金星のホスフィン濃度は生命の痕跡として妥当な量なのか?

先日(2020年9月14日)、金星の高度50キロメートルの雲層にホスフィン (PH3) が検知されたとする研究が公表されました。これは金星に生命(微生物)が今なお存在している痕跡かもしれない一方、未知の非生物的なプロセスが原因となっている可能性もあります。

関連記事:金星に生命が存在するかもしれない証拠が見つかった

この研究で報告されたホスフィンの濃度は20 ppb(1ppb = 10億分の1)でした。これは生物由来の濃度として妥当なものなのでしょうか?仮にこの濃度を再現するために必要な生物の量のが非現実的な物であれば、生物が関わっているという見方を否定する証拠となります。フロリダ工科大のManasvi Lingam氏とハーバード大のAbraham Loeb氏は、この疑問に答える研究を行い、9月16日にarXivにプレプリントとして投稿しました( arXiv:2009.07835)。

研究では比較的単純なモデルを用いて20 ppb の濃度に対応する生物の密度(バイオマス密度)を計算しました。その結果、ホスフィンを説明するために必要な金星微生物の量は、地球大気に浮遊する微生物の密度より何桁も小さく、観測されたホスフィンは生命によるものとして妥当な範囲内とみられることが分かりました。

具体的には、地球では大気1立方メートルにつき44mgの微生物が浮遊しているのに対し、ホスフィン濃度を説明するために必要な金星微生物の密度は1 立方メートル当たり0.0001~0.001 mg、あるいはそれ以下と予測されました。この値はホスフィンを放出する生物のみを考慮したもので、他の微生物が存在すれば実際のバイオマス密度はもっと高くなるかもしれません。

注意点として、Lingam氏らの研究は、現時点(2020年9月17日)ではプレプリントとしてarXivに投稿されたもので、正式な査読はまだ経ていません。またモデルは単純化されており、不確実なパラメーターもあるため、その点には留意するべきだと著者ら自身も述べています。

参考文献

  • Lingam, M. & Abraham, L., 2020, “On The Biomass Required To Produce Phosphine Detected In The Cloud Decks Of Venus”, arXiv:2009.07835v1.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。