0.0008 g/cm3以下、平らな円盤状としたモデルでは0.0015 g/cm3以下、細長い円筒としたモデルでは密度によらず再現不能でした。

※光度変化の観測からオウムアムアは細長い・あるいは平たい形状と推定されています。円筒や円盤型はそれを再現したものです。

実際の密度はこれらの「上限」より低いであろうことを考えると、およそ0.0001 g/cm3の密度を想定する太陽光圧説に近い状況となり、あえて噴出を仮定する意味は薄れます。

関連記事:謎の小天体オウムアムアの平均密度は0.00001グラム/立方cm?その起源とは

加速が存在しないという説への反論

また研究では、オウムアムアが加速しているというMicheli氏らの研究自体が誤りなのではないかという2019年のKatz氏の主張についても反論しています。

関連記事:オウムアムアそもそも加速していない可能性

まず研究の元となった観測データは30近い観測グループから集められたもので、データ自体に問題があるとは考えられないとしています。

それなら分析に問題があることになります。しかし、これまでに異なる分析方法を用いた他の複数の研究でもMicheli氏らと同様の加速が示されており、加速が実在することは確実だとSekanina氏は主張しています。


今回の研究は、オウムアムアの加速が物質の噴出に由来するという説を複数の観点から否定しています。また、オウムアムアの加速が実在しないという説についても反論しています。

その場合オウムアムアの加速は太陽光圧に由来することになり、Sekanina氏が提唱したように、オウムアムアは崩壊した天体の残骸が寄り集まった超低密度の天体なのかもしれません。

ただ太陽光圧説の中でも天体の起源はいくつかの考えがあります。Sekanina氏は天体が太陽に接近した際に崩壊して低密度の塊になったという説を採っていますが、最初から低密度の塊として太陽系にやって来たという説や、密度は普通だが極端に薄い形状の天体という説もあります。

また、そのような天体が実際に作られるかどうかが不確かだという問題もあります。オウムアムアに関する議論はまだ続きそうです。

Sekanina氏の研究は2019年5月号2日にarXivに投稿され、6日に公開されました。

参考文献

  • Sekanina, Z., 2019, “Outgassing As Trigger of 1I/`Oumuamua’s Nongravitational Acceleration: Could This Hypothesis Work at All?”, arXiv:1905.00935v2.

関連記事

オウムアムア関連

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。