惑星半径の「谷間」を機械学習で探る

機械学習を用いて惑星の半径・公転周期の関わり調べた研究で、系外惑星のサイズ分布に知られる「谷間」が改めて探られました。

「ケプラー」宇宙望遠鏡が見つけた数千個の系外惑星の中には、地球の約4倍以下のサイズを持つ惑星が多く含まれています。これらの惑星には、地球半径の1.5~2.0倍で存在頻度が少なくなる「谷間」があり、ここを境に半径の大きいグループ(サブネプチューン)と小さいグループ(スーパーアース)に分かれています。

この二峰分布は惑星の組成を反映していると見られ、小さい側は地球のような固体の惑星、大きい側は固体コアを水素・ヘリウムが取り巻いた惑星と考えられています。


ペンシルベニア州立大に所属する Mariah G. MacDonald 氏が5月28日にarXivに投稿した研究(arXiv:1905.12048)は、この「谷間」が惑星の軌道とどう関係していているかを機械学習を用いて調べたものです。

これまでの研究で、「谷間」の位置は、惑星の公転周期が長い(軌道が大きい)ほど小さい惑星半径に移ることが示されています。ただし従来の研究は半径が詳しく知られている惑星のみを抜き出して行われたため、サンプルの数が限られていました。

今回の研究で、MacDonald氏は、機械学習のクラスタリング(サンプルを自動で分類する手法)を用いて、サンプル(惑星)を大小2つのグループに分け、その境界を得ることで谷間と公転周期の関係を調べました。分析には複数のアルゴリズムを用い、それらの結果を比べることで信頼性を高めています。

サンプルとしては (1) サイズが地球半径の4倍以下 (2) 公転周期が50日以下 (3) 半径と公転周期の観測上の不確かさが知られている の3つの条件を同時に満たす系外惑星2066個が用いられました。

結果

MacDonald 2019による惑星半径の分布に見られる「谷間」の位置。従来の研究と比べて、公転周期が長くなると急速に谷間の半径が小さくなる傾向が見つかった。

分析の結果、これまでの研究と同様に、公転周期が長いほど「谷間」が小さい半径に移ることが分かりました。ただし従来と比べて周期が大きくなると谷間の半径が急に小さくなる傾向がみられました。

クラスタリングのアルゴリズムやサンプルの範囲を変えると傾向はある程度変化しますが、互いに矛盾するような大きな違いは見られませんでした。公転周期が大きくなると谷間の半径が小さくなる傾向は全てのアルゴリズムに共通する結果でした。

メカニズム

惑星サイズが二分化するメカニズムはいくつか提案されています。今回見られた「公転周期が長いほど谷間が小さい半径に移動する」という傾向は、「中間サイズの惑星は主恒星からの放射で大気を失い小さい惑星になるという説(光蒸発説)」や「惑星集積時の熱で中間サイズの惑星では水素・ヘリウムの外層が失われるという説」が予測するところと一致します。

一方で、「惑星形成時に十分な量のガスが周りに存在するかどうかによって二分化するという説」では、今回とは真逆の「周期が大きいほど谷間の半径が大きくなる傾向」が予想されます。

なお光蒸発説を前提とすると、従来の研究で示されていた公転周期と谷間の関係は、固体惑星や固体コアが岩石からなるとする解釈に一致していました。しかし、今回見直された谷間の位置は、惑星やコアが岩石と氷のどちらの組成を持っていても説明できます。今回の研究は従来の見方を大筋で支持しつつも、惑星の組成について新たなる疑問を投げかけるものと言えます。


今回の研究は機械学習を用いて惑星の分布を調べるアプローチの有用性を示しています。MacDonald氏今後宇宙ミッションで得られるデータセットで同様の分析を行えば、惑星形成についてより確実なヒントが得られるとしています。

MacDonald氏の研究は2019年5月28日にarXivに投稿され、30日に公開されました。

参考文献

  • MacDonald, M. G., 2019, “Examining the Radius Valley: a Machine Learning Approach”, arXiv:1905.12048v1.

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カテゴリ:系外惑星の統計

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