TRAPPIST-1系の惑星は地球に似ている?

TRAPPIST-1系の7つの惑星は、従来考えられていたより平均密度が高いことが分かりました。この密度は太陽系の地球型惑星と比べてやや低いものですが、太陽系と類似した惑星である可能性があります。

TRAPPIST-1は太陽系から39光年離れた位置にある小さな恒星です。2016年にこの星の周りに地球と同等のサイズを持つ7つの惑星が見つかり、ニュースとなりました。特に内側から4、5、6番目の惑星は、表面に液体の水が存在可能な「ハビタブルゾーン」に位置しているため大きな注目を集めています。これらは惑星が恒星の手前を横切る際に恒星の光を一時的に隠す現象(=トランジット)で発見されたものです。

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TRAPPIST-1系は、内側の惑星と外側の惑星で軌道周期が整数比になる「軌道共鳴」の状態にあります。その影響は本来等間隔になるはずのトランジット発生間隔が変動する「トランジット時刻変動(TTV)」として表れています。TTVは惑星質量の手掛かりになり、質量とサイズが分かれば平均密度を計算できます。平均密度からは惑星の組成や構造を窺い知れます。これまでの研究(Grimm et al. 2018)では、TTVに基づくと7つの惑星は地球と比べ低めの密度を持ち、特に惑星b, d, f, gは、太陽系の地球型惑星と異なり、岩石の表面が水・氷・あるいは厚い大気で覆われていなければ密度を説明できないとされていました。

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TRAPPIST-1系の惑星の公転周期
bcde
1.5102.4224.0496.101
fgh
9.20812.3518.77

今回米ワシントン大学の Eric Agol 氏らの研究チームがarXivにプレプリントとして投稿した研究(arXiv:2010.01074)は、より長期の観測に基づいてTRAPPIST-1系を調べ直したものです。スピッツァー赤外線宇宙望遠鏡の新しいデータの他、ハッブル宇宙望遠鏡や地上の観測施設による既存のデータが分析に採り入れられました。

Agol氏らは、シミュレーションを用いて、観測されたTTVをうまく再現できる条件を探しました。その結果、7つの惑星の質量や平均密度は、従来の推定とは矛盾しない範囲ながらも、これまで考えられてきたよりやや大きいことが分かりました。

惑星半径
(地球=1)
質量
(地球=1)
密度
(g/cm3)
b1.121.375.43 ±0.3
c1.101.315.45 ±0.2
d0.790.394.35 ±0.2
e0.920.694.89 ±0.2
f1.051.045.01 ±0.2
g1.131.325.04 ±0.2
h0.760.334.15 ±0.3

加えて、7つの惑星の間では質量が大きいほど密度が高くなる傾向があることが明確になりました。これは質量が大きい惑星ほど内部が圧縮されることを反映したものと考えられます。太陽系の地球型惑星(水星を除く)にも同様の傾向が知られています。

TRAPPIST-1の惑星(赤色)と水星を除く太陽系の岩石惑星(灰色)の平均密度と質量の関係。TRAPPIST-1の惑星は同じ質量の太陽系の惑星と比べて0.3~0.5 g/cm3程度密度が低い傾向がある。
天体半径
(地球=1)
質量
(地球=1)
密度
(g/cm3)
水星0.380.0555.43
金星0.950.8155.20
地球1.001.0005.51
火星0.530.1073.93

圧縮の効果を補正した「非圧縮密度」 (uncompressed density) を使うと、質量の影響を取り除いて、惑星本来の組成・構造について考えることができます。TRAPPIST-1の7つの惑星はいずれもほぼ同じ非圧縮密度を持ち、組成は互いに似ているようです。その密度は地球型惑星(岩石惑星)の範囲内にあるものの、太陽系の3つの地球型惑星(地球・金星・火星)と比べると低めです。このことから、太陽系の地球型惑星と同様に鉄を主成分とした金属コアの周りを岩石マントルが取り囲んだ構造を基本としつつ、太陽系と異なる部分があると考えられます。

なぜ密度が低いのか?

Agol氏らは密度が低い理由として3つの説明を挙げています。それらは (1) 惑星を構成する鉄原子の比率が少なくコアが小さい (2) 鉄原子が岩石中に取り込まれコアが存在しない「コア無し惑星」である (3) 表面を密度の低い揮発性物質(水や氷)が覆っている、というものです。

それぞれの説明について詳しく見ていきましょう。(1) 太陽系の地球型惑星は、特異な組成を持つ水星を除くと、コアの質量比はいずれも30%前後です。TRAPPIST-1の惑星では鉄原子が少なくコア質量比が約20%に留まると仮定すれば、低めの密度を説明できます。

(2) 太陽系の地球型惑星について見ると、鉄原子は主に金属鉄としてコアに存在しています。一方で形成環境によっては、鉄原子がほとんど岩石に取り込まれた「コア無し惑星」が生まれるかもしれません。仮にTRAPPIST-1の惑星がこのタイプであった場合、鉄原子の少なさを仮定しなくても、低めの密度を説明できます。

(3) 地球型惑星の表層を密度の低い揮発性物質(水や氷など)が覆っているケースでは、その厚みに応じて平均密度が低くなります。地球では海洋の質量は惑星全体の0.02%に過ぎず、影響はほとんどゼロですが、TRAPPIST-1の惑星ではそうでないかもしれません。仮に1%以下~数%程度の水・氷の層が存在すれば、鉄原子の少なさやコア無し惑星の可能性を仮定しなくても、低めの平均密度を説明できます。

密度が低く見積もられていた 従来の研究では、 (1) (2) の説明が困難であり、(3) が有力とされていました。つまり惑星表面は地球とは大きく異なる世界ということです。しかし、今回密度が上方修正された結果 (1) や (2) の説得力が相対的に増しています。

TRAPPIST-1はTTVを通じて惑星を調べるのに適した環境が整っており、前例のない精度で質量と密度を測定できました。とはいえ、質量と密度のみに基づく議論には限界があります。今後、打ち上げ準備中のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた高精度なTTVの測定や、主恒星の元素組成の測定により、惑星の組成と構造を絞り込むことが期待されています。

Agol氏らの研究は2020年10月2日にプレプリントとしてarXivに投稿されました。この研究は現在『The Planetary Science Journal』に投稿され査読中ということです。

参考文献

  • Agol, E. et al., 2020, “Refining the transit timing and photometric analysis of TRAPPIST-1: Masses, radii, densities, dynamics, and ephemerides”, arXiv:2010.01074v1.
  • Grimm, S. L. et al., 2018, “The nature of the TRAPPIST-1 exoplanets”, A&A 613, A68.

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