スピッツァー宇宙望遠鏡が系外惑星を観測

ケプラー宇宙望遠鏡の「K2ミッション」で発見された8つの天体について、スピッツァー赤外線宇宙望遠鏡を用いたフォローアップ観測の結果が報告されています。

この研究では、新たに1つの天体が系外惑星と確認されたほか、既知の惑星もより精度の高い情報が得られました。

以下詳細な解説です(約2800文字)

K2ミッションとフォローアップ

2009年に打ち上げられたケプラー宇宙望遠鏡は、系外惑星が恒星の手前を横切る際に減光をもたらす現象(トランジット)を観測しました。その延長ミッションに当たる「K2ミッション」では、比較的明るい恒星に多くの「惑星候補」が見つかりました。ただ、この方法単独では惑星かどうか確認するのは困難なため、現在もフォローアップが続いています。

東京大学のJ. H. Livingston氏らがarXivで公表した研究は、2003年にNASAが打ち上げたスピッツァー赤外線宇宙望遠鏡を用いて、K2の惑星候補をフォローアップ観測したものです。

研究には、スピッツァーのほかにハワイ・ケック天文台の分光器「HIRES」・補償光学装置「NIRC2」や、すばる望遠鏡の分光器「HDS」も用いられました。

今回のターゲットは「確認された」(validated) 惑星6個と未確認の「惑星候補」2個です。確認された惑星についてはより高精度でサイズや軌道を調べ、また惑星候補は可能であれば惑星かどうかを確認することを目的としています。

[このへんに広告]

新発見と布石

観測の結果、2つの惑星候補の片方は惑星と確認され、「K2-289b」と名付けられました。K2-289bは半径が地球の9.1±0.3倍の惑星で、主星の周りを13.16日で公転しています。その半径から、土星のようなガス惑星と考えられています。

もう一方の惑星候補「EPIC 205084841.01」は、恒星同士の連星系である可能性が一定の割合で存在することが分かり、今回の研究では分類は惑星候補に据え置きになりました。

他の重要な成果として、惑星のトランジット周期を従来の約10倍の精度で求めたことがあります。

K2ミッションは観測期間の短さゆえにトランジット周期の精度には限界がありました。これはかなり厄介な問題で、時間と共に誤差が蓄積することで、例えば今回のターゲットでは、2021年までにトランジットの予測時刻に2-5時間という大きな誤差が生じます。このため2021年にトランジットを確実に観測するには数時間望遠鏡をターゲットに向け続ける必要がありました。

今回この時間が数十分以下の水準に短縮されたことで、将来の観測が大幅に容易になりました。言わば未来への「布石」としての意義も大きい研究です。

[このへんに広告]

以下では今回の観測ターゲットについての説明です。

K2-289b

K2-289bは半径が地球の9.1±0.3倍の惑星で、主星の周囲を13.16日で公転しています。その半径は太陽系の木星や土星に近く、巨大ガス惑星と見られています。

この惑星は従来から有望な「惑星候補」でしたが、主恒星の近くに別の伴星が存在し、これの変光が惑星のトランジットと見間違えられている可能性が排除できないとして、「確認された惑星」とは見なされてきませんでした。

研究チームは、仮に伴星が変更の原因となっているならば可視光のK2と赤外線のスピッツァーの間でトランジットによる減光の大きさが異なることに着目しました。観測ではそのような兆候は見られませんでした。

また、研究チームは、主星自体が食変光星である可能性も検討しました。これを調べるために、分光器「HDS」を用いた観測が行われました。その結果食変光星であることを示す大きな視線速度(奥行き方向の速度)の変動は検出されませんでした。

以上の結果から、この天体は「確認された惑星」に格上げされました。

[このへんに広告]

EPIC 205084841.01

この星は、主星の周囲を11.31日周期で公転している正体不詳の天体です。

この「惑星候補」は、従来の研究で誤検知(惑星でない)の可能性が2.7%と判定されていました。これは「確認された惑星」の基準(誤検知の可能性が1%以下)を満たしません。主な誤検知のシナリオは、この天体が惑星ではなく恒星だということです。

新たな観測データを加えて分析した今回の研究では、誤検知の可能性は15.4%に上昇してしまいました。そのため今回「惑星候補」としての分類はそのままです。

研究ではこの惑星候補について踏み入った分析をしています。

まずこの惑星候補は、推定される半径が地球の17倍で、これは惑星と恒星のどちらでも有り得るサイズです。また、恒星であれば観測されるはずの二次食(伴星が主星の奥に隠れること)は見つかりませんでした。ただ、恒星であっても公転軌道が楕円であれば二次食が生じないことがあります。

研究チームは、この天体は、惑星か、あるいは楕円軌道を持つ恒星だと推定していますが、両者を見分けるにはさらなる観測が必要です。

K2-174b

この惑星は2018年に「確認された惑星」として報告されたものです。今回新たに求められたK2-174bの半径は地球の2.6±0.1倍で、公転周期は19.56日です。

この天体について興味深い事実が見つかっています。

惑星の軌道を真円と仮定した上で、トランジットの光度変に基づいて恒星の性質を推定する技法があります。これに基づくと、K2-174bの主恒星の平均密度は約0.5g/立方cmと計算されました。一方で、主恒星の光度や温度に基づいた別の方法では、主恒星の平均密度は3.2g/立方cmと計算されました。

この食い違いは、惑星の軌道が潰れた楕円形になっている可能性を示しています。仮にそうなら、サイズの小さい惑星としては珍しい軌道になります。

[このへんに広告]

その他の惑星

上記3つ以外の5つの惑星について、「地球と比較した半径 / 公転周期」を示します。いずれも今回の研究前から確認された惑星として知られていた天体です。

K2-52b:18.0±2.2倍 / 3.535日
K2-53b:2.6±0.1倍 / 12.208日
K2-87b:7.6±0.4倍 / 9.727日
K2-90b:2.6±0.1倍 / 13.733日
K2-124b:2.9±0.1倍 / 6.414日

今回の8個のターゲットのうち、明るい主星の周りを公転しているK2-53bとK2-174bは、今後の有用な観測ターゲットです。

また、K2-87b・K2-90b・K2-124b・K2-289bの主星は、可視光での観測にはあまり適さないものの、赤外線では比較的明るいため、開発中の赤外線分光器やジェームズウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) の有用なターゲットとなりそうです。特にK2-124bはJWSTで惑星大気の観測を行うのに適した条件が整っています。

Livingston氏らの研究は2019年1月17日にプレプリントとしてarXivに投稿され、天文学の学術誌『アストロノミカルジャーナル』に掲載予定です。

参考文献

Livingston, J. H. et al., 2019, “Spitzer transit follow-up of planet candidates from the K2 mission”, arXiv:1901.05855.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。