PDS 70の原始惑星系円盤内に第2の惑星

形成途中の惑星が知られている若い恒星「PDS 70」に第2の惑星が見つかりました。2つの惑星は太陽系形成時の木星と土星に似た状況にあるのかもしれません。

「PDS 70」はケンタウルス座の方角に370光年離れた位置にある若い恒星です。この星は生まれてから500万年前後が経ち、塵とガスを含んだ円盤構造(原始惑星系円盤)に囲まれています。この円盤の中では、惑星形成のプロセスが進んでいると考えられています。

PDS 70の円盤には半径20天文単位(地球と太陽の距離の20倍)から40天文単位に広がる隙間があり、その中に惑星「PDS 70 b」が見つかっています。この隙間の幅は1つの惑星によって空けられたものとしては異常に大きいため、第2の惑星が存在するという説や、PDS 70 bが楕円軌道を持っているという説が唱えられてきました。

PDS 70 bの楕円軌道説:原始惑星系円盤に生じた大きな隙間は単独の惑星によるもの


オランダのライデン天文台に所属するS. Y. Haffert氏らの研究グループによって投稿され、6月3日に『ネイチャー・アストロノミー』に掲載された研究(リンク)は、PDS 70系の円盤の中に、新たに惑星を発見したことを伝えています。

研究グループは、チリ・パラナル天文台VLT望遠鏡(口径8.2m)に取り付けられた観測装置「MUSE」(Multi Unit Spectroscopic Explorer)を使って、2018年6月3日にPDS 70を観測しました。MUSEは天体のスペクトル(光の波長ごとの強さ)を調べる分光器の一種で、2次元画像のそれぞれの画素についてスペクトルを得ることができる「面分光器」と呼ばれる装置です。今回の観測では、高解像度の画像を得るための補償光学装置と組み合わせました。

観測の目的の一つは、Hα線の発生源を調べることです。Hα線はスペクトルの中で波長656ナノメートルの狭い範囲に見られる赤い光です。Hα線はさまざまな天体から放射されますが、原始惑星系円盤内では恒星や惑星にガスが流れ込んでいる時に生じることが知られています。

PDS 70 bの周囲に円盤:形成中の惑星を円盤が取り囲んでいる証拠が見つかる

惑星の発見

観測とデータ処理の結果、隙間の内側2か所でHα線の放射が認められました。一つは既知の惑星PDS 70 bに対応した箇所ですが、もう1か所には惑星は知られていません。この場所には電波観測で明るい領域が見つかっていたもの、それが惑星なのか塵の濃淡に過ぎないのかは分かっていませんでした。

新たに見つかったHα線は、恒星本体のHα放射と異なるスペクトルの特徴を示しているため、恒星から放たれた光が円盤に反射しているとは考えられません。また背景に関係のない恒星が写り込んでいた可能性も否定されました。これらのことから、形成途上にある惑星が放射源だと確かめられました。

新しい惑星「PDS 70 c」は主恒星から34.5±2.0天文単位離れた位置にあります。これは太陽系では海王星の軌道より少し外側に相当します。なお既知の惑星PDS 70 bは主恒星から20.6±1.2天文単位の位置にあります。仮にPDS 70 bとcが円軌道を公転しているとすると、2つの惑星は公転周期が1:2の整数比になる軌道共鳴の関係にある可能性があります。

過去の観測データを含めた分析では、PDS 70 cはPDS 70 bより暗く赤い色をしていました。これは、(1) PDS 70 cの温度がPDS 70 bよりも低い (2) PDS 70 cの周り光を遮る塵がPDS 70 bよりも多く存在している の2通りの説明ができます。

研究グループはPDS 70 cの質量は木星の4~12倍と見積もりましたが、このような原始惑星の質量を正確に推定するのは難しく、実際の質量は木星の4倍よりも小さいかもしれないとしています。

太陽系に似た状況?

軌道共鳴にある巨大惑星のペアが原始惑星系円盤に広い隙間を開ける状況は、46億年前にわれわれの太陽系が形づくられた時にも起きた可能性があります。「グランドタック」と呼ばれるモデルは、当初軌道が縮小していた木星と土星が、公転周期2:3の共鳴関係になるとともに、1つの幅広の隙間に収まったことで、軌道の拡大に転じたとしています。このような特徴的な軌道の変化は、木星の内側にある小惑星帯や地球型惑星に大きな影響を与えます。

「グランドタック」の状況が成り立つためには、(1) 2つの巨大惑星が軌道共鳴の関係になる (2) 2つの惑星が共通した隙間に収まる (3) 外側の惑星の方が質量が小さくかつ質量比が一定の範囲内 の3つの条件を満たす必要があると考えられています。

太陽系形成論としてのグランドタックモデルは、特殊な条件下でしか起こらないことが難点と見られていました。しかし似た状況がPDS 70で見つかったということは、それほど珍しくないことなのかもしれません。

今後、今回と同種の観測法で様々な原始惑星系円盤を観測すれば、太陽系の形成についても重要なヒントが得られると期待されています。

参考文献

  • Haffert, S. Y. et al., 2019, “Two accreting protoplanets around the young star PDS 70”, Nature Astronomy (arXiv:1906.01486).
  • Raymond, S. N. & Morbidelli, A., 2014, “The Grand Tack model: a critical review”, IAU Symposium 310, 194 (arXiv:1409.6340).

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カテゴリ:原始惑星系円盤

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