公転周期の長いサブネプチューンの質量が測定される

ケプラー宇宙望遠鏡が発見した惑星「ケプラー538b」の質量が測定されました。この星は81.7日という比較的長い公転周期を持ち、周期50日以上の質量が測定された系外惑星として最小の天体となりました。

視線速度法は系外惑星の質量を調べるための代表的な手段ですが、これまでそのターゲットは質量が大きいか公転周期が短い惑星が中心でした。

カリフォルニア大学に所属する Andrew W. Mayo 氏らの国際研究グループがarXivに投稿したプレプリント(arXiv:1908.08585)は、ケプラー宇宙望遠鏡が2016年に発見した惑星「ケプラー538b」の質量を視線速度法で測定したものです。


関連記事:系外惑星の観測方法#視線速度法

ケプラーのトランジット法の観測によると、「ケプラー538b」は81.7日周期で主星ケプラー538の周りを一周しています。この公転周期は太陽系の水星の公転周期88.0日に近く、ケプラーが見つけた惑星の中ではかなり長い部類に入ります。

関連記事:系外惑星の観測方法#トランジット法

惑星のサイズ(半径)は地球の2.2倍で、地球と海王星の中間サイズに当たる「サブネプチューン」に分類されています。一方でトランジット法の特性上、質量は分かっていませんでした。

観測と分析

今回研究グループが用いたのは、カナリア諸島のイタリア国立ガリレオ望遠鏡に設置された「HARPS-N」分光器と、ハワイにあるケックI望遠鏡の「HIRES」分光器です。観測はケプラー538bがまだ未確認の「惑星候補」だった2010~2015年に計109回行われました。

データを新しい手法で分析したところ、主恒星ケプラー538の視線速度が惑星の公転周期81.7日に同期して1.7m/sというわずかな振幅で変動していることが確かめられました。変動の幅から惑星の質量は地球の10.6 (+2.5/-2.4) 倍と推定されています。

惑星の性質

ケプラー538bの平均密度は、質量とサイズから5.4±1.3 g/cm3と計算できます。これは地球の密度(5.5 g/cm3)に近い値です。ただし質量が地球の約10倍に達するケプラー538bでは、惑星内部が地球と比べて強く圧縮されていることを考えると、地球のような岩石惑星としては密度が低すぎます。代わりに水の氷や水素・ヘリウムなどの低密度の物質を多く含んだ天王星や海王星に似た惑星と見られています。

今回のような長周期のサブネプチューンが視線速度法で成功裏に観測されるケースは稀です。研究グループによると、ケプラー538bは、視線速度法で質量が測定された50日以上の周期を持つ惑星として、これまでで最小の質量をもつ惑星ということです。


今回の研究で用いられた「HARPS-N」や「HIRES」は最高水準の視線速度の測定精度(最良で1 m/s程度)をもつ観測装置でした。現在ではより高性能な視線速度観測用の分光器「ESPRESSO」(2018年~)が稼働を開始し、近い将来には「HPF」「KPF」「EXPRES」「NEID」などの分光器もこれに続く見込みです。これらの観測装置や分析方法の改良によって、ケプラー538bのような比較的長周期かつ質量の小さい惑星の研究が進むことが期待されています。


Mayo氏らの研究は2019年8月22日にarXivに投稿され、26日に公開されました。コメントによると論文はアメリカ天文学会の学術誌『アストロノミカル・ジャーナル』に掲載予定ということです。

参考文献

  • Mayo, A. W. et al., 2019, “An 11 Earth-Mass, Long-Period Sub-Neptune Orbiting a Sun-like Star”, arXiv:1908.08585v1.

関連記事

カテゴリ:視線速度法

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。