「第二の地球」発見に立ち塞がる重大な障壁

粒状斑と超粒状斑

地球サイズの居住可能惑星(生物が生息可能な惑星)を太陽に似た恒星に見つけることは、天文学の大きな目標です。

そのような「第二の地球」は、視線速度法(RV法)で観測可能かもしれません。RV法は、惑星の公転に伴い、恒星の視線速度(奥行き方向の速度)が周期的に変わるのを捉える方法です。

関連記事:系外惑星の観測方法#視線速度法

「第二の地球」を見つけるために必要な視線速度の精度は秒速0.1mで、これは2018年にチリのパラナル天文台で本格運用を開始した「ESPRESSO」分光器で達成可能な水準です。

しかし単純な精度の向上のみで惑星が見つかるとは限りません。恒星の視線速度には恒星自体に由来する「ノイズ」が含まれ、惑星に由来する変動を覆い隠すためです。

今回仏グルノーブルアルプ大学に所属する N. Meunier 氏と A.-M. Lagrange氏がarXivに投稿した研究(arXiv:1904.09089)は、そのようなRV法の問題について調べたものです。

太陽型星の視線速度で主要なノイズ源となるのが、「粒状斑」や「超粒状斑」の活動です。

粒状斑・超粒状斑とは

粒状斑と超粒状斑
恒星の表面(光球)近くの想像図。恒星の最も表面には小さい対流セル「粒状斑」があり、そね下層にはより大きな「超粒状斑」があると考えられている。

恒星の表層では対流により熱が表面に伝わってきます。対流は「対流セル」と呼ばれる限られた区画を1単位として、これを恒星表層に敷き詰めたような形で起きます。この対流セルが「粒状斑」です。粒状斑は典型的には1000kmのサイズを持ち、数分の時間スケールで消長します。

粒状斑の下層には「超粒状斑」があると考えられてます。ここでは粒状斑より大規模(数万km)かつゆっくりとした対流が長い時間スケール(1~2日)で消長しています。

これらの対流は視線速度を変動させることになります。恒星表面には様々な対流が存在するため、変動はほとんど打ち消し合います。しかし秒速1m以下のわずかな不均衡が、時間とともに不規則に変化する視線速度のノイズとして残されます。

シミュレーション

研究チームは太陽型星を想定して粒状斑・超粒状斑などに由来する視線速度のノイズを再現し、これに惑星由来の変動を重ねた状態で、惑星をRV法で検出できるかどうか調べました。

粒状斑・超粒状斑のノイズは、単純なノイズではなく、ある程度の周期性を含んでいます。そのため観測データから周期性が見つかっても、それが惑星と恒星本体のどちらに由来するのかは判断できない問題があります。

検証では「第2の地球」を見つける上で、超粒状斑の活動がこれまでに考えられていた以上に大きな障壁になることが示されました。粒状斑は1時間の観測を平均することで影響を軽減できますが、超粒状斑については打ち消しがたい大きな影響が残りました。

必要な観測

粒状斑のノイズのみを考えると、2000回/10年程度の観測を行えば地球質量の惑星をほぼ100%の検出率で検出でき、地球より質量の軽い惑星でも十分に発見できると見積もられました。

一方で「超粒状斑の活動が弱い」という仮定で各種のノイズを採り入れると、2000回/10年の観測では検出率は70%程度に留まり、検出率を100%にするには4000回/10年に近い観測が必要でした。

さらに「超粒状斑の活動が中程度」という仮定では、地球質量の惑星を確実に見つけるのは困難です。この条件では2000回/10年の観測でようやく検出率60%に達し、それ以上観測を増やしても検出率は上がりませんでした。


今回の研究は、太陽型星の周りに地球に似た惑星を見つけるためには、単に観測装置の精度を向上させるだけでなく、超粒状斑の研究や観測データの分析方法についても進歩が必要なことを示しています。

研究チームは今後、観測の頻度やパターンが検出率に与える影響を詳しく調べるほか、太陽以外の種類の恒星についても検証対象を拡大したいとしています。


Meunier氏らの研究は2019年4月21日にarXivに投稿され、24日に公開されました。コメントによると研究は『アストロノミー&アストロフィジックス』にレターとして掲載予定ということです。

参考文献

  • Meunier, N. & Lagrange, A. -M., 2019, “Unexpectedly strong effect of supergranulation on the detectability of Earth twins orbiting Sun-like stars with radial velocities”, arXiv:1904.09089v1.

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