ジャイアント・インパクトで生まれた系外衛星を観測できるのか?

太陽系外の地球型惑星(岩石惑星)の周りに、観測可能なサイズの衛星が作られうるかどうかを調べた研究が公表されました。

巨大衝突の想像図

月は原始地球に火星サイズの原始惑星が衝突して作られたとされます。このような巨大衝突は地球型惑星(=岩石惑星)が作られる過程でありふれたものだと考えられています。

太陽系外の地球型惑星が十分に大きな衛星を持っていれば、惑星や衛星が主恒星の手前を横切る現象(=トランジット)を利用して観測できるかもしれません。

テクニオン・イスラエル工科大学に所属する Uri Malamud 氏らがarXivに投稿した研究(arXiv:1904.12854)は、太陽系外の地球型惑星にどれだけ大きな衛星が作られるかを調べています。特に、現在の観測技術で検出できるほど大きな衛星が作られるかどうかに焦点を当てています。

この研究は、2017年に行われたBarr氏とBruck Syal氏の研究(リンク)を踏まえたものです。

結果

巨大衝突の想像図
巨大衝突の想像図

研究チームは2017年の研究で使われた条件を含めて様々な衝突条件を想定し、どれだけの破片が衝突に伴って生じるかを数値シミュレーションを用いて調べました。これまでの研究では、衝突後に原始惑星の周りに残る破片のうち10〜55%の質量が衛星として集積することがわかっています。

シミュレーションでは多くの条件で地球質量の0.01倍〜0.1倍の破片が残りました。これは巨大衝突が起きれば月のような衛星(質量が地球の約100分の1)が作られることは珍しくないことを示しています。

一方、検出可能な衛星となると事情は異なります。研究チームは衛星が検出可能なサイズと言えるためには地球の0.2倍以上の質量が必要と見積もりました。前述のように衛星として集積するのは多くても破片質量の約半分なので、地球質量の0.4倍以上の破片が必要になります。

2017年の条件を踏襲したシミュレーションでは、このような大質量の破片は1つの例外を除いて生じませんでした。

研究チームは、2017年の条件とは別に、質量の大きい原始惑星同士が高い相対速度で衝突する条件でもシミュレーションを行いました。これらのケースでは破片は地球質量の0.2〜0.3倍に達しましたが、それでもなお検出可能な衛星を作るには不十分です。

特殊な例

2017年の条件のうち検出可能な衛星が作られた唯一の例では、地球質量の7.2倍の巨大地球型惑星(スーパーアース)に地球質量の0.9倍の原始惑星が衝突する状況でした。生じた破片は地球質量の0.5倍でした。

シミュレーションを詳しく調べたところ、これは特殊な例だとわかりました。衝突する側の原始惑星は衝突に伴って表層を失いながらも、原型を留めたままスーパーアースを周回する衛星軌道に乗りました。「graze & capture」と呼ばれるこのような衝突の様態は、衝突速度が狭い範囲の条件を満たした時にのみ起きると考えられています。

ムーンフォール

研究チームはまた衛星の軌道が小さくなり惑星に落下する状況のシミュレーションを行いました。このような状況はゆっくりと自転する惑星の周りに小さい軌道の衛星が作られた時や、衛星がすでに存在する時に巨大衝突で新しく別の衛星が形成された時に起こります。

この「ムーンフォール」のシミュレーションでは地球の7.2倍の質量があるスーパーアースを想定しました。地球質量の0.2倍より大きい衛星が落下した場合は、衝突の様態は「graze & capture」となり、衛星質量の大部分(8割以上)が軌道上に残りました。一方で質量が小さいときは破片は少量しか残りませんでした。

衛星が落下を生き延びるということは、衛星が失われるメカニズムの1つが働きにくくなることを意味します。これは衛星が合体して巨大衛星になるというシナリオに肯定的な結果です。ただしこのことがどれだけの影響をもたらすかはさらに詳しい研究が必要とされています。


今回の研究では、検出可能な大きさの衛星(地球質量の0.2倍以上)が単一の巨大衝突で作られることは稀であることを示しています。これは検出可能な衛星の質量を0.1地球質量以上とした2017年のBarr氏らの研究とは対照的な結論です。

とはいえ遠くない将来にこの種の衛星は発見可能になるかもしれません。欧州宇宙機関が2020年代の打ち上げを目指している「PLATO」宇宙望遠鏡では、トランジット法で0.1地球質量に相当するサイズの衛星まで検出可能と見られており、巨大衝突で形成された衛星のうち比較的大きいものを発見することが期待されます。

Malamud氏らの研究は2019年4月29日にarXivに投稿され、30日に公開されました。

参考文献

  • Malamud, U. et al., 2919, “Collisional formation of detectable exomoons of super-terrestrial exoplanets”, arXiv:1904.12854v1.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。