「月の光」で光合成を行う生物は存在可能か

ハビタブル惑星や、木星型惑星の周りにあるハビタブル衛星で、衛星または惑星の反射光を利用して光合成を行う生物が存在する条件が調べられました。

衛星の光で光合成を行う植物の想像図。

ハーバード大に所属する Manasvi Lingam 氏と Abraham Loeb 氏がarXivに投稿した研究(arXiv:1907.12576)は、惑星-衛星系で、衛星または惑星の反射光を利用して行われる光合成について調べたものです。

研究では、(1) ハビタブルな(=生物が生息可能な)地球型惑星の周りに衛星があり、衛星の反射光で惑星上の生物が光合成を行う状況 (2) 木星型惑星の周りにハビタブルな地球型衛星があり、惑星の反射光で衛星上の生物が光合成を行う状況 の2つが想定されました。

ハビタブル惑星上の光合成

1つめのシナリオは、ハビタブルな地球型惑星が恒星の周りを公転し、その周りに衛星があるという一般的な状況です。

衛星が光合成に十分な反射光をもたらすには、衛星のサイズが大きく、衛星の軌道半径が小さい(=惑星までの距離が近い)ことが必要です。また、主恒星の温度は光合成の効率に影響し、短波長の可視光を多く放つ高温の主恒星では光合成にやや有利になります。

例えば、衛星が月と同等の反射率と地球の0.3倍のサイズ(半径)を持つケースでは、衛星の軌道半径が6~13万km(地球半径の10~20倍)より小さければ光合成が働きます。参考として、地球の月は地球の0.27倍のサイズと38.5万kmの軌道半径です。

衛星の光で光合成を行う植物の想像図。
衛星の光で光合成を行う植物の想像図。

衛星の軌道が小さければ光合成に要する衛星のサイズは小さくなります。しかし、衛星が存在できる軌道半径には下限(惑星半径のおよそ2.5倍)があることを考えると、最低でも衛星は地球の0.05~0.1倍以上(半径300~600km)のサイズを持たなければなりません。

衛星の安定性

他に重要となる条件は、衛星がそもそも長期間(数十億年以上)安定して惑星の周りに留まれるかどうかということです。

質量や光度の小さい恒星では、ハビタブルゾーン(惑星が主恒星から適度な放射エネルギーを受け取れる範囲)が恒星から近くなるためハビタブル惑星は小さい軌道で恒星の周りを公転していることになります。このような状況では、主恒星から働く重力によって衛星の軌道が不安定になる傾向があります。

これまでの研究で、ハビタブルゾーン内の地球型惑星の周りを衛星が安定して公転し続けるには、主恒星が太陽の0.4~0.5倍以上の質量を持たなければならないと推定されています。これは比較的大型の赤色矮星(低質量・低温の恒星)に相当する質量です。

潮汐固定との関係

また軌道半径の小さいハビタブル惑星は、主恒星に常に同じ半球を向けた「潮汐固定」の状態になると考えられています。この状況では、「夜半球」では半永久的に夜が続くため、衛星の反射光を利用する独特な生態系が発達するかもしれません。

ハビタブル衛星の光合成

2つめのシナリオは、恒星の周りに木星型惑星(巨大ガス惑星)が存在し、その周りにハビタブルな地球型衛星が存在する状況です。衛星上に生物が存在し、それが主惑星の反射光を利用している想定です。

光源のサイズと距離が重要なのは1つめのシナリオと同様です。ただし、ここで光源となる木星型惑星は地球の10倍前後のサイズ(半径)があることから距離の要件は大幅に緩くなります。例えば木星サイズの惑星では、衛星の軌道半径200~400万km(木星半径の30~60倍)より小さければ光合成に十分です。

一方で衛星の軌道半径が小さすぎるとハビタブルな環境を保つのが難しくなる可能性があります。その条件はよく分かっていませんが、これまでの研究では衛星の軌道半径が70万km(木星半径の10倍)程度より大きい必要があると見積もられています。

※参考として木星の4つのガリレオ衛星の軌道半径は、42~188万kmです。

これらに加えて、1つめのシナリオと同様に、低質量の主恒星では衛星の軌道が不安定なことが制約となります。惑星が木星型惑星の場合、このような不安定を避けるには、主恒星が太陽の0.2~0.4倍以上の質量を持たなければならないと見積もられています。


今回の研究は、低質量の赤色矮星(太陽質量の0.2~0.4倍以下)を除いて、衛星や惑星の反射光に基づいて光合成を行う生物が存在しうることを示しています。ただし反射光は恒星からの直接光と比べて微弱なため、光合成で生成可能な有機物はごく少量(地球の10万分の1程度)に留まります。

光合成は有機物生産の基盤となることに加え、大気組成を変化させることで観測可能なバイオシグネチャー(生物の兆候)をもたらしうる点でも重要だと考えられています。


Lingam氏らの研究は2019年7月29日にarXivに投稿され、31日に公開されました。

参考文献

  • Lingam, M. & Loeb, A., 2019, “Photosynthesis on Exoplanets and Exomoons from Reflected Light”, arXiv:1907.12576v1.

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カテゴリ:居住可能性

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