自転の遅い恒星では大規模なスーパーフレアは起きない

スーパーフレア

太陽型星の中には「スーパーフレア」を起こすものが知られています。この現象は主に高速で自転する星で起きますが、太陽のようなゆっくりと自転する星にも見られます。

新しい研究では、自転の遅い星では従来考えられていたほど強力なスーパーフレアは起きないことが示されました。


今回京都大学に所属する野津湧太氏らがarXivに投稿した研究(リンク)は、「ケプラー」宇宙望遠鏡が発見した太陽型星(太陽に似た温度・サイズを持つ星)のスーパーフレアを扱ったものです。

太陽を含む恒星内部の表層には磁場があります。これが歪みながら浮き上がると、恒星表面に温度の低い「黒点」が発生します。磁場の歪みが大きなエネルギーの放出と共に解消する時に起きるのが「フレア」です。

黒点の発生
黒点の発生。

フレアは太陽以外の恒星にも普遍的に見られます。中でも注目されているのが、最大規模の太陽フレアより10~100倍以上大きい「スーパーフレア」という現象です。


今回の研究は、同じグループが行っているスーパーフレア星に関する一連の研究をアップデートするものとして行われました。

研究グループはニューメキシコ州のアパッチポイント天文台ARC 3.5m望遠鏡 (APO 3.5m望遠鏡)を用いて
「ケプラー」のデータから見つかった18個のスーパーフレア星を詳しく調べました。

※ケプラーは系外惑星観測用の宇宙望遠鏡ですが、膨大な数の恒星について光度を継続的に記録したそのデータは、発生頻度の低いスーパーフレアを研究するためにも使われています。

この結果と、すばる望遠鏡の既存の観測結果を組み合わせることで、スーパーフレアは巨大黒点と強い磁場に関連しているというこれまでの見方をより強める結論を得ました。

また、研究グループはこれまでにケプラーの500日分の観測データから発見された太陽型星(太陽に似た温度・サイズを持つ星)のスーパーフレアについて、近年公表された「ガイア」衛星のデータなどを用いて恒星の性質を見直した上で再分析を行いました。

再分析

再分析の結果、これまで太陽型星とされていたスーパーフレア星の4割以上が太陽型星でないことが分かりました。その多くは太陽と同程度の温度を持つもののサイズが大きい「準巨星」でした。

特に、「低速で自転する太陽型のスーパーフレア星」とされていた天体の多くが実際には太陽型星ではありませんでした。

スーパーフレアと巨大黒点

スーパーフレア星には恒星表面の黒点が自転に伴って見え隠れすることで変光するものが多くあります。これを調べれば黒点のサイズを推定できます。

黒点のサイズとフレアのエネルギーを比べると、ほとんどのケースでは、観測されたサイズの黒点に蓄えられ得る最大エネルギーの範囲内でスーパーフレアが生じていました。これは巨大黒点に蓄えられたエネルギーの放出でスーパーフレアが起きるという従来の見解を強く裏付けるものです。

これまでの研究では少なくない恒星が黒点サイズに不相応なほど大規模なスーパーフレアを起こすとされていましたが、恒星の性質を見直した結果そのような例は少数であることが分かりました。

自転とスーパーフレア

スーパーフレアの発生は恒星の自転と繋がっていると考えられています。理論的には、高速で自転する若い星では強い磁場・巨大黒点が発生しやすく、スーパーフレアも生じやすいと考えられます。

これまでの研究では、恒星の自転が遅くなるにつれてスーパーフレアの発生頻度は低くなる一方、最大エネルギーについては自転との関連が見られないとされていました。つまり自転の遅い星でも頻度が低いながら最大級のスーパーフレアが起こりうると考えられていました。

今回の研究では、発生頻度はこれまでと同じ傾向が見られた一方、最大エネルギーについては自転が遅くなるにつれて小さくなるという、これまでと異なる結論が得られました。

太陽のスーパーフレア

スーパーフレア
スーパーフレアの想像図。

太陽でスーパーフレアが起きるかどうかは分かっていませんが、仮に起きるとすれば、太陽に似た条件の星(自転周期25日程度の太陽型星)から類推できます。

具体的な基準として、太陽で10年に1回程度発生する大規模なフレア(X10)では、エネルギーは1032エルグ程度です。今回の統計によると、太陽で起きるスーパーフレアのエネルギーは最大で5×1034エルグ(X10の500倍)程度で、そのようなフレアは2000-3000年に1回程度起きると見積もられます。

なお生まれたばかり(自転周期数日・年齢数億年以下)の太陽型星では、5×1034エルグ以上のスーパーフレアが数十年に1回起き、最大エネルギーは1036エルグ(X10の1万倍)に達すると見られます。

今回の研究は、仮に太陽でスーパーフレアが起きたとしても、スーパーフレアの中では小~中規模のものに留まることを示しています。


太陽がスーパーフレアを起こしうるかどうかは明らかではありません。スーパーフレアが一部の星で起きる特殊な現象なのか、低頻度だが普遍的な現象なのかを知るには、観測・理論の両面で進歩が必要です。

今回の研究では、「低速で自転する太陽型のスーパーフレア星」とされていた天体の多くが実際には太陽型星でないことが分かりました。このことは(低速で自転している星の1つである)太陽で仮にスーパーフレアが起きるとしても、その脅威はこれまで考えられていたほど深刻ではないことを示しています。

また、今回の研究では太陽に似た自転の遅い星のスーパーフレアはごく少数しか見つからず、頻度や規模についておおまかな推定しかできませんでした。研究グループは今後、分析に採り入れるケプラーの観測期間を今回の500日から1500日分に拡げた研究を行う予定ということです。

野津氏らの研究は2019年3月30日にarXivに投稿され、4月1日に公開されました。

参考文献

  • Notsu, Y. et al., 2019, “Do Kepler superflare stars really include slowly-rotating Sun-like stars?”, arXiv:1904.00142v1.

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