オウムアムアの異常な形は微惑星が衝突した結果?

微惑星の衝突とその結果

恒星間天体「オウムアムア」は、自転にともなって著しく光度を変えることから、異常に細長い形をしていると見られています。

シミュレーションを用いた研究で、微惑星同士が低速で衝突合体した際にこのような天体が生じることが示されました。


名古屋大学の杉浦圭祐氏らがarXivに投稿した研究(外部リンク)は、微惑星同士の衝突・合体をシミュレーションしています。

研究では、衝突速度・衝突角度などを変えながら、どのような条件で「オウムアムア」のような細長い天体が生じるのか調べました。

同じ著者らが行った以前の研究(外部リンク)では、等質量の天体が衝突することで細長い天体が生じることが示されています。しかしこの研究は小惑星を調べる目的で行われたため、比較的大きな天体(半径50km)を想定していました。

今回の研究では、オウムアムアに近い50mサイズの天体を用い、等質量でない条件も調べました。

重要な条件

シミュレーションの結果、衝突の「剪断速度」が一定範囲にある時に細長い天体が生じることが分かりました。

剪断速度は、衝突が2つの天体を変形させて引き伸ばす効果の目安となり、衝突が高速かつ浅い角度(かすめるような形)で起きるほど大きくなります。

剪断速度が小さすぎると衝突後の天体は十分に長くならず、大きすぎると完全に引きちぎられてしまいます。

限られた条件

微惑星の衝突とその結果
衝突により細長い天体が形成される状況の概念図。

さらに剪断速度の条件を満たしていても成功するとは限りません。剪断速度は衝突の速度と角度で決まるため、「高速で深い角度の衝突」と「低速で浅い角度の衝突」でも条件を満たすこと自体は可能です。しかし前者の場合天体は粉々になり、後者では合体・変形が十分に起きない「当て逃げ」になります。

具体的には、衝突速度が0.15~0.4m/sで、なおかつその速度に適する(=剪断速度の条件を満たす)角度で衝突する必要があります。

また2つの天体の質量の比を「1:1」(等質量)や「1:2」とした場合は条件によって細長い天体が生じたのに対し、「1:4」とした場合は条件をどう変えても生じませんでした。

オウムアムアの生育環境

衝突速度の条件は微惑星の典型的な公転速度(秒速数km~数十km)と比べて非常にゆっくりとしています。これは真円軌道に近い微惑星同士が並走しながら衝突する場合に見られるものです。

以下ではオウムアムアの形が微惑星の衝突で作られたと仮定します。

微惑星は誕生直後の恒星を囲むガスとダストの円盤(原始惑星系円盤)の中で成長します。微惑星の軌道が真円軌道に近いことは、円盤ガスの乱流が少ないことを示しています。

また、円盤内に大きな微惑星があると、その重力は周囲の小さな微惑星の軌道を乱します。そのため大きなサイズの微惑星(半径7km以上)が少ない環境でなければなりません。

オウムアムアは最終的に巨大ガス惑星や中心恒星などに近接遭遇して恒星間空間に放り出されたと考えられていますが、オウムアムアが衝突で形作られたという説は、オウムアムアは当初ごく静かな環境で成長していたことを予測しています。


今回の研究は、オウムアムアの形は微惑星同士の衝突で説明できることを示しています。同時に、一定の条件の組み合わせが必要なことも分かりました。

オウムアムアの形に対する他の説明として、潮汐力による変形や、破砕された小天体が重力で再集合するなどのメカニズムも提唱されています。研究チームは、今回と同様の技法で、今後これらのメカニズムも研究したいとしています。

関連タグ:オウムアムア

杉浦氏らの研究は2019年3月15日にarXivに投稿され、18日に公開されました。

(5月19日追記)研究は『イカルス』に掲載されました(Icarus 328, 1)。

参考文献

  • Sugiura, K., Kobayashi, H. & Inutsuka, S., 2019, “Collisional Elongation: Possible Origin of Extremely Elongated Shape of 1I/‘Oumuamua”, Icarus 328, 14. (arXiv:1903.06373)

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カテゴリ:オウムアムア

更新履歴

2019/05/19 – 関連記事追加・Icarusへのリンク追加

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