スピッツァーが切り拓く長周期トランジット惑星の研究

スピッツァー宇宙望遠鏡が、木星に似た低温の系外惑星「ケプラー167e」のトランジット(惑星が恒星の手前を横切る現象)を観測しました。これにより今後ケプラー167eのトランジットを確実に観測できるようになりました。

米カリフォルニア大リバーサイド校の Paul A. Dalba 氏とボストン大の Patrick Tamburo氏が共著としてarXivに投稿した研究は、ケプラー宇宙望遠鏡が発見した低温の木星型惑星「ケプラー167e」をトランジット法で新たに観測したものです。

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ケプラーが見つけた惑星の大半は100日以下で主星の周りを公転していますが、ケプラー167eは1071日(2.93年)という例外的な長い公転周期を持ちます。これはこの惑星がトランジット惑星としては珍しい低温の惑星であることを示しています。

ケプラー167eのトランジットは、ケプラーのミッション中に2回、2010年と2013年に観測されました。3回目のトランジットは2016年に起きましたが、ケプラーは既に主要ミッションを終えており、他の望遠鏡による観測も行われませんでした。

2018年12月、ケプラー167eの4回目のトランジットを観測する機会が訪れました。Dauba氏らはNASAのスピッツァー宇宙望遠鏡の観測時間の割り当てを得て、トランジットの発生予想時刻にスピッツァーをケプラー167系に向け、トランジットの観測に成功しました。

観測の意義

今回の観測はトランジットの間隔を正確に調べることが第一の目的です。

ケプラー167eの公転周期(=トランジットの間隔)はケプラーの観測で既に正確に知られています。しかしこれはあくまで「ケプラーが観測した時点」での周期です。

惑星の軌道は他の惑星の重力で変化するため、同じ間隔(周期)でトランジットを起こし続けるとは限りません。このようなトランジットの間隔の変化は「トランジット時刻変動 (TTV) 」として知られています。

今回のスピッツァーが観測したトランジットの発生時刻は、ケプラー167eにTTVが存在しないという仮定で予想される時刻と誤差の範囲内で一致しました。これはケプラー167eには観測可能な大きさのTTVは存在しないことを表しています。

長周期惑星の中には数時間から数十時間のTTVを示すものが一定割合存在し、TTVの情報がないままトランジットを観測するのは「空振り」のリスクがあります。一方ケプラー167eでは、2030年までのトランジットを6分以内の誤差で予報可能になりました。

ケプラー167eのトランジットを分光観測すれば、大気の組成や温度分布を知ることができます。この方法はこれまでホットジュピター(高温の木星型惑星)に用いられており、ケプラー167eのような主恒星から離れた軌道を公転する低温の惑星に適用できるのは稀です。今回の研究は、ケプラー167eの研究を今後確実に進めるための土台となるものです。

Dalba氏らの研究は2019年3月4日にarXivに投稿され、6日に公表されました。著者らによるとこの研究は『アストロフィジカルジャーナル・レターズ』に受理され、レターとして掲載される予定です。

参考文献

Dalba, P. A. & Tamburo, P., 2019, “Spitzer Detection of the Transiting Jupiter-analog Exoplanet Kepler-167e”, arXiv:1903.01478v1.

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