赤色矮星の惑星は必ずしも潮汐固定されているとは限らない

赤色矮星の周りにある居住可能惑星は、主恒星に同じ半球を向け続ける「潮汐固定」の状態にあるとされています。新しい研究では、条件によって惑星は容易に潮汐固定でない状態になりうることが示されました。

潮汐固定された真円軌道と楕円軌道の惑星に働く潮汐力

太陽系にある衛星の多くは、自転と公転周期が一致し、常に同じ半球を惑星に向けています。「潮汐固定」と呼ばれるこの状態は、惑星から衛星に働く「潮汐力」が原因です。

※天体の重力源に近い部位と遠い部位とでは、重力源までの距離が異なるため、異なる大きさの重力で重力源に引き寄せられます。この重力の差を天体を引き延ばす方向に働く見かけの力として表したのが潮汐力です。

系外惑星のうち主恒星に近い軌道を公転しているものも同様に潮汐固定の状態にあると信じられています。特に赤色矮星(=低温の小さい恒星)の周りにある居住可能惑星(=生命の生息可能な惑星)は、主星の光度の小ささを反映して主星に近い軌道にあるため、潮汐力が惑星に大きな影響を及ぼします。


フランスのボルドー大学に所属する P. Auclair-Desrotour 氏らが7月15日にarXivに投稿した研究(arXiv:1907.06451)は、赤色矮星の周りにある惑星がどのような自転状態にあるかを調べたものです。

惑星や衛星は潮汐固定に至らないことがあります。例えば水星は自転周期が公転周期の2/3となった「3:2自転公転共鳴」の状態で安定しています。ただしこのような状況は、惑星が潰れた楕円軌道を持つ場合に限られます。水星のような固体惑星では、惑星が潮汐固定されないためには、楕円軌道の潰れ具合を表す「軌道離心率」が大きい(およそ0.2~0.3以上)ことが必要です。

一方木星や土星の衛星を想定したこれまでの研究では、天体に液体の層が存在すると、低い離心率でも潮汐固定されない可能性があると示されています。

研究グループは、表面に液体の層(=海洋)を持つ惑星にこの考えを応用しました。研究では「TRAPPIST-1」のようなごく低質量の赤色矮星(太陽の9%の質量)を想定し、その周りに楕円軌道を取る惑星を仮定しています。惑星は固体部分の表面に薄い液体層(海洋)が存在するというモデルを用い、公転周期は赤色矮星の居住可能惑星に想定される1~6日の範囲を調べました。

結果

以下では、すでに潮汐固定の状態にある惑星に、回転させる力(トルク)が働くかどうかを考えます。

惑星が真円軌道(離心率=0)のとき、惑星の表面から見上げると恒星は常に同じ位置・同じ距離にあります。この状態では惑星に働く潮汐力は一定で、トルクは働きません。

潮汐固定された真円軌道と楕円軌道の惑星に働く潮汐力
潮汐固定された真円軌道と楕円軌道の惑星に働く潮汐力。真円軌道の惑星では潮汐力に変化はないが、楕円軌道では方向と強さが変動する。

楕円軌道(離心率>0)では、恒星までの距離や公転速度は、惑星が軌道を一周する間に変化し続けます。一方で惑星の自転速度は短い時間スケールではほぼ一定です。そのため自転と公転の間にずれが生じることになります。惑星表面から見上げた恒星の位置・距離は常に変動し、潮汐力の大きさや方向も周期的に変動します。

固体惑星では、離心率が大きい時にのみ惑星を潮汐固定から外すに十分なトルクが働き、前述のように3:2共鳴の状態に至ります。

海の影響

楕円軌道で潮汐力の周期的変動が生じるのは液体の表面を持った惑星でも同様です。しかし変動に対する惑星の反応は異なります。


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