様々なハビタブル惑星の季節変化

自転周期・自転傾斜角・公転周期・大気の質量が異なるさまざまな地球型惑星で、大気にどのような季節変化が生じるのか検証されました。

地球大気の子午面循環

イスラエルのワイツマン科学研究所に所属する Ilai Guendelman 氏と Yohai Kaspi 氏が6月13日にarXivに投稿した研究(arXiv:1906.05748)は、ハビタブル惑星の気候を様々な条件で調べたものです。研究では特に、日平均温度・大気循環の季節変化に焦点を当てています。

研究では地球と同じ大きさ・日射(太陽から受け取る放射エネルギー)の惑星を想定し、自転周期・自転傾斜角・公転周期・大気の質量を変化させながら、全球気候モデルを用いて惑星の大気をシミュレーションしました。

自転傾斜角の大きい惑星
自転傾斜角の大きい惑星

気温の季節変動

惑星の自転軸が傾いていると、日射が最大となる地域が一年の間に南北に移り変わります。これが惑星に季節をもたらす原動力です。自転の傾きが著しいほど日射は激しく変動し、他の条件が同じならば、気温の変化も大きくなります。

※惑星が楕円軌道を回っていることも季節変化をもたらす一因ですが、ここでは無視できるものとします。

惑星の公転周期(=その惑星にとっての「1年」)も季節に大きく影響します。気温は日射の変化に一瞬で追随するわけではないため、例えば公転周期の短い惑星の夏の半球では、温度が上がりきらないうちに日射が冬に向けて減少を始めるようなことが起こります。その結果、公転周期の短い惑星では季節変化は穏やかです。

厚い(質量の大きい)大気は季節変化を小さくしますが、その程度は大きくありません。厚い大気のより重要な効果は、惑星全体の温度を高くすることと、赤道と極の間での温度差を小さくすることです。

これらの条件の組み合わせで惑星にはさまざまな季節変化が生じ得ます。研究チームは「気温が日射の季節変化に従う」「気温が日射の年平均に従う」に大別しています。前者は公転周期が長い惑星で、後者はその反対の状況で見られます。例えば自転の傾きが大きい惑星では、日射は一年間に目まぐるしく変化しますが、そのような条件でも、公転周期が十分に短ければ(地球の数分の1以下)、気温は一年を通じてほとんど変わりません。

ハドレー循環

研究では、大気循環・特に子午面(緯度-高度の断面)に見られる「ハドレー循環」についても扱っています。この循環は、地球では高度10km以下の対流圏に存在します。赤道付近で上昇し、上空で高緯度方向へ流れ、中緯度で下降し、表面付近で赤道へ向けて流れる循環です。

地球大気の子午面循環
地球大気の子午面循環の模式図。

ハドレー循環は水の循環に関わる重要な要素です。循環のうち上昇気流がある地帯では雲とそれに伴う降雨が見られ、下降気流がある地域では雲の無い乾燥地帯が広がります。ハドレー循環が高い緯度におよぶ惑星では、広範囲に温暖な地域が見られ、居住可能性(生命が生息できるかどうか)に有利と考えられています。

ハドレー循環は、年平均で見ると、概ね南北対称な形で赤道を挟んで2つ存在していますが、季節変化が加わると形を変えます。地球では、夏半球を中心とした強く広範囲な循環が赤道をまたいで広がり、冬半球では弱く狭い循環が見られます。また特に非対称性の大きい火星では、冬半球のハドレー循環は夏半球の循環に押される形でほとんど消滅してしまいます。

ハドレー循環の変動と範囲

シミュレーションで見られたハドレー循環の季節変動は、概ね気温の季節変動に対応しています。自転の傾きが大きく、公転周期が長ければ、ハドレー循環は夏半球と冬半球で著しく非対称になり、さらに循環自体も強くなります。一方で、大気が厚くなると循環は弱くなります。

ハドレー循環の「範囲」は惑星の自転周期に支配されることが知られています。このことは今回の研究でも再確認されました。惑星の自転周期が短く(=自転速度が速く)なると、ハドレー循環は強くなるとともに、高緯度へ向けて急速に範囲を伸ばします。自転周期以外の条件でも範囲は多少広がりますが、自転周期と比べると限られた影響しかありません。

例えば、公転周期が長く自転軸が傾いている惑星では、夏半球の極付近で最も気温が上がります。そのような条件では南北非対称で比較的強いハドレー循環が生じます。しかし、自転周期が地球並みならば循環に巻き込まれるのは低~中緯度に留まります。これが高緯度(60度以上)に広がるのは、地球より遅い自転周期を設定して行ったシミュレーションのみでした。


前述のように、ハドレー循環の上昇気流には雲の発生が、下降気流には乾燥が伴うと考えられています。これは、地球ではそれぞれ赤道付近の湿潤な熱帯地域と中緯度の砂漠地帯に対応します。

雲や砂漠が太陽の光をよく反射することは観測上興味深い事実です。研究チームは、技術の進歩に伴い地球型惑星の「模様」(明るさの分布)を観測できるようになれば、モデルと比較することで惑星の気候を詳しく調べることができるようになると期待しています。

Guendelman氏の研究は2019年6月13日にarXivに投稿され、14日に公開されました。

参考文献

  • Guendelman, I. & Kaspi, Y., 2019, “Atmospheric Dynamics on Terrestrial Planets: The Seasonal Response to changes in Orbital, Rotational and Radiative Timescales.”, arXiv:1906.05748v1.

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