ガイア衛星は明るい星までの距離を正しく測れていない

ガイア衛星が測定した距離は、5等級より明るい星では不正確になっているとする研究が公表されました。

2013年12月に欧州宇宙機関が打ち上げた「ガイア」衛星は、恒星の位置を詳しく測ることを目的としています。位置の変化を調べることで「年周視差」を知ることができ、年周視差が分かれば三角測量の原理で恒星までの距離が決まります。

ガイア衛星の処理済みのデータ段階的にリリースされています。現時点では2018年に公開された「データリリース2」 (DR2) が最新のデータセットです。

研究

伊トリノ天文台に所属する Ronald Drimmel 氏らが『Research Notes of the AAS』に投稿し6月6日に掲載された研究(リンク)は、ガイア衛星のDR2に見られる誤差について調べています。

ガイア衛星では、多くの恒星について正確なデータを得られるように、ある程度暗い(数の多い)恒星に対して装置やデータ処理が最適化されています。そのため、明るすぎる恒星(5~6等星より明るいもの)では精度が低くなります。精度の劣化は、年収視差に付随する誤差の増加としてDR2に見ることができますが、この「名目上の」誤差が妥当と言えるかは検証が必要です。

研究では5等級より明るい恒星の一部について、ガイアDR2の年周視差から計算される距離を、他の方法で得た距離と比較しました。今回の研究で使われたのは、(1) 散開星団に属する星 (2) ケフェイド変光星 の2種類です。

散開星団は生まれて間もない星の集団で、星団に含まれる星は互いにほぼ同じ距離にあります。そのため星団に属する暗い星(=ガイアか高精度で年周視差を測定できる星)の年周視差を、同じ星団に属する明るい星と比べれば、年周視差を正しく測れているかが分かります。

ケフェイド変光星は光度が周期的に変わる脈動変光星の一種です。これらの星では変光周期と光度との間に対応関係があるため、それを利用して年周視差から独立して距離を得ることができます。この方法で求めた距離を年周視差に基づく距離と比べれば年周視差の正しさを検証できます。

結果

研究チームが調べたところ、散開星団に属する明るい星では年周視差が大きい(距離が近い)方向に偏り、ケフェイド変光星ではその逆の傾向が見られました。年周視差のずれは多くの例でDR2の名目上の不確かさより大きく、最大で2ミリ秒角に達していました。この角度は、例えば300光年先の恒星では距離に20%のずれを引き起こします。

散開星団とケフェイド変光星で逆の傾向がみられるのは、恒星の色(温度)が影響している可能性があります。散開星団では青い(温度の高い)星が多く含まれ、ケフェイド変光星では赤い(温度の低い)星が多いからです。

このような、特定の性質を備えた星で測定値が特定の方向に偏る「系統誤差」は、ランダムに生じる「偶然誤差」と比べて厄介です。系統誤差は、偶然誤差のように分析の対象となるサンプルを増やせば解消できるとは限らないからです。大きな系統誤差が含まれるデータを知らずに使えば、誤った結論が導かれる恐れがあります。

研究チームは、明るい星では年周視差に大きな系統誤差が含まれる可能性があるため、ガイアDR2のデータを使うべきではないとしています。

参考文献

  • Drimmel, D., Bucciarelli, B. & Inno, L., 2019, “Possible Large Systematic Errors of Gaia DR2 Parallaxes for Very Bright Stars”, Res. Notes of the AAS 3, 6.

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カテゴリ:恒星

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