死にゆく恒星の周りでハビタブル惑星は

一般的なイメージに反し、寿命を迎えて膨張する赤色巨星の周りにも「生命の惑星」は存在可能です。そのような惑星の環境について調べた研究がこの度公表されました。

恒星の進化の概要

太陽のような恒星は一生の大半を安定した主系列星として過ごしますが、寿命の末期になると膨張を始めて巨星になります。

巨星の膨張とともに「ハビタブルゾーン」(惑星表面に海が存在可能な範囲)は外側に移動していきます。主系列星時代にハビタブルゾーン内に存在した惑星は生命が住めなくなる一方、かつて氷に閉ざされていた惑星が表面に生命の住める惑星になるかもしれません。

今回米コーネル大に所属する Thea Kozakis 氏と Lisa Kaltenegger 氏が『アストロノミカル・ジャーナル』で公表した研究(リンク)は、そのような巨星の周りの惑星について調べています。

安定した環境

巨星となった恒星はサイズ・温度・光度が大きく変化します。一見すると、そのような環境で安定したハビタブルゾーンは存在できないようにに思えます。しかし巨星は常に激変し続けるわけではありません。

恒星の進化の概要
恒星の進化の概要。

恒星はまず温度を下げながら膨張することで光度が急増する「赤色巨星分枝」と呼ばれる系列を辿ります。そしてある時一時的に収縮して「水平分枝」あるいは「レッドクランプ」と呼ばれる安定した状態になります。しばらくすると再び「漸近巨星分枝」という系列に沿って膨張を始め、終焉を迎えます。

水平分枝は恒星の質量によって数千万年~数億年続き、この間光度はおおむね一定です。この時代にハビタブルゾーンに収まった惑星には安定した環境が期待できます。

ハビタブルゾーンの期間

研究では質量が太陽の1倍~3.5倍の恒星を想定し、恒星のモデルに基づいてハビタブルゾーンの変化を調べました。

その結果、質量が太陽の2.3倍の恒星の周りにある惑星が、最も長くハビタブルゾーンに留まると見積もられました。惑星が長期間ハビタブルゾーンに留まる状況は、いずれの質量でも「水平分枝」の期間中に起きたものでした。

一般的に恒星は質量が大きいほど寿命が短くなりますが、それは水平分枝の期間には当てはまりません。質量が太陽の2倍以下の恒星は、水平分枝に入る前に恒星で内部構造が異なることから、質量の大きい恒星より期間が短くなります。一方質量が大きすぎる場合も期間は短くなります。この中間にあたる2.3太陽質量の星が最も長期間安定したハビタブルゾーンを保てました。

主系列星以降の恒星と進化段階の長さ
主系列星以降の恒星が3つの進化段階(赤色巨星分枝・水平分枝・漸近巨星分枝)に留まる期間について異なる質量の恒星について示したもの。

なお水平分枝に入る直前の赤色巨星分枝の段階で恒星は水平分枝星より大きい光度を持ちます。惑星に海が形成されたとしても水平分枝に入る前に蒸発してしまうかもしれません。ただしこの期間が惑星の環境にどう影響するかはよく分かっていません。

紫外線環境

また研究チームは、巨星の惑星に地球と同じような(酸素を放出する)光合成生物が存在するとの仮定の下、惑星表面の紫外線環境や、生命が存在する観測的な証拠(バイオシグネチャー)が生じるかどうかについて調べました。これには化学反応の効果を採り入れた惑星大気のモデルを用いました。

惑星表面の紫外線環境に大きく影響する要素は、惑星大気に含まれるオゾンです。オゾンは大気中の酸素が波長240ナノメートル以下の紫外線を吸収することで生じ、オゾン自体は波長280ナノメートル以下の紫外線を強く吸収します。

太陽と比べて温度が低い巨星では、放射する紫外線の割合が少なくなっています。これは単純に紫外線を減らす効果がある一方、オゾンの生成を不活発にすることで間接的に地表に届く紫外線を増やす効果もあります。

恒星の紫外線量にみられるこのような二面性は、赤色矮星(低温の小さい星)と共通しています。

関連記事:赤色矮星のフレアに伴う紫外線は惑星の居住可能性を制限しない

研究では、惑星表面に届く波長280ナノメートルの紫外線は地球よりやや多いか同程度と見積もられました。これは生命の発展を妨げるほどではありません。

また、紫外線が少ないことで惑星の大気にメタンが生じることも予想されました。オゾンやメタンは、惑星大気を観測することでバイオシグネチャーとして検出可能と考えられています。


水平分枝の期間が生命の発生にとって十分と言えるかどうかは明らかでありません。

別の可能性として、表面が凍り付いた惑星や衛星で、地下に液体の水の層が保たれ、そこにあらかじめ生物が存在するシナリオが考えられます。そのような状況で惑星表面が海になれば、地表での活動に適応した生物が短期間で現れることは有り得そうです。


巨星のハビタブルな惑星は恒星から離れた軌道を公転しているはずであり、これは直接撮像法を用いた観測に好都合です。

現在の技術ではこれらの惑星は観測できませんが、研究チームは口径20~30メートル級の次世代の超大型望遠鏡(ELT)で観測できるかもしれないとしています。

関連記事:系外惑星の観測方法#直接撮像法

Kozakis氏らの研究は2019年4月22日に『アストロノミカル・ジャーナル』に掲載されました(リンク)。また研究のプレプリントは23日にarXivに投稿されています(arXiv:1904.10474)。

参考文献

  • Kozakis, T. & Kaltenegger, L., 2019, “Atmospheres and UV Environments of Earth-like Planets Throughout Post-Main Sequence Evolution”, AJ 875, 2. (arXiv:1904.10474v1)

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