土星の風はどこまで深い?カッシーニの最終ミッションから分かってきた巨大ガス惑星の内部構造

土星探査機カッシーニは、最終ミッション「グランドフィナーレ」で土星の重力場を含むデータを集めました。このデータを用いた研究で、土星表面の最大風速500m/sの風は、深さ8800kmにおよぶ巨大な流れの一部であることが分かりました。

1997年に打ち上げられたNASAの探査機「カッシーニ」は、2004年に土星に到達し、以降10年以上に渡って土星とその衛星を観測しました。2016年以降は「グランドフィナーレ」と呼ばれる一連の最終ミッションに入り、2017年9月15日に土星大気圏に突入して燃え尽きました。このグランドフィナーレで観測された土星の重力場は、土星の内部構造を解き明かす貴重な鍵となっています。

今回イスラエルのヴァイツマン科学研究所に所属する Eli Galanti 氏らが『Geophysical Research Letters』に投稿した研究は、「グランドフィナーレ」の観測データを元に土星の内部構造を探ったもので、土星の風は深さ8800km(土星半径の15%)におよぶ流れの一部だという結論を得ました。

土星の赤道付近では秒速400mの風が吹いています。この風は大気が液体化した深部から続いているのか、あるいは表層に限られるのかという問題が古くから盛んに議論されてきました。2018年のL. Iess氏らによる「グランドフィナーレ」の観測データを用いた研究では、土星の風は深さ9000km(土星半径の15.5%)以上まで続くことが示されました。しかしこの研究のモデルでは重力場や風速の観測事実を十分に説明できませんでした。

土星の深さ8800kmの流れと地球のスケール比較。(詳細

今回、Galanti氏らのグループは、剛体の上に流体の層が重なっているというモデルを前提に、風と重力場を同時に説明できる条件を探しました。先行研究では土星の内部を再現する剛体モデルが1種類に固定されていたのに対し、今回の研究では複数の剛体モデルを採り入れて幅広い条件を試しました。

まず研究グループは、流体の層が全く存在しないと仮定しましたが、この条件では剛体のモデルをどう変えても重力場を説明できないことが分かりました。

グループがさらに研究を進めたところ、表面の流れが深さ8800kmまで続き、この付近を境に流れが遅くなるというモデルで、観測された重力場を再現できることが分かりました。この数字は結果的に2018年のL. Iess氏らの研究に近いものですが、観測の再現性は向上しています。

この条件で予想される風速と、観測された風速の間には、まだ若干の不一致があります。ただし不一致の大きさは先行研究の半分に小さくなりました。研究グループより再現度の高いモデルを構築するためには、磁場の効果を含めた研究が必要としています。

Eli Galanti氏らの研究は2019年1月30日に『Geophysical Research Letters』に掲載されました。

参考文献

Galanti, E. et al., 2019, “Saturn’s deep atmospheric flows revealed by the Cassini Grand Finale gravity measurements”, The Geophysical Research Letters. (arXiv:1902.04268v1)

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