※赤色矮星の惑星に生命は存在できるのか? 前主系列段階の問題

質量が太陽のおよそ半分以下の恒星のを赤色矮星といいます。赤色矮星は銀河系にある恒星の大半を占めるため、赤色矮星の惑星に生命が発生・進化できるかどうかは、銀河系全体にどれだけ生命が存在するかを見積もるうえで大きな影響があります。

前主系列星の脅威

生命の発達を脅かしうる赤色矮星の特徴の1つとして、「前主系列段階」の長さがあります。前主系列段階とは、恒星が生まれた直後で比較的光度が大きい段階のことです。

誕生後しばらくすると恒星の光度はほぼ一定に落ち着き「主系列星」となります。惑星の表面環境が安定し、生命が進化を始めうるのは、恒星が主系列星になった後(主系列段階)です。そのため惑星がハビタブル(生命が居住可能)かどうかは主系列段階に基づいて考えなければなりません。主系列段階でハビタビルな惑星でも、過去に遡れば大きい日射量を受けていたことになります。

赤色矮星では、前主系列段階の時間的な長さが脅威となります。前主系列段階は恒星の質量が小さいほど長期に及ぶ傾向があり、比較的大きい赤色矮星(質量が太陽の4割)は1億年程度、最も小さいもの(質量が太陽の8%)では10億年程度に渡ることが恒星進化モデルから予想されています。

水の喪失

前主系列星の明るさは惑星表面を高温にしますが、それ自体は大きな問題ではありません。地球型惑星は恒星の明るさに関わらずマグマオーシャン(溶けた岩石の海)に覆われた、高温環境を出発点としているためです。

それより問題となるのが大気の喪失です。特に惑星の表面付近に存在する水は、高温の環境では大気中に水蒸気として存在し、光分解により容易く失われます。前主系列星段階の短い太陽のような星では小さな影響に留まりますが、赤色矮星はこの段階が長引くため惑星表面から水がほとんど失われてしまうかもしれません。仮に水が失われてしまえば、主系列星に達した時点の光度でハビタブルと判断できる惑星でも、実際に生命が発展する見込みは薄くなります。

マグマオーシャンの脅威

水(水蒸気)の喪失を強化するメカニズムとして、長期マグマオーシャン (long-term magma ocean) というものがあります。通常のマグマオーシャン段階は100万年程度と見積もられていますが、惑星の日射量が大きい場合、大気中に含まれる水蒸気の温室効果によって、数百万年から数億年以上に渡ってマグマオーシャンが続く状態に陥ることがあると考えられています。

一度成り立ったこの状態から抜け出すことは難しく、水蒸気がほとんど失われて温室効果が弱まる必要があります。このメカニズムで重要なのは、マグマオーシャンと大気の間で水がやりとりされるため、惑星内部表層の岩石に含まれる水も失われることです。

水の復活

一方で、惑星内部から大気に揮発性物質が供給される「脱ガス」で、水蒸気の流出は補われるかもしれません。ここでは惑星がマグマオーシャンの段階から脱し、表面に地殻が形成され始めた後の脱ガスについて説明します。

脱ガスの最初のステップは、惑星のマントル内で「メルト」と呼ばれる部分的に溶融した塊が生じることです。メルトは周囲の岩石より密度が低いため徐々に上昇します。地表近くに達したメルトの一部は地表を覆う地殻の中に入り込んだところで停止します。また一部は地殻を突き破って完全に地表に到達します(いわば「火山の噴火」)。その結果メルトに溶け込んだ水蒸気や二酸化炭素などのガスが大気に放出されます。

仮に前主系列段階の間に水が失われても、後々脱ガスで十分な量の水蒸気が供給されれば、それは海を作り生命発展の礎となることができます。

復活の難しさ

ただし、水の量がどれだけ脱ガスで回復できるのかは明らかではありません。一般的に脱ガスは時間の経過とともに不活発になっていきます。そのため主系列星に達する(=大規模な水の喪失が止まる)まで長い時間を要する赤色矮星では、主系列星に達した段階でもはや十分な量の水蒸気が供給できなくなっているかもしれません。

また、前述のように長期のマグマオーシャンが生じると惑星の内部表層に含まれる水自体が減っていきます。そうすると脱ガスで放出される水の量も減少し、やはり十分な量の水蒸気を供給できないかもしれません。

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カテゴリ:居住可能性

更新履歴

  • 2019/3/24 – 作成
  • 2019/6/25 – 関連記事追加

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